AWSとは、アマゾン・ウェブ・サービスの略で、「アマゾンが提供するクラウドコンピューティングサービス」のこと。
インターネット経由でコンピュータの能力を利用する仕組みであり、AWSは日本政府にも導入されています。
AWSでできることと、AWSを使うメリットとデメリットを紹介します。
AWSとは
AWSは、Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスのこと。
クラウドサービスが登場する以前、大量かつ複雑な仕事をするためにサーバーが必要である場合、自社内にサーバーを設置していました。
しかし、自社内にサーバーを設置するには、サーバーを設置する場所やサーバを管理する人、そして、サーバーを購入するためのコストが必要となります。また、サーバーが納入されるまで、待たなくてはなりません。
そこで生まれたのが、クラウド・サービスです。
クラウドサービスはサーバーの使用料を支払えば、その能力を借ることができるため、サーバーを置く場所も管理する人も必要ありません。
企業は、自前でサーバーを買う必要がないので多額の初期投資もしなくて済むのです。
クラウド・サービスは、アマゾン以外にも、マイクロソフトやグーグル、IBMも提供していますが、その中で注目されているのがAWSです。
AWSが注目されている理由はいくつかありますが、その1つに「料金の安さ」があります。
最近は他社も値下げしていますが、AWSは、クラウド業界に価格破壊をもたらしました。その印象が強いので「AWSは便利なうえに安い」というイメージを持っている人が少なくありません。
また、日本政府は2020年2月に、公務員の人事や給与、文書管理などを処理するコンピュータ・システムとして、AWSを使っていく方針を打ち出しました。その予算額は2026年度までに300億円を超えます。
「政府が使うくらいなのだから、セキュリティが強いのだろう」というのもAWSの魅力の1つです。
AWSを使うメリット・デメリット
AWSを使うメリットとデメリットについて、みていきます。

メリットの量ははかりしれない
AWSは人気のクラウド・サービスであり、企業がAWSを使うメリットは、クラウドを使うメリットになります。
そのメリットの量は、はかりしれません。
<コスト安>
「クラウドを使う」ということは「サーバーを持たない」ということなので、企業がIT環境整備にかけるコストはかなり削減できるはずです。
また、AWSは、使った分だけ料金を支払えばよいという仕組みである「従量課金制」という料金制度を採用しています。つまり、AWSを使っていないときは、料金が発生しません。
<最新のコンピュータを使える>
AWSを含むクラウド・サービス各社は、最新のコンピュータを導入して高い処理能力を売っていかなければなりません。
つまり、AWSを利用する企業は、自社でコンピュータを更新することなく、アマゾンが持っている最新のコンピュータを使うことができます。
<試行錯誤を躊躇せず実行できる>
企業はAWSを、使いたいときに借りて、要らなくなったらすぐにやめることができます。例えば、企業の開発担当者が、コンピュータを使って新たな試みをしたいと考えたら、AWSと契約すればすぐにコンピュータを使うことができます。
その試みが成功して事業化できれば、AWSとの契約を更新すれば、クラウドを使い続けることができます。
もし、試みに失敗したら、AWSの使用を中断すればよいだけです。
AWSを使えば、トライ&エラーを躊躇なくいつでも簡単に実行できます。
<AWSは機能が豊富>
AWSは、他社のクラウド・サービスより、機能が多いと指摘する人がいます。ただ他社もAWSを研究しているので、機能の差はそれほどないという人もいます。また、AWSが弱点にするサービスを、他社が得意にしていることもあります。
しかしそれでも、AWSはまだまだ十分に優位性を持っています。企業がクラウドの導入を検討するとき、その候補にAWSを入れない理由はないでしょう。
デメリットは「難しさ」か
AWSにもデメリットがあります。
<機能が多すぎて難解>
AWSのデメリットの1つとして、機能が多すぎることが挙げられます。
多くの機能がある、ということは良いことでもありますが、社内のITインフラを整備する担当者がAWSを使おうと考えても、すぐにAWSの全貌をつかむことは簡単ではないでしょう。
そのため、AWSを導入する企業をサポートする会社があるくらいですが、AWSの導入をサポートしてくれる会社に手伝ってもらうには、その会社に報酬を支払わなければなりません。
<セキュリティは本当に安全なのか>
AWSを含むすべてのクラウド・サービスにいえるデメリットは、セキュリティ問題です。
AWSについては「政府が使うくらいなのだから、セキュリティが強いのだろう」と思うことができますが、それでも自社でサーバーを保有して、自社でデータを管理するよりは、セキュリティが弱くなるかもしれません。
ただし、企業がクラウドを使うメリットは相当大きいので、セキュリティを心配しすぎて導入しない選択をするのは、得策とはいえない場合があります。
AWSの代表的なサービスと用語の解説
「AWSで何ができるのか」という質問の答えは、「御社がコンピュータにやらせたい仕事のほとんどをこなすことができる」となるでしょう。
AWSの代表的なサービスとAWS用語を紹介しながら、その利便性を確認していきます。
EC2とインスタンス
EC2は、仮想サーバを提供するサービスです。
「エラスティック・コンピュータ・クラウド」(EC2、Cが2つ続くので「C2」と表記します)は「AWSといえば」といえる代表的なサービスであり、EC2を使いたいからAWSを選ぶ企業があるくらいです。
クラウドがない時代、企業が大々的にコンピュータ処理を行おうとすれば、自社サーバーを置かなければなりませんでした。
しかし、EC2を利用すれば、自社にサーバーを置いたような状態になります。だから「仮想」です。
説明を大胆に単純化すると「AWSでできること」とは「EC2でできること」であり「サーバでできること」です。
