事例 NPS アンケート

【事例紹介】おすすめ度を尋ねるNPSが収益改善をもたらす【アンケート応用知識】

NPSの正式名称はNet Promoter Score。

日本語では「正味の推奨度」と略され、アンケートなどで「この商品を、あなたの親しい友人にすすめたいと思うか」などのように、おすすめの度合い(推奨度)を尋ねる手法です。

大切な人にすすめるかどうか尋ねることで、真の満足度を測定することができる手法として顧客満足度を調べるときによく用いられますNPS。

この記事では、NPSを使ったアンケートや顧客調査で成功した企業の事例を紹介します。

NPSの概要

事例を紹介する前に、NPSの概要を簡単に確認しておきます。

NPSは偽満足を排除できる

一般的なアンケートで顧客の満足度を調べるとき、「あなたはこの商品に満足していますか」や「満足度は10点満点中何点ですか」と尋ねるはずです。

しかし、回答者のなかには、「不満がないから」という理由や、「不満は多いけど長年使っていて支障はないから」といった理由で、満足していると回答する人がいます。

これらはいわば「偽満足」といえますが、これが集計結果の満足度の点数を高めてしまうと、顧客満足度が高いはずなのに、顧客がいつも不満げな顔をしている、といった状態が起こりうるのです。

NPSでは、親しい友人、家族、同僚などに推奨するかどうか尋ねますが、その理由として、推奨には責任が伴うということが挙げられます。

「自分が使う分には問題ないが、友達にすすめられるほどではない」となると推奨度は低くなるため、偽満足を排除できるのです。

NPSは数値化できる

NPSは数値化することができます。

NPSの計算式は次のとおりです。

●NPS=推奨度(%)-批判度(%)

単位はなく、推奨度の%の数字から批判度の%の数字を単純に引き算するだけです。例えば、推奨度30%、批判度20%という結果になったら、NPSは「10」となります。

NPSの数値が高いほど、推奨度・満足度は高いとみなされます。

ソニー損保のNSP活用事例

ソニー損害保険(以下、ソニー損保)は、ネット販売型自動車保険のシェア1位の会社です。

同社は自社の強さを「顧客利益を最優先にしてきた結果」であると考え、NSPの指標は収益に直結すると述べています。なぜここまでNPSを信用しているのでしょうか。

客から支持される理由をNPSで見つけた

ソニー損保は自社の自動車保険が支持されている理由を、1)走行距離に応じて保険料を変えるリスク細分型の料金体系だから、2)客が納得して選んでいるから、3)事故対応とロードサービスが充実しているから、と分析しています。

ソニー損保は、この3つの理由こそ、自動車保険を探している人が求めているものであることをNPSを使った調査で知りました。

同社がNPSを導入したのは2013年のこと。

かなり早くから活用を始めた企業の1つといえます。

ただ、ソニー損保が最初にNPSから得た知見は、意外なものでした。

当時、リピーターの多くが、他社のネット型自動車保険に乗り換えるのが面倒だから、という理由で継続契約をしていることがわかり、ソニー損保は「ソニー損保だから選ばれているわけではない」ことに危機感を覚えます。

その結果、NPSで顧客の意向を深掘り。料金体系、納得感、サービスの充実が、推奨度を高めることをみつけたわけです。

NPSを使った業務改善は社員の士気を高める

ソニー損保は、NPSによって社員の士気を高めることにも成功しています。

一般的な満足度調査の場合、調査結果から改善項目を探すとき、客が不満に感じていることにフォーカスを当てますが、それはネガティブな要素に向き合うことになるので、社員の士気が上がりません。

しかしNPSでは、どうすれば客が他の人にこの商品を推奨するようになるのか、がわかるので、それを強化していくことができます。社員たちは客が喜ぶことを考えるようになるので「お客様のために」という気持ちが芽生えやすくなります。

