カジュアルな衣料品を生産・販売しているUNIQLO(ユニクロ)は、日本だけでなく、世界各国に店舗を展開している有名な企業です。
しかし、ユニクロは創業当初からずっと業績を維持している会社ではありません。実は、2002年頃に国内での在庫が急増したり、外国に出店している店舗で売上が落ちたりして、大きく利益が落ちたこともありました。
現在のような売上を誇るようになったのは、現代的なマーケティング施策を成功させたからだといわれていますが、ユニクロの状況を一変させたマーケティング施策とは、いったい何なのでしょうか。
今回は、ユニクロで実際に行われたマーケティング施策を紹介します。
この記事は、次のような人におすすめの内容です。
- ユニクロの成功の秘密が知りたい人
- ユニクロのマーケティング施策が気になる人
- 有名な企業でのマーケティング成功例をチェックしたい人
カタログ感覚で行き詰るEC
ユニクロのECは、2000年から開始されましたが、当時のECは、顧客がネット上のカタログをチェックして注文できるシステムでした。
今では当たり前になっているクーポンの発行やデータの書き換えなどは、当時の通信環境では難しかったこともあって、うまくECサイトの活用ができずにいましたが、2009年、中国での業務委託をきっかけに、SNSとモバイルを軸にECを刷新したのです。
具体的な施策については次の章で紹介しますが、この改革によってECでの売り上げはユニクロの国内販売額の3.3%に達しました(2012年8月期)。
SNSとモバイルを軸にECを刷新
ユニクロは、SNSとモバイル会員を賢く使ってECを刷新したことでマーケティングを成功に導きました。
それぞれの戦略について、詳しく説明していきます。
SNSのマーケティング戦略
SNSにはいろいろな種類がありますが、特にインスタグラムはファッションに関係するECと相性が良いといわれています。なぜなら、他のSNSよりも「おしゃれ」なイメージを持つ人が多いからです。
そして、ユニクロではTwitterやFacebookだけでなく、Instagramも積極的に活用したマーケティングが行われています。
季節商品や新商品のおしゃれな写真をアップし、商品にはECサイトがタグ付けされていますが、こうすることで、インスタグラムを閲覧した顧客は、ユニクロの投稿をタップすると簡単にECサイトで商品の詳細情報をチェックできるのです。
ECサイトをチェックする顧客が増えると購買機会が増え、実際に店舗に行って商品を買う顧客の増加が見込めます。
モバイル会員のマーケティング戦略
ユニクロでは、顧客とコミュニケーションができる場所として「モバイル会員」システムが導入されています。
ユニクロのモバイル会員になると、次のような機能を利用できます。
- 購入履歴に基づいた情報が定期的に届く
- 商品を購入するとECサイトや店舗で使えるクーポンが受け取れる
- 無料で商品を使えるモニターになれる
- 店舗でのチェックイン機能
- 店舗の在庫検索
- 店舗限定のチラシのチェック
ユニクロ側からすれば、モバイル会員になる顧客が増えれば増えただけ、購買行動を把握できるようになります。また、クーポンを配布すれば販売促進に繋がり、わざわざ商品モニターを集める手間もかかりません。
日本経済新聞によると、2019年10月時点のアパレル関連のアプリ利用者数を比較すると、次の表の通りです。
(月間利用者数で比較)
アパレル系のアプリは多数配信されていますが、ユニクロのアプリをダウンロードしている人が非常に多いことが分かります。
企画から販売まで自社で完結する「SPA」
SPAは「Speciality store retailer of Private label Apparel」の頭文字をとった言葉であり、いわゆる製造小売業のことをさします。
ユニクロは、商品の製造から小売までの工程をすべて自社で行っていますが、SPAを取り入れると、売り場の状況に合わせて商品の生産ができるため、大量の在庫を抱える心配が無く、商品の不足にも柔軟に対応できます。
SPAのメリット・デメリット
ユニクロが行っているSPAのメリットとデメリットを図でまとめました。

SPAは、必ずしも良いことばかりの仕組みではありません。
しかし、SPAのデメリットをしっかりカバーできるノウハウや人材を持ち、SPAのメリットを最大限に活かしたことがユニクロの成功の要因と捉えられます。
「着心地が良く」て「高品質」、「手に届く価格」の「LifeWear」
「LifeWear」とは、いろいろな人の生活を豊かにする服のことを意味しますが、ユニクロは、特定の人に対して服を提供するのではなく、あらゆる人が快適に過ごせる服を届けることに力を入れています。
「LifeWear」に当てはまる商品の例としては、次のようなものがあります。

いずれもユニクロを代表する商品と言っても、過言ではないでしょう。
「LifeWear」をモットーに特長ある商品を顧客に提供し続けたことが、ユニクロがマーケティングで成功した要因なのかもしれません。
One to Oneに近いマーケティングが目標
ユニクロは、将来的に、顧客1人1人に対してアプローチする「One to One」を目指しています。
具体的なマーケティング施策はまだ出てきていませんが、ユニクロの担当者は顧客の属性や購入・閲覧履歴、店舗の滞在時間などを元に、ECで表示する画像の種類や枚数を変えたいと考えているようです。
いくつかのマーケティング施策を成功させて満足するのではなく、常に新しい手を考え続けているのがユニクロの成功の秘訣といえるでしょう。
まとめ
ユニクロは、いろいろ試行錯誤をしてマーケティング施策を成功させた企業です。
実施した施策がすべて成功したわけではありませんが、失敗から得た情報を元に、「どうすれば成功するのか」を考え、行動し続けたのです。
有名な企業であっても、マーケティングで失敗することはあります。
自社で新たなマーケティング戦略を考えるときは、さまざまな企業の施策を参考にするのがおすすめです。
今回紹介した内容を参考に、自社に合ったマーケティング施策を考えてみましょう。
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<参考>
マーケティング用語集SPA(製造小売業)(J-marketing.net)
ファッション販売2002年4月号『ユニクロの大失速に何を学ぶか』(小島健輔の最新論文)
UNIQLOユニクロ(@uniqlo)(Instagram)