【マーケティングの定義】日本とアメリカで微妙に異なる

マーケティングは不思議な用語です。

英語では「市場」という意味の名詞「market」に、動名詞または現在分詞をつくる「ing」がついている単語です。

一方、マーケティングを日本語にすると「市場する」となります。

しかし、「市場する」は、漠然としたニュアンスは伝わるものの、日本語として成立しません。

そこで、マーケティングは「市場を読んで売れる仕組みをつくること」と説明されることがあります。

この「市場を読んで売れる仕組みをつくること」という言葉は、マーケティングを説明するだけでなく、マーケティングの目標にもなっていて、「市場する」というニュアンスは伝えきれないのです。

マーケティングとは何なのか、マーケティングの定義を探りながら本質に迫りましょう。

アカデミックなマーケティング

「定義」を得意とするのは、ビジネスの現場よりアカデミズムです。

大学教授たちは、学生たちにどのようにマーケティングを教えているか見ていきましょう。

早稲田大学大学院経営管理研究科のマーケティング・マネジメント担当の木村達也教授は、学生たちのマーケティングへの現実適応能力を高めることを研究テーマに据えています(*)。

*:https://www.waseda.jp/fcom/wbs/other/375

木村氏は、学生たちに取り組んでほしい研究テーマとして、次の項目を挙げています。

  • マーケティング戦略策定
  • ブランド・マネジメント
  • 新製品の市場導入戦略
  • サービス・マーケティング
  • マーケティング組織
  • 顧客関係性マネジメント
  • マーケティング・コミュニケーション
  • インターネット・マーケティング
  • 特定の企業の製品やサービスや経営全般への集中的な分析
  • 経営者へのインタビューや各種のデータ収集を通じた競争環境と顧客環境の分析

これらの研究テーマが示唆することは、マーケティングは、例えアカデミズムの場であっても、企業の具体的な活動や経営、そして実体経済とのかかわりを断ち切らない、ということです。

学問としてのマーケティングは、実学といえるでしょう。

これらの研究テーマは、そのままビジネスパーソンたちの仕事になっている点でも共通しています。

マーケティングを定義するには、企業のマーケティングの実際に目を向ける必要がある、ともいえます。

これらの研究テーマから、エッセンスを抜き出してみると

  • 戦略
  • ブランド
  • マネジメント
  • 新製品
  • 市場導入
  • サービス
  • 組織
  • 顧客
  • コミュニケーション
  • インターネット
  • 企業
  • 製品
  • サービス
  • 経営
  • 経営者
  • 各種データ
  • 競争

という17個のキーワードを抜き出すことができました。

つまり、マーケティングとは、少なくともこの17項目について関心を持ったり、観察したり、分析したり、実行したりすること、と定義できそうです。

日本マーケティング協会の定義

公益社団法人日本マーケティング協会(本部・東京都港区)はマーケティングについて次のように定義しています。

マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。

引用:*:https://www.jma2-jp.org/jma/aboutjma/jmaorganization

これは日本国内におけるマーケティングの「公式な定義」といえるので、同協会ホームページから全文を引用しました(*)。

この定義に沿って、マーケティングについて考えていきましょう。

まずマーケティングとは、市場をつくる行為であることがわかります。

つまり、マーケティングは市場で利益をあげる経済活動だけを指すのではなく、市場を新たにつくる行為も含まれるわけです。このニュアンスは、Marketingの直訳である「市場する」に近いといえます。

そして、企業のマーケティングには、グローバルな視野に立つことが求められています。輸出立国ならではのマーケティング観といえるでしょう。

また、マーケティングをする企業は、顧客との相互理解が必要である、とも指摘しています。マーケターは顧客を理解しようとしますが、同時に、顧客に自社のことについて知ってもらわなければならないことがわかります。

この「顧客」には注釈があり、「一般消費者、取引先、関係する機関・個人、および地域住民を含む」となっています。

最後に、マーケティングは公正な競争であり、総合的な活動であるとしています。

総合的な活動にも注釈があり、「組織の内外に向けて統合・調整されたリサーチ・製品・価格・プロモーション・流通、および顧客・環境関係などに係わる諸活動」となっています。

これは先ほど確認した、早稲田大学の木村教授が指摘したマーケティングのターゲットとほぼ一致しています。

ここまでで、かなりマーケティングの本質に近付いた印象を持つことができたのではないでしょうか。

アメリカ・マーケティング協会の定義

世界最大のマーケティング関連団体で、日本マーケティング協会も連携しているアメリカ・マーケティング協会は、マーケティングを次のように定義しています。

Marketing is the activity, set of institutions, and processes for creating, communicating, delivering, and exchanging offerings that have value for customers, clients, partners, and society at large.

これを翻訳すると、次のような意味になります。

「マーケティングとは、次のことをする『活動』『制度』『プロセス』のことである。

顧客、クライアント、パートナー、社会全体にとって価値のある製品をつくり、価値のある情報を発信し、価値のあるものを届けたり交換したりすること。」

アメリカの定義には、日本の定義にないものもいくつか含まれています。

日本 アメリカ マーケティング 概念

日本の定義では、マーケティングを行動や活動、経営といった動作や状態としてとらえています。

アメリカの定義の活動とプロセスは日本の定義にも含まれていますが、「制度」は日本の定義にはありません。

「制度」という言葉には「確固たる仕組み」というニュアンスが含まれていますが、日本では、マーケティングを「制度としてみる」感覚はあまりみられないでしょう。

また、日本の定義では、マーケティングの最終目標は「市場創造」となっていますが、アメリカの定義では「価値の創造」に力点が置かれています。

市場は場所の名称であり、価値は質の名称です。

まったくの別物といえるでしょう。

日米のマーケティング観は似ている点が多くありますが、マーケティングを経済システムに組み込んでいるアメリカに比べて、日本ではマーケティングを企業の独自活動としてとらえているようです。

まとめ~安心して実務に取り掛かることができる

マーケティングの重要性が増していることは、企業で働く人であれば誰でも、日々感じていることでしょう。

マーケティングは、その重要性が増しすぎた結果、とらえどころがないものになっています。

マーケティング業務に奔走しながらも、ときに定義に立ち返ることが大切です。

マーケティングは理論が語られることが多くありますが、その理論も実学や実際の企業活動をベースにしています。

マーケターは今のまま、実務を重視する活動を続けていくといいでしょう。

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