サブスクリプション

「定額制」だけでは足りないサブスクの本質と実例

一般消費者の多くが「定額制」「月額制」と理解しているサブスクリプションですが、ビジネスパーソンやマーケターは、それだけでは足りません。

サブスクリプション(以下、サブスク)には、企業と顧客の関係を深化、長期化させる力があります。

この記事では、サブスクの概要を紹介したうえで、その本質に迫ります。

subscriptionの元の意味は「寄付、会費、同意」

「和製英語」のなかには元の英語の意味から遠く離れてしまうものがたくさんあります。

subscriptionの元の意味は「寄付、会費、同意」ですが、現在の日本で使われている「サブスクリプション」の定義は「製品やサービスなどを一定期間利用して、定額の代金を支払う方法」。

月額制や定額制は、サブスクサービスの重要な要素であり、宅配制の新聞やリースは代表的なサブスクサービスとなっています

なぜサブスクで顧客との関係が深まるのか

なぜ、定額制や月額制を導入すると、企業と顧客の関係が深まるのか――このように考えると、なかなかサブスクの本質に近づくことはできません。

企業と顧客の関係を深めるサブスクをどう構築していったらよいのか――このように考えれば、導入する価値のあるサブスクを構築することができます。

サブスクの共通したルールは、定額制や月額制ですが、サブスクサービスの内容は、各社それぞれです。

商品が違えば、サブスクサービスの内容を変えてみるといいでしょう。

自分の会社でサブスクサービスを構築する場合の注意点は、次の4点です。

サブスクリプション

上記の( )内は、従来のビジネスモデルであり、いわば非サブスクビジネスです。

( )内の内容について反省した結果、サブスクが生まれたと考えてよいでしょう。

これまで、企業は顧客に商品を購入してもらうことで対価をもらっていましたが、多くの消費者は、購入コストや購入リスクを「馬鹿馬鹿しく」感じたり、「なぜそのようなコストとリスクを、客である自分たちが負わなければならないのか」と感じ、利用と使用にこそ価値があることに気がつき始めたのです。

サブスクでは、顧客は、商品やサービスを利用すれば利用するほど、コストもリスクも減ります。

また、これまで、企業は、商品価格を高くするために顧客が納得する品質にしようと躍起になったり、商品を多く買ってもらえるように商品価格を安くして、顧客に納得してもらう努力を積み重ねてきました。

しかし、サブスクでは、顧客の経験にフォーカスし、「顧客はどのような経験をしたいのか」「顧客が驚く経験とはなんだろうか」と考えて、商品やサービスを開発して、定額制・月額制で提供。

少なくとも1カ月は、企業と顧客がつながっていて、顧客が利用を中断する際に、その理由を顧客に尋ねることができます。

顧客が不満を伝えれば、顧客が間違った使い方をしていることがわかるかもしれませんし、顧客の不満点を改善した商品をつくれば、もう一度その顧客にアプローチすることができるでしょう。

また、企業は、これまで、デフレ経済のなかで価格競争に陥っていましたが、サブスクの仕組みを使えば、高額商品や高付加価値サービスを割安に使ってもらうことができます。

「安さで勝負したくない」と考えてきた企業には、絶好のチャンスです。

サブスクで高級品、高品質サービスを体験した顧客は、もう「安物」に戻れないでしょう。

企業は、サブスクサービスを通じて、顧客に「もう安物に戻れない」と思わせる体験をさせなければなりません。

サブスクのメリット・デメリット

サブスクは従来のビジネスモデルの改良版であり、メリットが多くデメリットが小さい手段である、と考えることができます。

サブスクのメリットは、企業と顧客の関係を深められること。

優れたサブスクサービスを構築すれば、顧客は経験や体験に満足し、高品質の商品やサービスによって快感を得ることができます。

顧客の満足度を高めることができるので、企業へのロイヤリティも自ずと高まるでしょう。

一方、サブスクのデメリットは、優れたサービスを提供できなかったときに発生します。

単なる定額制、単なるリース、単なる分割払いと同じレベルのサービスしか顧客に提供できなければ、満足度は高まりません。

顧客が「サブスクのほうが割高なのではないか」と疑うようになると、企業のブランドや信頼性に傷がつくでしょう。

仮に「流行っているから、うちもやろう」という安易な動機でサブスクを始めた場合、顧客の経験価値を高める取り組みや、顧客と一緒に価値を高める仕組みの導入、高付加価値の商品を利用してもらう働きかけを矢継ぎ早に打ち出していかないと、サブスクから撤退することになりかねません。

