パス解析

顧客理解を可能とするパス解析|因果関係を徹底的に探る

マーケティングで顧客の様子を把握するときや、アンケート結果を分析するときに有益な解析手法、パス解析。

統計の教科書では「変数間にいくつかの因果を仮定し、共分散行列や相関行列をもとに因果推論を行う統計的な分析手法」と解説されていますが、この解説では理解するのが難しいと感じている人も少なくないでしょう。

そこで、本記事では、概念図でパス解析を理解する方法を解説していきます。

パス図を知る

分析手法には、単回帰分析、重回帰分析、パス解析がありますが、これは単純な順に述べたもの。つまり、パス解析は、より複雑な分析手法といえます。

また、これらの分析方法はすべて、パス図を使って説明することができます。

最も単純な単回帰分析のパス図は下記のとおりです。

<単回帰分析のパス図(概念図)>

時計, テーブル, 男 が含まれている画像

自動的に生成された説明

単回帰分析とは現象Aが起きると、結果Xが起きるというものであり、このようなパス図を描いて説明することができます。

黒枠で囲んだものを変数といい、Aを独立変数、Xを従属変数と呼びます。現象Aは独立して発生しますが、現象Xは現象Aに従属して発生するもの。そして、矢印は、根元が原因で先が結果を意味しており、さらに両者に因果関係があることも意味しています。

パス図とパス解析は、両方ともパスという言葉が入っていますが概念が異なります。

パス図はいわばお絵描きの方法であり、パス解析は分析手法です。

パス解析の利用方法

パス解析を実際のマーケティングで使うときは複雑な計算式で算出しますが、パス解析について知らないマーケターは、計算式について理解するよりパス解析をマーケティングやアンケート分析に使う方法を知っておいたほうが有益です。

複数の変数を因果関係で結んで、結果を導き出す

数学者にとってパス解析は研究対象ですが、マーケターにとってのパス解析はマーケティングを成功に導くためのツールです。

例えば、ある店で、客が入る日と客が入らない日があったとします。

客が暑い日に増え、寒い日に減る、という法則に従っていれば、店主は夏にアルバイトと仕入れを増やして、冬にアルバイトと仕入れを減らすことができ、機会損失も無駄な出費もしないで済みます。

このように、変数と結果を因果関係で結ぶことは、マーケティングの1つであるといえます。

客の入りと気温(暑い、寒い)は、先ほど紹介した単回帰分析のパス図でビジュアル化できます。Aが気温で、Xが客の入りです。

時計, テーブル, 男 が含まれている画像

自動的に生成された説明

しかし、別の店で、暑い日でも寒い日でも、客が入ったり入らなかったりしていたら、この単回帰分析では説明できません。

客が入る、または客が入らないという結果を導き出す変数がわからないと、アルバイトを何人雇ったらよいのかや、適正な仕入れ量がわかりません。

このとき、結果に影響を与える変数は複数あるのではないか、と考えます。

「独立変数が複数」「結果が1つ」が重回帰分析

単回帰分析で結果を導く変数を特定できない場合、重回帰分析を使います。

独立変数(原因)が複数で、結果(従属変数)が1つの場合、重回帰分析で分析できます。

<重回帰分析のパス図(概念図)>

時計 が含まれている画像

自動的に生成された説明

客が多く入る現象Xは、暑さ(A)と晴れ(B)によって起きる場合、このようなパス図になり、これが重回帰分析になります。

AとBは、晴れると気温が上がり、気温が上がる天候のとき晴れやすいという関係にあるので、双方向の因果関係を意味する「←→」の矢印で結ばれます。

このパス図をつくっておけば、週間天気予報で暑くて晴れることがわかれば、アルバイト数を増やしたり仕入れを増やしたりすることができます。

「独立変数が複数」「結果も複数」がパス解析

店では、アルバイト数をより厳密にコントロールしたいときがあります。

アルバイト数が「5人の日と1人の日」だけでは、5人では多すぎ、1人では少なすぎる日が出てくるでしょう。

そうなると、結果の選択肢が「客が入る」と「客が入らない」の2つでは足りません。

例えば、客が30人入るときはアルバイトを5人にして、客が20人のときは3人にして、客が入らないときは1人する、といったことができると人件費を最適化することができます。

このようなとき、パス解析が役立ちます。

パス解析のパス図は下記のようになります。

<パス解析のパス図(概念図)>

時計と文字の加工写真

低い精度で自動的に生成された説明

ここでは従属変数XとYを次のように定めます。

X:客が30人以上入る

Y:客が20人以上入る

現象Xも現象Yも、気温(A)と天候(B)によって変わってきます。

しかし、これだけでは気温の寄与度と天候の寄与度がわからず、アルバイトの数を決めることはできません。

そこで因果関係の強さを計測します。

因果関係の強さは、実際に、気温、天候、客数のデータを大量に取って導き出しますが、ここでは次のような結果になったとします。

数字が大きいほど、独立変数と従属変数の因果関係が強いことを意味します。

<パス解析に因果関係の強さを示す数字を入れる>

時計 が含まれている画像

自動的に生成された説明

これで、客が30人以上入る現象(X)は、気温(A)が相当高く、天候(B)が相当よくなければ起きないことがわかります。

一方、客が20人以上入る結果(Y)は、気温(A)も天候(B)も、そこそこよければ起きることがわかります。

マーケティングで使ってみる

店の集客でパス解析が使えることがわかりました。

そこで、さらに高度なマーケティングでパス解析を使う方法を考えてみます。

理解しやすいように、先ほど使ったパス解析と同じパス図を用いて解説します。

ある企業が、顧客の購入意欲を高めることができているのに、なかなか購入を決断してもらえない、ということに悩んでいたとします。

そこで、1)購入意欲が高まったが購入しなかった客と、2)購入意欲が高まって購入を決断した客にアンケートを行ったところ、次のような結果になったとします。

ダイアグラム

自動的に生成された説明

このパス解析から、客は、この企業のリアル店舗の商品ディスプレーも通販サイトの操作性も高く評価していることがわかります。

そして同時に、ディスプレーと通販サイトの2つの要素は、購入意欲を高めることには「大きく」貢献しているが、購入の決断をさせる力は「それほど大きくない」ことがわかります。

ここまでわかると、マーケターは次のような対策を打ち出すことができます。

  • 購入意欲を高めることができているのだから、現行のディスプレーと通販サイトは大きく変更する必要はない
  • しかし購入の決断を促すことができていないことから、テコ入れは必要になる
  • 購入決断に対する通販サイトの寄与度は0.8で、ディスプレーの0.9より弱いことから、まずは通販サイトのテコ入れから始めるべきだろう
  • ディスプレーや通販サイト以外にも購入決断を促す要素があるのではないか。その要素を探せば、それを強化することで購入決断を増やすことができる

いかがでしょうか。

これだけのことがわかるパス解析は、マーケティング戦略づくりの重要な基礎資料になります。

まとめ~洞察を深めていく

パス解析は、混沌とした「変数の海」のなかから独立変数と従属変数を探し出し、それぞれの変数を結びつけ、さらに因果関係の強さを数値化していく作業といえます。

変数どうしを結びつけることも、因果関係の数値化も難しい作業ですが、それよりも重要なことは「変数の海」を用意すること、つまりリサーチを強化することです。

データが少ないとせっかく因果関係を特定できても、見落とした「それ以外の因果関係」が強く働いていると、分析結果が役に立たないため、まずは、リサーチをして大量にデータを集めることから始めましょう。

パス解析は洞察を深めていく手法なので、深い海が必要になります。

無料お役立ち資料フォーム


<参考>

パス解析

パス解析