例えば、ある企業がネット通販事業を始めようとした場合、EC2に通販サイトに必要な処理をさせることができます。
データベースが必要なら、EC2をデータベースとして使うことができます。
ネット・マーケティングも、EC2で実施できるでしょう。
「インスタンス」は、EC2における仮想サーバーの名称です。例えば「EC2 A1インスタンス」や「EC2 T3インスタンス」などがあります。
インスタンスごとに特徴があって、「A1インスタンスは、包括的かつコストダウンを重視する企業向き」「T3インスタンスは、中程度のCPU使用率を持つアプリ向き」「M6gインスタンスは、幅広いワークロード向き」といった特徴があります。
ユーザー企業は、自社のニーズに合った「EC2インスタンスタイプ」を選ぶことができるわけです。
S3
「シンプル・ストレージ・サービス」(S3)は、ストレージ・サービスの1つで、大量のデータを整理して保管してもらうことができます。
企業がサイトやアプリをつくったり、バックアップをしたり、ビッグデータの分析をしたりすれば、その都度大量のデータが発生します。
S3を使えば、それらのデータを保管するだけでなく、データをいつでもスムーズに取り出せるようになります。
ストレージとは「データを保管しておく箱」という意味です。
EBS
「エラスティック・ブロック・ストア」(EBS)は、EC2と一緒に使います。「EC2の外づけHDDのようなもの」と説明する人もいます。
EC2単体では、仮想サーバーを停止させると自動的に初期化されてしまいます。そのため、起動と停止を繰り返して使う場合、とても不便です。
EBSがあれば、仮想サーバーを停止する前に、データをそこに保存することができます。
仮想サーバーの停止後に起動するとき、EBSからデータを呼び出せば、停止前の状態から作業できます。
RDS
「リレーショナル・データベース・サービス」(RDS)は、クラウドでリレーショナル・データベースを構築できるサービスです。
リレーショナル・データベースとは、複数の「表」を関連づけることができるデータベースです。
データは「行」と「列」からなる「表」の形をしています。複数の表がある場合、表どうしで関連しているデータが含まれていることがあります。このとき、1つの表の関連データを更新したら、別の表の関連データも更新できると、処理が早くなります。
RDSを使えば、それが可能になります。
RegionとAZ
「リージョン」(Region)は地域という意味です。AWSは世界各地にデータセンターを持っていて、それぞれのデータセンターは、特定の地域(特定のリージョン)を管理します。
リージョンよりさらに細かい地域分けのことを、「アベイラビリティーゾーン」(AZ)といいます。
AWSのなかで日本という地域は、「アジアパシフィック」というリージョンに含まれます。
それぞれのリージョンは独立しているため、1つのリージョンでトラブルが起きても、それが他のリージョンに波及しません。
1つのリージョンのなかの複数のAZは、通信線によってつながっています。
VPCとサブネット
「バーチャル・プライベート・クラウド」(VPC)は、AWSを使う環境を整えるサービスです。VPCを使うと次のようなことが可能になります。
- 2つのEC2どうしで通信させる
- EC2とRDSの間でデータをやりとりする
- 内部のネットワークと外部のネットワークをつないだり、切断したりする
VPCを使うことによって、AWSを自社用にカスタマイズしたり、複数の「サブネット」を利用できるようになります。
大型のネットワークが1つしかない場合、それを外部のネットワークとつなげてしまうと、セキュリティ・リスクが高まってしまいます。
そこで、大型のネットワークのなかに、複数のサブネットをつくり、それを「パブリックサブネット」や「プライベートサブネット」にわけます。
パブリックサブネットとは、外部のネットワークとつなげるネットワークであり、プライベートサブネットとは、外部のネットワークとつなげないネットワークです。
パグリックサブネットで通常業務を行えば、外部のネットワークとつながっているので作業効率が上がります。
そして、重要なデータだけをプライベートサブネットに保管しておけば、外部からの攻撃を回避できます。
CloudWatch
「クラウドウォッチ」は、ユーザー企業の経営者やエンジニアや開発者やIT管理職たちが、クラウドをモニタリングできるサービスです。
クラウドウォッチを導入すると、EC2やRDSがきちんと機能しているかどうかがわかります。
IAM
「アイデンティティ・アンド・アクセス・マネジメント」(IAM)とは、スタッフにAWSへのアクセス権を与えたり、拒否したりできる機能です。
企業がAWSを積極的に使い始めると、企業活動のあらゆることがAWSのなかに入ってしまいます。その状態で全社員がAWSにアクセスできてしまうと、トラブルの原因になりかねません。
IAMを使えば、例えば「このEC2にアクセスできるのは、AさんとBさんとCさんだけ」とすることができます。また、「いつ誰がどれくらいの時間、このEC2を利用したか」ということもわかるようになります。
まとめ~「できなかったことができる」「できることがよりできる」
AWSを使うと、これまで企業のなかでできなかったことができるようになるでしょう。企業が作業の効率化や生産性の向上を考えるとき、「AWSをどう活用しようか」という視点を持っていると正解に近づけるかもしれません。
また、社内に置いてある古いサーバーを廃棄してAWSに切り替えると、これまでできていたことが「よりできる」ようになるかもしれません。
企業が自社のIT環境を刷新するときは、社内のニーズや達成したい目標、サーバーのメリット・デメリットとAWSのメリット・デメリットを比較検討するといいでしょう。
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<参考>
圧倒的なシェアを誇るクラウド・サービス「AWS」の強みと展望