統計不正で皮肉殺到「総務省標語募集で大喜利状態」

この記事を読むのに必要な時間は約 11 分です。

マーケティングにエビデンスが求められる時代になり、統計解析はエビデンスを補強するものとして今やマスト項目になっています。

マーケター自身が統計を実施することもありますが、統計は手間がかかるため、政府の統計データが利用されることもあります。

しかし、2018年12月に、厚生労働省が毎月勤労統計で不正を働いていることが発覚。

その後も別の統計不正が次々と明るみに出て、政府の統計データの信頼が大きく揺らいでいます。

その渦中のなか、総務省が「統計の日」の標語を募集しました。

無神経ともいえる「お役所仕事」に対し、標語を募集する総務省のツイッターは炎上。

ユーモアセンスがある人たちが総務省のツイッター上で繰り広げた「大喜利」を堪能しながら、統計不正を振り返っていきましょう。

総務省の「統計の日」標語募集とは

総務省の「統計の日」の標語募集ツイッターは、こちらのURLで確認することができます。

https://twitter.com/MIC_JAPAN/status/1091187414662402049/photo/1

こちらは2019年1月31日に投稿された「統計の日」標語募集のTwitter。

募集期間は2019年2月1日~3月31日であり、すでに募集終了しています。

例年は目立たない真面目なイベントだった

「統計の日」の標語募集は、普段であれば真面目な標語が寄せられます。

これまでに採用された標語のうち、秀逸なものを紹介していきましょう。

2011年度採用:小さな役目 大きな協力 統計はあなたが主役

2008年度採用:こつこつと 調べてわかる 日本の姿

2004年度採用:統計は、揺れる社会の揺るがぬ指標

2003年度採用:論より数字 勘より統計

 

どれも統計の本質をとらえていて、メッセージ性もあります。

また「論より数字 勘より統計」のように、リズミカルなものもあり、言葉としても優れています。

 

統計の日は、10月18日です。

総務省統計局は、この日を統計の日に制定したことについて次のように説明しています。

日本で最初の近代的生産統計「府県物産表」に関する太政官布告が公布された明治3年9月24日を太陽暦に換算した10月18日を「統計の日」としています

引用:https://www.stat.go.jp/naruhodo/c3d1018.html

全国紙も大喜利炎上を報道

これまで、「統計の日」の標語募集イベントはとても地味なイベントとしてマスコミに取り上げられることはほとんどありませんでしたが、統計不正発覚にも関わらず、総務省が気兼ねすることなく、例年とおり「統計の日」標語募集をしたため、大いに話題になりました。

全国紙である毎日新聞は、総務省のツイッターの炎上を「統計標語募集で『大喜利』状態 総務省職員は…」(2019年2月12日)と報じ、朝日新聞も「統計は適当にやっとうけい 間の悪い標語募集が大喜利に」(2019年2月14日)と紹介しています。

秀逸な標語たち

総務省の「統計の日標語ツイッター大喜利」では、次のようなユニーク標語が寄せられました。

統計 標語

標語は大きく、文化系、皮肉系、政府批判系、怒り系の4つに分けることができます。

それぞれ詳しくみていきましょう。

うまさが光る文化系

  • この数字 君がいいねと言ったから  偽装であっても統計記念日

この標語は、1980年代にベストセラーになった、俵万智さんの歌集「サラダ記念日」のなかの一句をもじったもの。

元の句は次のようになっています。

  • 「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

ユーモア標語は、統計の日を記念日に見立てたところが秀逸です。

また、「サラダの味がいいね」を「数字がいいね」に変えているところも、元の句をリスペクトしながら皮肉に仕立てていて、思わずニヤリとしてしまいます。

痛いところを突いてくる皮肉系

続いて、皮肉系の標語をみていきましょう。

  • 合わぬなら つくってしまえ 偽統計

織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の3人の天下人の性質を「ホトトギス」で言い表した句をもじったものです。

文化系ともいえますが、突っ込みが強いので皮肉系に入れました。

官僚が「政策に合致しない数字が出たのなら、数字をつくってしまえ」と言ったかどうかは定かではありませんが、今回の問題は「そのようなマインドだったのだろうな」と推測させるに十分な悪質さがあります。

