多次元尺度構成法

「多次元尺度構成法」で自社商品が他社商品と似ているのかどうか確認

以下の4つの内容に賛同できるでしょうか、できないでしょうか。

  • ロッテリアは、マクドナルドに近く、モスバーガーから遠く離れている
  • モスバーガーは、フレッシュネスバーガーに近いが、だからといってマクドナルドから遠く離れているわけではない
  • 日産の車は、トヨタの車に近く、マツダの車から遠く離れている
  • マツダの車は、スバルに近いが、トヨタから遠く離れているわけではない

これに賛同できる人が増えると、上記の商品どうしの関係性が正しいと認定されます。

商品どうしの関係性が確定すると、それぞれの商品のポジションが明らかになるので、マーケティングの参考になります。

また、複数の商品の関係性を確定させておけば、新商品を企画するときに、ライバル商品に近づけるのか離すのかを決めやすくなります。どれくらい近づけるのか離すのかも、イメージしやすくなるでしょう。

複数の商品の近さと遠さを数値化してグラフにして比較する方法を、多次元尺度構成法といいます。

多次元尺度構成法は、複数の商品の近さと遠さを「見せる」手法です。

多次元尺度構成法の定義と考え方

多次元尺度構成法の定義は「複数の商品やブランドなどの関連性や類似性や親近性の強さを数値化してグラフ化したもの」。

例えば、東京都の文京区と台東区と新宿区と千代田区の区役所の近さは次のように数値化できます。

文京区役所新宿区役所千代田区役所台東区役所
文京区役所01.92.43.0
新宿区役所1.904.99.0
千代田区役所2.44.904.7
台東区役所3.09.04.70

数字の単位はkmで、2つの区役所間の道路距離です。

文京区役所は、新宿区役所と最も近く、千代田区役所とその次に近く、台東区役所とはやや離れていることが、新宿区役所は、文京区役所と最も近く、千代田区役所と離れていて、台東区役所とかなり離れていることが、そして、千代田区役所は、文京区役所と最も近く、新宿区役所と台東区役所とは同じくらい離れていることがわかります。

関係性を数値化したら、多次元尺度構成法ではグラフ化するのですが、ここでは概念図を使って説明します。

道路距離からわかったことを元に、4つの区役所の配置を概念図で示すとこのようになります。

<道路距離から作成した4つの区役所の配置の概念図>

文京区役所台東区役所
新宿区役所千代田区役所

この概念図が、下の実際の23区の地図ととても似ていることがわかります。

<実際の23区の地図>

マップ

自動的に生成された説明

(引用:東京都主税局、https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/map/H30/chizu.html

道路距離から配置地図をつくったので、実際の23区の地図と似るのは当たり前、と感じるかもしれません。

しかし、データ(ここでは道路距離)から複数の対象物の関係性の概念図をつくり、その概念図が実際の関係性と一致することは、概念図のつくり方が正しいことを証明している点において重要です。

親近感の度合いで4つの区の近さを測定することもできる

ここからは仮の話をします。

仮に、4つの区の区民に「他の3つの区に対する親近感の度合いを数値化してください」と尋ね、その平均値が以下のようになったとします。

文京区民新宿区民千代田区民台東区民
文京区への親近感01.92.43.0
新宿区への親近感1.904.99.0
千代田区への親近感2.44.904.7
台東区への親近感3.09.04.70

この数値を使って、4つの区の関係性を概念図にするとこのようになります。

<親近感の度合いから作成した4つの区の位置づけの概念図>

文京区役所台東区役所
新宿区役所千代田区役所

(再掲)

