ユーチューブやツイッターといったSNSなどの動画を使ったマーケティングは、すっかり定着した印象があります。
そして今、動画マーケティングの進化版として「ライブ配信」を使ったマーケティングが、企業やマーケターから注目されています。
ライブ配信マーケティングがなぜそれほど魅力的なのでしょうか。
また、ライブ配信マーケティングに「盲点」はないのでしょうか。
ライブ配信とは
ライブ配信とは、テレビのニュース番組と同じく、「生放送」で配信されるもの。
一般的なYouTube動画は、編集したものであり、動画の魅力を高めたものですが、ライブ配信は、「テレビの生放送のようなYouTube番組」と思っていただくといいでしょう。
動画編集というと、専門的な作業のように感じるかもしれませんが、例えば、スマホで5分の動画を撮影して、その前半4分だけをYouTubeにアップすれば、それも編集です。
YouTubeは大半が編集済番組であり録画番組ですが、そのなかで、ユーチューバーが話したり、パフォーマンスしたりしている時刻と、視聴者が見ている時刻が同じ状態のものが、ライブ配信です。
もちろん、ライブ配信を実行できるツールはYouTubeだけではありません。ツイッターでも可能ですし、「SHOWROOM」や「17Live」といったツール(アプリ)も登場しています。これらもライブ配信マーケティングに活用できます。
【ライブ配信のメリット】なぜマーケターが注目するのか

マーケティング企画にライブ配信を採り入れる魅力は数多く、まだライブ配信を活用していないマーケターは、導入を急いだほうがよいかもしれません。
ライブ配信がマーケターを魅了する要素を6点、紹介します。
●生き生きしている
LIVEというだけあって、ライブ配信は生き生きしています。一般的に、マーケティング・キャンペーンでは「鮮度」を出すことが難しいものですが、ライブ配信なら可能です。
●カンファレンスやセミナー、プレス発表に使える
ライブ配信は、「ライブ」という徳性を活かし、カンファレンス(会議)やセミナーに使うことができます。スカイプやズームでの会議やセミナーは、視聴者や参加者が大幅に限定されてしまいますが、ライブ配信なら、不特定多数の人を呼び込むことが可能です。
マーケターの待ち望んでいた「参加自由」のセミナーを簡単に実施できるツールといえるでしょう。
もし、ライブ配信でプレス発表をすれば、記者会見に似た臨場感を演出することもできます。
●特別感や「何が起きるのか」というドキドキ感がある
ライブ配信は、マーケターにも視聴者(消費者)にも特別感を与えます。ライブ配信動画のなかのナレーターや演者は、よい意味で緊張しています。それが視聴者に伝わります。
また、ライブ配信は一発勝負であり、やり直しがきかないという特徴があるため、見ているほうは「ドキドキ」します。
●潜在顧客を釘付けにできたり、フォロアーを獲得できたりする
ライブ配信なら、これまでコンタクトできなかった潜在顧客へのアプローチも可能です。そして、ライブ配信によって、フォロワーを増やすことも期待できます。
●コストをかけずに視聴者に「FOMO」を植えつけることができる
Fear of Missing Out(FOMO)は「見逃してしまうことの恐怖心」と訳される言葉です。
いつでも視聴できる録画動画や編集済動画に対し、ライブ配信は「今」見なければ見逃してしまうもの。
したがって、FOMOを植えつけられた視聴者は、ライブ配信を一生懸命見ようとします。
その結果、ライブ配信に盛り込んだ情報が、しっかり視聴者に伝わるのです。
また、ライブ配信は編集作業が要らないので、コストを抑えることができます。
コストをかけずに消費者にFOMOを植えつけられる手法はとても特殊で、それだけにマーケターが活用する価値があります。
●信頼性があるので、ユーザー(視聴者、消費者)との絆が深まる
ライブ配信は、修正や撮り直しができないので、視聴者は「そこには嘘がない」と感じます。また、ライブ配信のナレーターや演者は、放映中に思わず「本音」を吐露してしまいます。
したがって、ユーザー(視聴者、消費者)は、ライブ配信に盛り込まれている情報を信用します。
ユーザーがライブ配信の情報を信頼すれば、企業との間に絆が生まれます。
この絆は、多くのマーケターが求めるものでしょう。
【デメリット】ライブ配信は諸刃の剣、ここに注意して