  • 不景気も統計ひとつで好景気

この標語も、この問題の本質を見事に突いています。

日本は2013年から2018年にかけて長期間の好景気に恵まれましたが、市井の人たちは「実感がない」と口にしていました。

もしかしたら、操作された数字によって好景気と認定されていたから、実感が持てなかったかもしれない――と疑うこともできてしまいます。

哀愁すら漂う政府批判系

政府批判系のユーモア標語も多く投稿されていました。

それは、国民の多くが「官僚が自分たちの利益のために数字をいじるわけがない、官邸や有力政治家に忖度したからではないか」と疑っているからでしょう。

しかし、官僚といえば選りすぐりのエリートです。

その人たちが政治家の顔色をうかがいながら数字を操作するのは、情けない話です。

そのため政府批判系の標語には哀愁も漂います。

  • 権力の ためなら変えます その数字
  • 統計は今や出世の一里塚

もちろん、政府や政権与党を助けるのは官僚たちの重要な仕事ですが、それでも「権力のため」や「出世のため」に働いていると国民からみられているのは、つらいでしょう。

怒りの声を真摯に受け止めて

怒り系の標語には次のようなものがありました。

  • 統計は どうせ不正だ ほっとうけい
  • 意図的に 抽出省略 記入ミス

政府がつくる統計データは無数にあります。

不正に操作されたものはほんの一部のはずですが、1つでも不正があると他の統計データも信用性が疑われてしまうため、統計データには「絶対的な正」が求められます。

この怒りの声を、官僚は真摯に受け止めるべきでしょう。

統計不正問題のあらまし

統計不正問題の概略をみていきましょう。

発覚したのは2018年12月。

働く人の賃金や労働時間を調べる「毎月勤労統計」について、厚生労働省が誤った手法で調査していることがわかりました。

このころはまだ、新聞報道は「調査ミス」としていましたが、2019年1月に、厚生労働省が2004年からこの問題を放置していることが発覚。

さらに、毎月勤労統計が不適切であったために、雇用保険や労災保険の給付(お金)を少なく受け取っている人が2,000万人もいることが発覚しました。

その後、組織的な関与の疑いが強まったり、関連書類を廃棄したり紛失したりしていることも発覚。

これで完全に「不正」の烙印が押されたのです。

その後、総務省が厚生労働省の行為を検証し「法律を守る意識が欠けていて、事なかれ主義が蔓延している」と指摘しましたが、その総務省でも、「小売物価統計」で調査員が架空の数値を報告し、それが統計に数字に反映されていたことがわかりました。

「その総務省」が、統計の日の標語を募集したのですから、炎上したり大喜利になるのもやむをえません。

まとめ~統計は みんなの未来の 道標(みちしるべ)

統計は、過去の現象をデータ化してまとめただけのものではなく、未来の道標になるものでもあります。

マーケティングで統計を重視するのは、統計から消費者の次の行動が読めるからです。

政府がつくっている統計をもとに、さまざまな企業や機関や組織が投資判断や事業展開をしています。

統計を不正操作することは、未来を壊すことになりかねないことを今一度確認しておきたいものです。

 


参考

  1. 【統計】2019年度「統計の日」の標語募集(総務省)
    https://twitter.com/MIC_JAPAN/status/1091187414662402049/photo/1
  2. 統計標語募集で「大喜利」状態 総務省職員は…(毎日新聞)
    https://mainichi.jp/articles/20190209/k00/00m/040/244000c
  3. 統計は適当にやっとうけい 間の悪い標語募集が大喜利に(朝日新聞)
    https://www.asahi.com/articles/ASM2G6KVLM2GUTFK01N.html
  4. 統計不正(日本経済新聞)
    https://www.nikkei.com/theme/?dw=19011101
  5. 問題の核心は!?徹底検証・統計不正(NHK)
    https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4248/
  6. 統計不正問題(時事通信)
    https://www.jiji.com/jc/v7?id=1901kintou
  7. 「1強」弊害、どう排除=長期政権、目立つおごり-問われる安倍政権【19参院選】(時事通信)
    https://www.jiji.com/jc/article?k=2019062800686&g=pol
  8. 厚労省の統計不正「遵法意識の欠如」 総務省が調査結果(朝日新聞)
    https://www.asahi.com/articles/ASM376GJLM37UTFK025.html
  9. 底なしの統計不正、総務省に飛び火 「世界の信頼失う」(朝日新聞)
    https://www.asahi.com/articles/ASM215G7DM21UTFK00S.html
  10. 10月18日  統計の日(総務省統計局)
    https://www.stat.go.jp/naruhodo/c3d1018.html
  11. 統計の日等標語一覧(総務省統計局)
    https://www.stat.go.jp/info/kenkyu/kouhou/pdf/4-3.pdf