民泊サイトの旗手Airbnbは「推奨が命」

自宅や別荘などを宿として旅行者に貸す宿泊ビジネスを民泊といいますが、民泊を紹介するサイトの先駆者であり旗手でもあるAirbnbも、NPSをフル活用しています。

友人紹介プログラムはNPSそのもの

ユーザーが民泊サイトを使う目的は、(1)民泊を探すことと、(2)よい民泊を探すことです。

民泊は、運営する事業者の規模がホテルや旅館よりはるかに小さく、民宿よりも小さいので、旅行者に知ってもらうことが難しいという特徴があります。そのため民泊ユーザー(宿泊客)は、民泊サイトを使わざるを得ません。

そして、民泊は小規模零細事業者が運営しているので、クオリティの差が激しいという特徴もあります。つまり、外れの民泊は少なくありません。

つまり、民泊サイトには、(1)多くの民泊を紹介するだけでなく、(2)よい民泊を多く紹介しなければならないという使命があります。

Airbnbでは、友人紹介プログラムという仕組みを導入しました。Airbnb経由で民泊を利用した人が、誰かにその民泊を紹介し、その人がその民泊を利用したら、Airbnbが紹介者に割引券を発行。紹介者はその割引券を使って、さらに安く民泊を使うことができるという仕組みです。

友人紹介プログラムによって、よいサービスを提供した民泊は、多くのAirbnbユーザーに支持されるようになり、Airbnbは民泊事業者から手数料を取るので、民泊事業者が多くの客を獲得することはAirbnbの利益に直結します。

友達紹介プログラムは、「親しい友人にすすめたいと思うか」と問うているようなもの。すなわち、NPSそのものといっても過言ではないでしょう。

アメックスなはぜ顧客満足度を捨ててNPSを重視するようになったのか

NPSは顧客満足度を深掘りするために開発されたものであり、「従来の満足度≒NPSの推奨度」となりますが、厳密には推奨度と満足度は異なります。

クレジットカード世界大手のアメリカン・エクスプレス・インターナショナル(以下、アメックス)は、長年顧客満足度を高めることに注力してきましたが、あるとき、アメックスのクレジットカードを継続して持ってもらっても、使用頻度が伸びないことに気が付きます。

それで重視するようになったのがNPSです。

アメックスかアメックスじゃないか

アメックスはNPSを高めることに集中しました。つまり、「アメックス・ユーザーに、アメックスを知り合いに推奨してもらうこと」に集中したわけです。

満足度調査から発展したNPSは、本当に満足しているかどうかを測るために、人にすすめるかどうかを調べるもの。

しかし、アメックスは、既存の顧客に(既存のアメックス・ユーザーに)、ダイレクトにアメックスを他人にすすめるよう促したのです。

アメックスが重視した戦略は、企業ブランドとロイヤリティでした。つまり「他のクレジットカードではだめで、アメックスを使いたい」というユーザーを増やすことでした。今風にいえば「アメックスか、アメックスでないか」というポジションを目指したわけです。

NPSでは、顧客に0~10の11段階で推奨度を尋ねますが、アメックスはユーザーが9または10と回答することを目指しました。それはつまり、7や8程度の推奨度では「よしとしない」ことを意味します。

アメックスが取った戦略は、京都の建仁寺を貸し切って紅葉イベントを開いたり、有名な元プロ野球選手を招いた野球教室を開催したりして、アメックス・ユーザーを招待するなど、ユーザーを驚かせて感動させるもの。

こうした取り組みにより、解約件数が4分の1に減り、ユーザー1人当たりの利用金額が10%増加しました。

まとめ~顧客を動かす必要がある

顧客の「不満があるが、まあ満足している」という回答を、満足ととらえるか、不満ととらえるかは、経営者次第というところがあります。

顧客が逃げていない以上、満足しているといえなくもありませんが、それではより魅力的なライバルが現れたらすぐにシェアを奪われてしまうでしょう。

売上低迷などの課題を抱える企業は、顧客のほうを向くだけでは足りず、顧客を揺り動かしていく必要があります。揺り動かすことができたかどうかは、アンケートにNPS方式を導入すれば数値で測ることができます。

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<参考>

「NPSは収益に直結する指標だ」ソニー損保の顧客ロイヤルティ戦略の秘密 第1回

「紹介」こそ最強のマーケティング戦略 時価総額3兆円超のAirbnbの取り組みの解剖

「顧客満足度が上がれば売り上げも増える」のウソ、アメックスが採用した究極の指標「NPS」