企業の商品開発者のなかには、「どうしてあの人は、新しいアイデアを次々出すことができるのだろうか」と感じている人も少なくないでしょう。
アイデア勝負の商品開発業務で、アイデアが湧いてこないのは致命的です。しかし、すべての商品開発者が、天才アイデアパーソンなわけではありません。
では、なぜ、アイデアが豊富な人とそうでない人がいるのでしょうか。
その答えはいくつかありますが、その1つに「アイデアを出すスキルを持っているかどうか」があります。
そのスキルを獲得できれば、例えば1杯のコーラを1,000円で売るアイデアを出すこともできます。
こうすればポンポン湧いてくる
アイデアを出すことが苦手な人は、次の3つの作業をしているでしょうか。
- 柔軟な発想とは、ありえないことを考えること
- とにかく数多くのアイデアを出す
- コスト度外視で考える
この3つの作業の重要性を、1つずつ解説していきます。
柔軟な発想とは、ありえないことを考えること
アイデアを出すことが苦手な人ほど「柔軟な発想をしよう、柔軟な発想をしよう、柔軟な発想をしよう…」と考えます。
しかし、それではますます考えが凝り固まってしまうでしょう。
柔軟な発想とは、ありえないことを考えることです。
なぜ、ありえないことを考えることが重要なのかというと、ほとんどの人がありえないと思っていたことを実現したときに、ヒット商品になるからです。
携帯電話をインターネットにつなぐことまでは考えたのに、ほとんどの人は、携帯電話を手の平サイズのパソコンにすることは考えませんでした。唯一、スマートフォンを考案した人だけが、「手の平サイズのパソコンをつくろう」と考え、新たな世界的商品を生み出しました。
人が操縦しない自動車も、なんでも買えるネット通販サービスも、吸引力がずっと変わらない掃除機も、貨幣を使わない決算手段も、「ありえないことを考える」ことから始まっています。
とにかく数多くのアイデアを出す「まずは質より量」
アイデアを出すことに、コストはかかりません。
したがって、アイデアはたくさん出すようにしましょう。
自分が出したアイデアをすべて商品化できた商品開発者はいません。よいアイデアは確率論の側面があります。よいアイデアは、「無数のアイデアの屍」のうえに成り立っていると考えてください。
コスト度外視で考える
商品開発者が決して口にしてはいけない言葉は「それなら私だった考えた」です。
ヒット商品の開発者にアイデアを思いついた経緯を尋ねると、案外「そんなことか」と感じるような答えが返ってきます。しかし、商品開発の現場では、意外に「そんなこと」を発想できないことが多いもの。それは、多くの商品開発者が「アイデアの枠組み」のなかでアイデアを出そうとしているからです。アイデアの枠組みとは、制限といってもよいでしょう。
しかし、本来、アイデア出しに枠組みも制限もありません。
まずは、自分をアイデアの枠組みから解き放ちましょう。
商品開発者が陥りがちな失敗は、コストを考えてしまうことです。「いくらなんでも、これをつくりにはコストがかかりすぎる。アイデアとして提案することすらはばかられる」と思ってしまったら、それはもう、アイデアの枠組みのなかに閉じこもっていることを意味しています。
「コスト度外視でつくることが許されたら、自分は何をつくりたいだろうか」と考えることから始めてみてください。
アイデアを出すために注目したいこと
アイデアを出すときに「不」と「理想」は重要なキイワードになります。
商品に対する「不」の感情を重視する
不都合、不便、不利、不満、不条理、不合理、不可能など「不」がつく言葉はネガティブなものが多いのですが、ここにアイデアの切っ掛けが眠っています。
消費者調査をして、商品に対する「不」がみつかったら、それを商品開発のテーマに据えるといいでしょう。
例えば、グリコのポッキー。
棒状のビスケットにチョコレートを塗ったお菓子ですが、ポッキーはチョコレートをビスケットの全面に塗るのではなく、先端の数センチだけビスケットをむき出しにしたことによって、チョコレートが手につく「不満」を解消し、超ロングセラーになっています。
「理想」を追い求める
実際の商品がどれだけ現実的なものであっても、アイデア出しの段階では、あくまで理想を追い求めることが大切です。
「どうすれば消費者の生活の質が高まるのか」この理想は、商品開発者は追い続けてください。
アイデア上の商品と、それを販売できる形にした現実の商品には、必ずギャップが生まれます。そして大抵は、現実の商品は、アイデア上の商品より劣ります。
コストの壁や開発の壁などがあるため、これは仕方のないことです。
しかし、ヒット商品には、1)アイデア上の商品が素晴らしく、2)アイデア上の商品と現実の商品とのギャップが小さい、という2つの特徴があります。
アイデア出しの段階で理想を追求し続けて、クオリティの高いアイデア上の商品を考案し、製造チームがそれに極力近い商品をつくったとき、消費者が歓喜します。
出てきたアイデアをブラッシュアップする
素人のアイデアと、プロの商品開発者のアイデアの決定的な違いは、ブラッシュアップです。
素人のアイデアは「出しっぱなし」で構わないのですが、企業の商品開発者には、アイデアを現実の商品に近づける作業が課せられます。
ブラッシュアップの段階で、それまで放置してきたコスト問題を解決したり、「ありえないこと」を「現実世界バージョン」に変えたりします。
ブラッシュアップは、アイデア出しで追い求めた理想を削ること。つまり、ブラッシュアップをすればするほど、理想から遠ざかります。だからこそ、アイデア出しのときの理想の高さが重要になるわけです。
また、「ありえないアイデア」をそのまま活かすことにして、使用環境を変えることを考えることも有効です。
例えば、人が運転しない自動車は「ありえないこと」。しかし、道路や自動車に関する法律を変えたり、道路に特別な装置を設置したり、安全対策を講じたりすれば、自動運転車を公道で走らせることができます。
まとめ
実用的な商品を開発しなければならない人は、つい実用性という制限を自分に課してしまいます。しかし、芳香剤のボトルに、不要な装飾を施したことで爆売れした事例もあります。1袋に入れる量を減らしただけでヒット商品に生まれ変わったこともあります。
自分に課した制限を解き放てば、コーラ1杯を1,000円で売ることも簡単です。豪華なホテルを建てて、ロビーに併設するカフェに豪華なソファを設置して、豪華なおもてなしでコーラを提供すればよいのです。
もしくは、10リットル容器をつくり、それになみなみコーラを注いで売ればよいのです。
いずれの1杯1,000円のコーラも、消費者から「安い」「また買いたい」と思われるでしょう。
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<参考>
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