企業がマーケティングを行なう際、「成功」することがベストですが、ビジネスで100戦100勝はあり得ません。
したがって、ビジネスでは「失敗しない」ことを目標におくことが大切であるといえるでしょう。
失敗を回避するためには、統計学的なアプローチによって成功する確率が高い事象を選択することが有効です。
この成功する確率が高い事象を探すときの基準となるのが「有意差」です。
「有意差がある」状態のことを、「より正しい」状態や「より有利な」状態と理解している人が多くいますが、「有意差」とはどういうことなのか、有意差に関する基礎知識を紹介していきます。
有意差をみないとなぜマーケティングが失敗するのか
有意差をみないとマーケティングが失敗するのは、「偶然頼み」に陥ってしまうからです。
マーケターのなかには、いくつかのマーケティング・キャンペーンをヒットさせたあと、ぱったり成功が止まる人がいます。
周囲は「次こそ当たる」と信じて、次のキャンペーンもその人に任せますが、やはり売上増や利益増につながるマーケティングにはなりません。
それは、偶然頼みのマーケティングをしているからです。
マーケティング・キャンペーンは、ときに偶然にヒットすることがあります。
また、偶然どころか、リサーチ結果が示す内容と真逆のキャンペーンを実施して大当たりすることもあります。
それは成功体験のように語られますが、偶然頼みでは持続可能なビジネスにはなりません。
ひとつのマーケティングが終了したら、成功したときも失敗したときも「同じトーン」で、マーケティングの各ステージを統計学的な分析し、勝因と敗因を明確にするといいでしょう。
そして、勝因を多く利用し、敗因を省けば、失敗しないマーケティングづくりが可能となります。
この勝因と敗因を探すとき、重要になるのが有意差の考え方です。
有意差の定義と有意差の使い方
「有意差がある」とは、仮説と結果の差が誤差ではないと確認できたときの差、と定義できます。
差が誤差で生じたときは「有意差はない」と判断しますが、仮説と結果には、多くの場合、差が生じます。
そして、差というものは、意図的に生み出したり、誤差によって生じることがあります。
「有意差がある」と断定するには、差が誤差によって生まれたものではないことを示す必要があります。
仮説と結果の差に有意差があるかどうか
有意差を検証する意義を考えていきましょう。
例えば、「マンゴー味のチューハイをラインナップに加えたらヒットするのではないか」という仮説のもと、マンゴー味のチューハイを開発して販売したところ、売れなかったとします。
仮説と結果の間に差が生まれましたが、この差は「有意差のある」差でしょうか、それとも「有意差のない」差でしょうか。
「マーケティングが失敗したのだから、わざわざ有意差の有無を検証する必要がないのではないか」という疑問を持つ方もいると思いますが、このケースでも有意差の有無を検証した方がいい理由は
- 失敗が「仮説の間違い」であることを知るため
- 失敗が「誤差にすぎない」ことを知るため
です。
もし「マンゴー味のチューハイが売れる」という仮説が間違っていたために失敗した場合、有意差を検証しなければ「仮説の立て方」が間違っていることに気付くことができません。
その結果、同じ失敗を繰り返すことになるでしょう。
また、「マンゴー味のチューハイが売れる」という仮説は正しかったものの、誤差のために売れなかったとしたら、誤差を取り除けば成功できる可能性があります。
時期をあけて再びマンゴー味チューハイのキャンペーンを実施すれば、今度こそヒットする可能性が見込めるでしょう。
なぜ仮説が正しいのにマンゴー味が売れなかったのか
「マンゴー味チューハイは売れる」という仮説は正しかったのに、なぜ商品は売れなかったのでしょうか。
その理由として、ビジネスの現場では、しばしば誤差が発生するということが挙げられます。
どういうことかというと、チューハイ愛好者たちが、マンゴー味を求めているということを根拠に「マンゴー味チューハイは売れる」という仮説を立てたとしたけれど、猛暑になり、多くの人々が「甘ったるいものは口に入れたくない」と思い始めたならば、マンゴー味チューハイが売れなくなるのです。
「秋口にリベンジする」ことを決めることができる
売れなかったという結果だけで、「マンゴー味チューハイは売れる」という仮説を否定すると、メーカーにとって、大きな痛手になってしまうかもしれません。
なぜなら、秋に季節が変わったとともに、他社がマンゴー味チューハイを発売して、ヒットさせるかもしれないからです。
有意差検証をすれば、失敗したマンゴー味チューハイのマーケティングは、次のように総括することができます。
- マンゴー味を求めるチューハイ愛好者は、確実に一定数存在した
- しかし、マンゴー味を求めるチューハイ愛好者が、猛暑のために「甘ったるい飲み物はほしくない」と思い始めてしまった
- したがって、発売したマンゴー味チューハイは売れなかった
- ただし、マンゴー味を求めるチューハイ愛好者が、マンゴー味を求めなくなった証拠はない
- 秋口にもう一度、マンゴー味チューハイの大規模キャンペーンを打てで、マンゴー味を求めるチューハイ愛好者を取り込めることができるだろう
ここでのポイントは、失敗したキャンペーンをもう一度実施するという点です。
多くの企業は、一度キャンペーンに失敗すると、二度と同じキャンペーンはしません。
しかし、その結果、多くの企業が他社に真似されて、そのコピー・キャンペーンが成功するという辛酸をなめさせられているのです。
コピー・キャンペーンを成功させた企業は、単に物真似をしたわけではありません。
他社の失敗をみたとき、「なぜあれほど優れた企画が失敗したのか」と考えて有意差の検証を行った結果、仮説と結果の差が「誤差」によって生じていることがわかり、「うちなら、誤差を取り除いてあの企画を成功させることができる」と判断して、コピー・キャンペーンを実施するのです。
失敗した規格でも、有意差を検証すると良いでしょう。
まとめ~マーケティングの視界をくっきりさせる
誤差を排除して、差が残った場合に判定される「有意差」。
有意差を判定することは、マーケティングではとても重要です。
この作業を怠ると、誤差のおかげで成功したのに必要以上に喜んでしまったり、誤差のせいで失敗したのに必要以上に落胆してしまったりするでしょう。
必要以上の喜びも落胆も、マーケティングを曇らせるだけです。
有意差の検証は、マーケターたちの視界をクリアにするでしょう。
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<参考>
- Q1 「統計学的に有意」とは何を意味しているのですか?(実験医学)
https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/statistics/q1.html