Product development ai 商品開発

AIは商品開発までこなす:メーカーの活用事例を紹介

AI(人工知能)は、メーカーの商品開発の領域にも浸透しています。

商品開発といえば、研究者の知恵と経験とヒラメキが勝敗をわけるイメージがありますが、消費者の志向が多様化し、メーカーは、手間とコストがかかる少量多品種で対応しなければならない今、研究者の知恵と経験とヒラメキだけでは「常勝」は困難です。

AIで商品開発をすればヒットする確率を高めることができるので、メーカーにも消費者にもメリットをもたらすはずです。

この記事では、キリン、コカ・コーラ、日清食品などのAI商品開発を紹介します。

AIとは

AIを一言で説明すると、とても優れたコンピュータ、です。AIと従来のコンピュータを明確にわけるのは、分析力と予測力。

従来のコンピュータは、分析するソフトウェアを人がつくり、そのソフトをコンピュータに搭載するというものであり、分析できるのは、ソフトの範囲内に限ったもの。つまり、人が考えた分析方針にしたがって分析するだけです。

一方のAIは、データのなかの法則を見抜くため、人が考えつかなかった分析や見逃していた分析を実行することができます。

予測は、当たる確率が高くないと意味がありません。

人の経験と勘は、予測の精度を高めます。したがって、その経験と勘をソフトに書きこむと、従来のコンピュータでもある程度は予測が可能です。

しかし、AIの予測の精度は、熟練者の予測や従来コンピュータの予測をはるかに上回ります。なぜなら、AIは独自に分析を進めることができるからです。大量のデータを分析し続けるAIは、人の経験と勘に近づき、やがて追い抜きます。AIが囲碁や将棋などで「無敵」となったのは、無限のデータを分析し続けた結果、プロ棋士たちの予測能力を上回ることができたからです。

メーカーは、消費者ニーズにマッチした商品でなければ売れないため、消費者ニーズを追い求めなければなりません。

AIの分析力と予測力は、消費者ニーズを追うのに適しているので、商品開発の分野で活躍できます。

キリン

キリンは、三菱総合研究所が提供するAIを活用してビールの商品開発を行っています。

ビールづくりはほぼ完成の域に達していて、キリンを含む国内大手4社のビールの質はほぼ同じといってよいもの。そのため、各社は、ビールの個性を出すことに苦労しています。

キリンのビール開発は、営業部門からあがる「客の志向がこうなっているから、こういうビールをつくってほしい」という声をもとに、スタートします。

新しいビールと従来のビールの違いは、味、泡、色、のどごし、コク、キレ、アルコール度数などの違いです。そして、味や泡などは、麦芽やホップの種類や配合、製造工程などによって変わってきます。

つまりビール開発とは、「こういうビール」という1つのゴールを目指して、多くの変数を調整すること、といえます。

変数が多くなると「こちらを立てればあちらが立たず」といったことが無数に発生するため、従来、狙い通りのビールをつくることは熟練技術者にしかできませんでした。

キリンは、熟練の技を社内に残すためにAIの導入を決定。

熟練技術者が持っていた「この変数をこう変えると、ビールの味や風味にこういう影響が出る」といったことを1つひとつAIに覚え込ませれば、「麦芽やホップの種類や配合、製造工程などをこう変えると」「味、泡、色、のどごし、コク、キレ、アルコール度数などはこう変わるだろう」と予測できるようになります。

味や泡などの予測が正確になると、実際の試作の回数を減らすことができます。

コカ・コーラ

日本コカ・コーラは、2019年に新しい清涼飲料水「チルアウト」を販売しました。

チルアウトのキャッチフレーズは「瞬間リラクゼーション」で、これを飲むとリラックスできるという触れ込みです。

チルアウトには、スーパーフードの1つでリラックス効果が期待できる「ヘンプシード」という麻の成分が含まれていますが、その他にも秘密があります。

チルアウトの味を決めたのは、日本コカ・コーラが出資したベンチャー企業であるエディアン(本社・大阪市)です。

エディアンは、チルアウトの味を決めるために、味の好みが異なる10人の被験者に対して、AIが考案した20の質問をしました。

そして、AIは、10人の被験者の回答と、多くの人が好む清涼飲料水の傾向から「落ち着きのある香りを持つシトラスやハーブ、フルーツ系の香りと、スッと清涼感のあるクールダウンフレーバーのコンビネーション」という答えを導き出しました。これが、チルアウトの味です。

