アンケートの種類や質問内容によっては、無回答となることもあります。無回答は英語でノット・アプリカブルといい、アンケート集計では「N/A」と表示されます。
アンケートで無回答があった場合、無回答を無視して集計すればいいのではないか、と感じるかもしれません。しかし、そうすると回答者の意図を分析できなくなります。
アンケートは回答者の意図を探る調査なので、簡単に無視することは得策ではありません。
この記事では、アンケートの無回答をどのように考え、どのように処理すべきかを考えていきます。
また、無回答を少なくする対策についても紹介します。
無回答とは
アンケートの無回答とは、設問に対する回答がない状態のこと。
例えば、「性別を教えてください」という設問に「男、女」という選択肢が用意されているのにどちらにも「○」をつけていないと無回答にカウントされます。
無回答は無ではない
アンケートを実施する人や結果を集計する人は、無回答は「無」ではないと認識する必要があります。
例えば、「性別を回答しない」という無回答にも、回答者なりの意図があります。無回答に意図がある以上、アンケートの担当者はそこに注意を払わなくてはなりません。
無回答の種類
無回答には、1)選べない、2)わからない、3)あえて答えない、の3タイプがあります。
例えば、選択肢が3つあり、どれも自分の気持ちに当てはまらない場合、無回答にならざるを得ません。これが「選べない」タイプの無回答です。
「当社製品の使い勝手はいかがか」という質問の選択肢に「使いやすい」と「使いにくい」しかない場合、回答者が「短時間の利用では使いやすいが、1時間使うと使いにくいと感じる」と思っている場合、選べないので無回答になる可能性があります。
また、アンケートは質問と選択肢で構成されていますが、回答者が質問内容を理解できないと答えようがないので無回答になります。これは「わからない」タイプ。
複雑な内容の質問や、概念的な質問を設定してしまうと、回答の仕方がわからず無回答になるかもしれません。
そして「あえて答えない」タイプの無回答は、質問の設定に不満を持っている可能性があります。
例えば、ジェンダーに関心が高い回答者であれば、性別を問う質問に対して、「このアンケート内容で性別を問う必要があるのか」と感じ、抗議の意味で無回答にするかもしれません。
このように、すべての無回答には意味や意図があります。
無回答は集計に入れる?入れない?
アンケートの集計手法において「無回答を集計に入れなければならない」または「入れてはならない」というルールはありません。つまり、アンケートの担当者が、入れるか入れないかを決めることができます。
しかし、無回答が多く発生すると、無回答の数を集計に入れた場合と入れない場合で、アンケート結果が大きく違ってきます。
そのため、なんとなく集計に入れた、あるいは入れない、とするのではなく、入れる理由、または入れない理由を持っておきましょう。
無回答は結果をこれほど変える
無回答がアンケート結果に与える影響をみていきましょう。
あるアンケートで「あなたはチョコレートが好きですか」と尋ね、選択肢として「すごく好き、好き、どちらでもない、嫌い、すごく嫌い」の5つを用意し、結果が次のようになったとします。
これは、無回答を集計に入れています。
無回答30人は20%なので、かなり無回答が多い質問といえます。
アンケート担当者はこの結果から、次のように感じるはずです。
●「すごく好き」と「好き」を足すと4割ほどだ
●「嫌い」と「すごく嫌い」を足すと1割だ
●「好き」は「嫌い」より圧倒的に多いといえそうだ
しかし、この印象は正確ではありません。なぜなら、もし無回答がすべて「嫌い」だった場合、「好き」と「嫌い」が拮抗するからです。
そのため、アンケート担当者によっては、「無回答を無視したい」という誘惑に駆られるでしょう。
無回答を無視すると、同じアンケートの結果でも、次のように様変わりします。
無回答を無視したので、計が120人になっています。
この結果をみると、次のような印象を持つはずです。
●「すごく好き」と「好き」を足すと5割弱
●「どちらでもない」は4割強
●「嫌い」と「すごく嫌い」を足すと1割強
●「好き」が多いといえるが、なぜ「どちらでもない」がこれほど多いのだろうか
アンケート結果のみえ方が全然違ってきます。
アンケートの信頼に関わる
アンケート結果は回答者の意向の集合体なので、それが意味することは1つでなければなければなりません。つまり、アンケート結果のみえ方が集計の仕方で変わってしまうのは、無視できない事態といえます。
無回答を集計に入れると意味Aになり、無回答を集計から外すと意味Bになったのでは、無回答を集計に入れるかどうかを決めた人(アンケート担当者)が、アンケート結果の意味を調整できることになってしまいます。
これではアンケートの信頼に関わってきます。
無回答「ありVer.」と「なしVer.」を報告する
アンケートを集計した結果、無回答を集計に入れるか入れないかで結果が大きく変わる恐れがあるときは、集計担当者は「無回答ありバージョン」の報告書と「無回答なしバージョン」の報告書をつくったほうがよいでしょう。
先ほど紹介した2つの集計結果を並べてみましょう。
報告書にこのように並べておけば、これをみた経営者や上司は、自身の判断で必要な情報を抜き出すことができます。
無回答を減らす工夫をする
無回答には意味があります。そして、その意味のほとんどは、アンケート調査にとってネガティブなものです。
したがって、アンケート担当者は極力無回答が出ない質問や選択肢を考えるべきです。
無回答には、1)選べない、2)わからない、3)あえて答えない、の3種類があると紹介しましたが、それぞれに対策があります。
「選べない」タイプの無回答を減らすには、選択肢を工夫する必要があります。最もよく知られた対策は「好き」のほかに「すごく好き」や「どちらかといえば好き」を加えることです。回答者が持っているあいまいな気持ちを言い当てる選択肢があると、無回答を減らすことができます。
「わからない」タイプの無回答への対策には、1)質問の文章を丁寧に書く、2)難しいことや複雑なことは尋ねない、の2つがあります。
質問の文章が完成したら、同僚などにチェックしてもらいましょう。
「あえて答えない」タイプの無回答を減らすには、選択肢に「答えたくない」を加えてみるとよいでしょう。そして「答えたくない」を選択した人が多くなったら、次回のアンケートではその質問を削除してもよいでしょう。
まとめ~無回答にも意図は存在するがつかめない
無回答は完全な無ではないため、アンケート集計ではやっかいな存在になりえます。
しかし、無回答から、無回答にした意図を探ることはできません。アンケートにおいて、回答者が発する意図を汲み取ることができないのは、調査の信頼性を下げます。
そのため、質問と設問を工夫することで無回答を減らすといいでしょう。
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