Excelのピボットテーブルという機能を使えば誰でも簡単に、さまざまな角度からアンケート結果を集計することができます。
アンケート結果は多くのことをマーケターに示唆しますが、表面上の分析だけでは掘り起こせない情報も。
ピボットテーブルはアンケート結果の本質に迫る道具になります。
ピボットテーブルならデータの統合、比較、分析ができる
ピボットテーブルはExcelの機能の1つで、これを使うことによってデータの統合や比較、分析ができます。
ピボットテーブルの使い方を解説していきます。
アンケート結果をExcelに入力する
設問数3、選択肢がa、b、cの3択のアンケートに男性2人、女性4人、計6人から回答があったとします。
回答者 | 性別 | 年代 | 問1 | 問2 | 問3 |
Aさん | 男 | 20代 | a | b | c |
Bさん | 女 | 30代 | a | c | a |
Cさん | 女 | 40代 | c | a | b |
Dさん | 女 | 40代 | a | b | b |
Eさん | 男 | 30代 | b | c | c |
Fさん | 女 | 20代 | c | a | a |
このデータをエクセルに入力すると次のようになります。
「挿入」から「ピボットテーブル」をつくる
データをExcelに入力したら、ピボットテーブルを作成していきます。
Excel上のデータをすべて選択して、「挿入」から「ピボットテーブル」を選択。
「ピボットテーブルの作成」をクリックします。
すると、新たなシートが自動で作成され「ピボットテーブルのフィールド」が現れます。
フィールドで、どのデータを抽出するか決めます。
●例えば「男女別」の「問1」の回答内容を調べる
アンケート結果から「男女別」の「問1」の回答内容を調べることになったとします。
このときフィールドの「列」に「問1」を入れ、「行」に「性別」を入れ、「Σ値」に「個数/問1」を入れます。
フィールドは以下のようになります。
これを実行すると、以下の表が得られます。これがピボットテーブルです。
この表から、次のことがわかります。
- 問1でaと答えた人は計3人いて、内訳は女性2人、男性1人
- 問1でbと答えた人は計1人いて、内訳は男性1人
- 問1でcと答えた人は計2人いて、内訳は女性2人
2つの表を比べてみる
上記の2つの表を並べると、ピボットテーブルがどれほど便利かわかります。
<元データの表(再掲)>
<ピボットテーブルで必要なデータだけを抽出した表(再掲)>
<元データの表>から「男女別の問1の回答内容」を調べるにはとても手間がかかります。
しかし<ピボットテーブルで必要なデータだけを抽出した表>なら、ひと目で「男女別の問1の回答内容」がわかります。
抽出データの変換も一瞬で終わる
続いて「年代別の問1の回答内容」を調べてみましょう。
フィールドを次のように変更します。
「列:問1」「行:年代」「Σ値:個数/問1」
これを実行すると、ピボットテーブルは次のように変わります。
この表から、回答者の内訳は20代2人、30代2人、40代2人であることが、そして、問1の回答内容は「20代は、a1人、c1人」「30代は、a1人、b1人」「40代は、a1人、c1人」だったことがわかります。
ピボットテーブルを使えば、マーケターは必要な情報を瞬時に取り出すことができます。
ピボットテーブルでアンケート結果をこのように「料理」しよう
ピボットテーブルを使いこなせるようになると、マーケターはアンケート結果をいかようにも「料理」することができます。
反応がポジティブなのかネガティブなのかがわかる
アンケートの選択肢のつくり方を工夫すると、アンケート全体がポジティブ反応なのかネガティブ反応なのかがわかります。
選択肢は例えば次のようにつくります。
- 当社のことを知っているか:a知っている、bよく知らない、c全然知らない
- 当社のブランドイメージは:aよい、b普通、c悪い
- 当社の製品を使っているか:aよく使っている、bたまに使う、cまったく使わない
- 当社の製品の価格はどうか:aコスパがよい、b普通、c割高
選択肢を、aをポジティブ、bをニュートラル、cをネガティブに統一することによって、aの割合が多ければ、回答者はおおむね自社によい印象を持っている、など、ピボットテーブルでa、b、cを集計するだけで、回答者の全体的な傾向をつかむことができます。
このポジティブorネガティブ集計を複数のアンケートで実施すると、自社の好感度が上がっているのか下がっているのかを知ることが可能です。
「~ごと」に集計できるからアンケート結果を余すことなく有効活用できる
アンケートを実施すると、経営者をはじめ社内の多くの人が結果を知りたがります。しかし、営業は営業に関する結果を、開発は新商品に関することを知りたいなど、部門ごとに関心事は異なるため、マーケターが、アンケート結果を丸ごと関係者に渡してしまうのは不親切です。
ピボットテーブルを使えば、アンケート結果を営業関連ごとに集計することも、開発関連ごとに集計することも自由自在です。
したがって、マーケターは、アンケート結果からそれぞれの部署に関係する要素だけを、ピボットテーブルで抜き出して渡すことが可能。
「~ごと」に集計できれば、アンケート結果を余すことなく有効活用することができます。
因果関係を調べやすくなる
アンケート結果には、結果だけでなく要因も眠っています。しかし、要因と結果の因果関係は、意外にみつけづらいものです。
例えば、次のようなケースが発生したとします。
- アンケートを行って、自社のブランド力が低下していることがわかった
- ところが売上高はむしろ増えている
このとき、ブランド力が落ちていても売上高が増加しているのだからよい、と判断するのは危険です。ましてや、たまたま今回のアンケートだけブランドに魅力を感じない回答者が多かったのだろうと、根拠なく推測することは避けなければなりません。
このとき、ピボットテーブルを使ってアンケート結果をさまざまな角度から分析していくと、
- この会社の主力製品は女性向けのものだった
- ところがその主力製品を男性が使うようになって売上が増加した
- しかしその結果「男性が使うものは使いたくない」と感じる女性ユーザーが増えブランドイメージが低下した
など、意外な理由がみつかるかもしれません。
こうした複雑な因果関係は、アンケート結果を普通に集計しているだけでは見抜くことができないものであり、マーケターが何度も何度もピボットテーブルでアンケート結果を分析することでようやくみえてくるものです。
まとめ~深い洞察を得るための武器になる
マーケターはよく「アンケートで洞察を得る」といいます。洞察とは、物事の本質に迫ること。アンケートに多くの情報が含まれているので、マーケターがそれを1つひとつ丁寧に掘り起こすことができれば、マーケティングに必要な洞察を得ることができます。
ピボットテーブルは、アンケートのなかから情報を掘り起こすシャベルのようなものです。マーケターがピボットテーブル・スキルを身につければ、アンケートを広く掘ることも深く掘ることも思いのままとなるでしょう。
<参考>