チルアウトは、AIが理想とする味ということができます。

マックミラ(スウェーデン企業)

スウェーデンのアルコール飲料メーカー、マックミラのウイスキー「インテリジェンス」は、マイクロソフトなどのAI技術を使って開発されました。

マックミラが、AIにブレンド方法に加えて販売データや顧客の好みを学習させた結果、AIは、ウイスキーの新たな製造レシピを7,000万種類提案。

インテリジェンスはそのうちの1つのレシピでつくられています。

マックミラは、インテリジェンスのテイストを「バニラ、洋ナシ、リンゴに似た風味を醸し出すフルーティーな味わい」と表現しています。

日清食品

日清食品のインスタント商品の1つに「カレーメシ」がありますが、このうち「トマトチキン」味はAIが考案したもの。

日清食品では、カレーメシの新商品を開発するとき、

●新商品のターゲットを決める

●レシピの傾向を分析する

★メインの食材を選ぶ

★サブの食材を選ぶ

●メニュー開発(試食、検証、メニューの決定)

●完成

の工程で進めています。

通常、すべての工程を人が行いますが、今回は、星印(★)のメイン食材選びとサブ食材選びをAIに一任。

AIに人がつくったレシピの傾向を入力したところ、AIは2,400万通りの食材組み合わせのなかから、「トマトとチキンをメインにして、スパイスをきかせる」という答えを導き出したのです。

AIの利用では、東京理科大学の監修を受けています。

ヤフー×三越伊勢丹

三越伊勢丹が2019年に販売した子育て中の小柄な女性向けのロングスカートは、ヤフーのビッグデータとAIを使って開発したものです。

三越伊勢丹はヤフーに、子育て中の女性が好む服の分析を依頼。そして、ヤフーは、ヤフー検索とヤフー知恵袋のビッグデータのなかの子育てと衣類に関するデータをAIで解析し、

●子育て中の小柄な女性はロングスカートへの関心が高い

●子育て中の女性は衣類について、着こなし、自転車の利用、抱っこ紐との合わせ方、静電気といった悩みを抱えている

という答えを導き出します。

三越伊勢丹は、AIの答えと子育て中の女性を集めて行った座談会のヒアリングから、

●自宅で洗える素材

●抱っこ紐と合わせやすくするために、ポケットの高さを調整した

●小柄な人がバランスを取れるボタン、色、丈にした

という特徴を持ったロングスカートを開発、販売したのです。

NEC

ここまで、メーカーがAIをどのように商品開発に利用しているのかをみてきましたが、ここからは、商品開発に使われるAIがどのようにつくられているのかをみていきます。

商品開発AIをつくっているNECにとって、商品開発にAIを使うメーカーは顧客になります。

NECの「データエンリッチメント」は、顧客(メーカー)が保有するデータをAIで分析し、それに外部の情報を組み合わせて最適解を出す技術です。

NECのAI技術の1つに、データ意味理解がありますが、データエンリッチメントでは、まず、このデータ意味理解技術を使って、顧客のデータを分析します。データ意味理解技術は、顧客データのなかの1つひとつのデータが持つ意味を予測する技術であり、さらに、それに関連する外部情報を探します。

「顧客データ」だけをAI解析して出した需要予測より、「顧客データ+外部データ」をAI解析して出した需要予測のほうが、精度が20%向上。

NECは、データエンリッチメントを「メーカーの商品開発や発注業務、顧客サービスに活用できる」としています。

まとめ~商品開発の強力な助っ人

キリンはビール開発にAIを導入しましたが、「AIがビールをつくるのではない」とも言っています(*1)。ビールをつくるのはあくまで人であり、AIは、試作品の開発を手伝うツールであるというわけです。

しかし、NECのデータエンリッチメントのような技術を知ると、AIが商品開発の強力な助っ人になるポテンシャルを持っていることがわかります。

AIの進化がますます楽しみになります。

*1:キリン、AIと技術者がタッグを組み新ビール開発期間を短縮


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<参考>

ビール新商品開発技術者を支援する「醸造匠AI」のアルゴリズム開発に着手

キリン、AIと技術者がタッグを組み新ビール開発期間を短縮

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「日清トマトチキンカレーメシ AIが考えた」(9月3日発売)

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