マップ

自動的に生成された説明

この結果が得られたら、「他の区への親近感の強さは、他の区への物理的な距離に比例し、実際の23区地図と似た配置になる」ということができます。

つまり「区の距離が近いほど親近感の度合いが増す」といえます。

これが多次元尺度構成法の基本的な考え方です。

ハンバーガー・シミュレーションで多次元尺度構成法を使ってみる

冒頭で紹介したハンバーガーショップへの印象に対して、多次元尺度構成法を使ってみます。

このシミュレーションを観察すれば、多次元尺度構成法の利便性を理解できるはずです。

ここでも仮の話で解説していきます。

ハンバーガーショップのシミュレーション

仮に、ハンバーガーショップに関するアンケートの結果から、次のような傾向がみられたとします。

  • マクドナルドとロッテリアは大衆向けのイメージがある
  • 特別感では、フレッシュネスバーガーがとても強く、次にモスバーガーだ
  • マクドナルドが定期的に販売する特別なハンバーガーと、フレッシュネスバーガーとモスバーガーは、いずれも値段が高い印象がある
  • メジャーという印象が強いのはマクドナルドとモスバーガーだ
  • フレッシュネスバーガー派とロッテリア派は、ほとんど被らない

この傾向を数値化したところ、以下のようになったとします。

マクドナルドロッテリアモスバーガーフレッシュネスバーガー
マクドナルド01.92.43.0
ロッテリア1.904.99.0
モスバーガー2.44.904.7
フレッシュネスバーガー3.09.04.70

先ほどは数字を概念図にしましたが、多次元尺度構成法では数字をX軸とY軸の2次元のグラフで描写します。

グラフ, ダイアグラム

自動的に生成された説明

X軸とY軸にどの要素を配置するかで、グラフの様相は変わってきます。ここではX軸(横軸)にメジャーと特別感を取り、Y軸(縦軸)に大衆性と高額を取りました。

マクドナルドは通常メニューと特別メニューの2つを載せています。

このグラフだけをみてください。それだけで、次のことがわかります。

  • マクドナルドは他の3つと近い(少なくとも遠くはない)
  • モスバーガーも比較的、他の3つと近い(少なくともすごく遠くはない)
  • ロッテリアとフレッシュネスバーガーは対極にある(両者のキャラクターはかなり違う)

つまり多次元尺度構成法のグラフを使えば、商品やブランドの関連性や類似性や親近性の強さと弱さを可視化できます。

可視化できれば、文章で「ロッテリアとフレッシュネスバーガーは対極にある」と説明するより訴求力が強まるでしょう。

プレゼン資料に多次元尺度構成法のグラフを載せると、説得力が増します。

多次元尺度構成法はマーケティングでこう使う

多次元尺度構成法は、マーケティングでどのように使ったらよいのでしょうか。

企業が新商品の試作品をつくったら、複数の顧客にモニターになってもらい、印象を尋ねる調査を行うことがあります。モニターに試作品とライバル商品を確認してもらえば、比較した感想を聞くことができます。

その印象を集計したら、多次元尺度構成法でグラフ化してみてください。

そうすると、例えば「ライバル商品とまったく異なるテイストを盛り込んだつもりだったのに、ライバル商品との類似性を指摘する声が多かった」といったことがわかります。

また、例えばある企業が、ライバル商品が人気になっているので、新商品を発売してそのシェアを奪おうと考えたのであれば、新商品をそのライバル商品に似せなければなりません。

このときも、新商品の試作品をつくるたびに多次元尺度構成法でグラフをつくれば、ライバル商品に近づいているのかどうかがひと目でわかります。

まとめ~近い関係だから近くに置く、という発想

多次元尺度構成法で「やっていること」は、近い関係のものを近くに置き、遠い関係のものを遠くに置くことです。関連性や類似性や親近性の強さと弱さは、長さ(近い、遠い)で表現するとみえやすくなります。

そのように考えると多次元尺度構成法は、小学校の遠足のバスのなかで、好きな人の近くに席を取ろうとしたり、嫌いな人から離れた席に座ろうとしたりするのと似ています。遠足のバスの座席表でクラスの児童たちの関係性がわかるように、多次元尺度構成法のグラフで複数の商品の関係性がわかるというわけです。

無料お役立ち資料フォーム


<参考>

多次元尺度構成法