サブスクの代表的な実例

サブスクの代表的な実例としてアマゾンのアマゾンプライムとトヨタのKINTOの2例を紹介します。

アマゾンのサブスクリプションサービス「アマゾンプライム」

アマゾンプライムは、年4,900円か月額500円の定額制・月額制サービスです。

アマゾンプライムは、先ほど紹介したサブスクの4要素(利用の対価、経験価値の向上、価値の共創、高付加価値)のすべてを含んだものであり、アマゾンプライムに加入すると、

  • 最短配送(お急ぎ便)
  • 映画・ドラマ・アニメ見放題(プライムビデオ)
  • 生鮮食品の当日配送(アマゾンフレッシュ)
  • 電子書籍サービスの充実(プライムリーディング)
  • ポイントの増加(アマゾンポイント)

というサービスを受けることができます。

多くの人は、アマゾンプライム会員にならなくても、アマゾンの通常のサービスに満足しているため、アマゾンは、「どこまでサービスを充実すれば、アマゾンプライム会員になってくれるか」と考え、顧客が「これならプラス月500円に見合う」と納得するまで、サービスを増やしました。

その結果、多くのアマゾンユーザーに「アマゾンを使い続けるなら、アマゾンプライムに入らないと損」と思わせることに成功したのです。

トヨタが苦戦「KINTO」

トヨタは2019年2月に、諸経費コミコミで、3年間新車に乗ることができるサブスク「KINTO ONE」(以下、KINTO)を始めました。

料金は、最も安いコンパクトSUV「ライズ」で月39,820円、最高値はクラウンの月95,700円(いずれも税込、以下同)。

KINTOの料金には、任意保険料もメンテナンス料も各種税金も含まれ、しかも、トヨタの新車に乗ることができます。

しかし、トヨタの販売網をフル活用して全国の4,800店でKINTOを展開したにもかかわらず、2019年7~11月の申し込み件数は、1日平均5.7件でした。

4,800店で1日5.7件なので、1店1日0.001件しか受注できなかったのです。

トヨタはKINTOのために株式会社KINTO(本社・名古屋市、資本金66億円)までつくりましたが、株式会社KINTOの小寺信也社長は2019年12月に「損益分岐点に到達するまで数年かかる」と白旗を挙げました。

KINTOに対し、消費者は、「月4万~10万円は高い」と判断したようです。

KINTOでクラウンを借りて3年間料金を支払うと344万円(=95,700円×12カ月×3年)になりますが、クラウンの新車価格は最安値で469万円。

KINTOのコスト344万円は、新車の469万円の73%(=(344万円÷469万円)×100)ですが、新車で買えば自分のものになるクラウンをKINTOは3年後に手放さなければなりません。

もちろん、クラウンを新車で買えば、オプション代、任保険料、メンテンナンス料、各種税金などがかかるため、469万円では済みませんが、消費者は、どうしても「73%」に注目してしまったのです。

「3年間で新車の73%も支払っているのに、まったく自分のものにならない」と考えると、月95,700円を安いとは思えないでしょう。

KINTOの利用申込者のうち、18~29歳の若者は2割未満。

KINTOは新規の若手ユーザーの取り込みにも失敗したといえます。

KINTOは2019年12月に、テコ入れ策を発表しました。

既存のリースも「KINTO」ブランドにして知名度を高め、車種を従来の15種から31種に拡大。

また、料金最安はパッソの月32,780円で、最高はレクサスISの月108,900円であり、3年で3台のレクサスに乗ることができるKINTO・フレックスや、中古車版KINTOも始めています。

失敗はしましたが、それでもあきらめないところがトヨタであり、顧客と一緒に価値をつくりあげていこうという姿勢がみられます。

まとめ~ビジネスの主流になるか

アマゾンのサブスクは、他社が追随できない強さです。

これでコンテンツビジネスでも成功を収めたら、流通王者の地位はさらに強固になるでしょう。

トヨタのサブスクは、今まさに「産みの苦しみ」を味わっているところです。しかし、サブスクがビジネスの主流になれば、この先行投資は大きなアドバンテージとなるはずです。

サブスクにチャレンジする企業は、まずは消費者の価値観を「所有から使用へ」変える必要があります。

そして、消費者の欲求を「物欲から経験欲へ」変えなければなりません。

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<参考>