続いて、ライブ配信のデメリットを紹介します。マーケターは、ライブ配信が諸刃の剣であることを承知しておいてください。
ライブ配信のメリットとして、コストをかけずに気軽に実施できるということが挙げられますが、最低限の準備をしておかないと、バッシングや炎上を招き、ひいてはブランドを毀損することになりかねません。
また、ライブ配信は編集をしないので、いわゆる「ぶっつけ本番」で実行してしまうと、見づらい番組になってしまいます。
編集は、視聴者を飽きさせないための演出でもあるので、それができないライブ配信は、魅力の点でハンデになることがあるでしょう。
そのハンデを乗り切るには、ある程度シナリオをつくっておくことが大切です。
編集には、失言などの「まずい内容」を隠す効果もありますが、ライブ配信ではそれができません。
放送禁止用語や差別用語、名誉を棄損する言葉や侮蔑的な言葉、間違った敬語は、十分に注意するようにしましょう。
また、ライブ配信でコスト安を追求しすぎると、安直で冗長な内容になってしまいます。
社員だけでライブ配信番組をつくってしまうと、内輪受けのチープな内容になってしまうので、ナレーターや演者は、しかるべき人に依頼し、ギャランティも適正額を支払いましょう。
ライブ配信は一発勝負なので、ナレーターや演者の技量やテクニック、スキル、そして度胸が必要です。
人気の高いライブ配信アプリ
マーケターが、これからライブ配信に取り組む場合、アプリを使うと安価かつ手軽に始めることができます。
ここでは3つのライブ配信アプリを紹介します。
SHOWROOM
「SHOWROOM」は、ショールーム株式会社(本社・渋谷区)が運営する生放送動画配信プラットフォームです。
アイドルや芸能人が使っていて、派手なイメージがあり、華やかなマーケティング・イベントを打ち出したいと考えているマーケターにうってつけです。
SHOWROOMが一躍有名になったのが、AKB総選挙とコラボした企画です。AKBメンバーがSHOWROOMでライブ配信を行い、さらにそのライブ配信の順位をつけた、いわば「裏・総選挙」です。
SHOWROOMは、誰でも無料でライブ配信ができます。視聴も原則無料ですが、視聴者からお金を徴収する有料番組をつくることもできます。
企業が、ブランドづくりのためにコアなファンだけを集めたいのであれば、あえて有料にすることでプレミアム感を演出することができます。
17Live
株式会社17メディア・ジャパン(本社・港区)が運営する「17Live」もエンターテイメント系のライブ配信アプリです。発症は台湾で、日本に輸入されました。
17Liveのコンセプトが「だれもがなにかのアーティスト」あるとおり、本来は個人ユーザー向けサービスです。
最近は、企業がデジタルマーケティングや広告に使うようになりました。
YouTube
YouTubeには「YouTube・live」というライブ配信サービスがあります。
YouTube・liveは、ライブ配信しているナレーターや演者が、視聴者とコメントのやりとりをすることができるものです。
YouTube・liveがユニークなのは、「投げ銭」機能があるところ。視聴者が、ライブ配信の配信側に、100~50,000円の料金を支払うことができる仕組みとなっています。
企業のマーケティングでは、投げ銭機能で収益増を狙うより、ライブ配信の完成度や浸透度、関心度を測る指標として、投げ銭の額の多寡を測るとよいでしょう。
視聴者がお金を払いたくなるほどのライブ配信を制作できれば、マーケティングはうまくいくはずです。
企業のライブ配信活用事例
イギリスのファッションブランド「バーバリー」は、ライブ配信をマーケティングに使って注目を集めることに成功しました。
バーバリーは2020年2月にロンドンで行った、春夏コレクションのファッションショーの模様を世界中にライブ配信したのです。
ライブ配信が終了すると、オンラインストア(EC)がスタートして、ファッションショーで紹介したばかりの春夏コレクションを買うことができる、という取り組みは、多くのマーケターの参考になるはずです。
バーバリーのライブ配信マーケティングの特徴は、動画を使った文化活動の一環で行なっている点。
バーバリーはこれまで、実力がありながら、まだ無名のシンガーソングライターや金管楽器奏者、ピアニストたちの小さなコンサートを録画して、配信してきました。
ブランド・イメージを構築するために動画を使い、その発展形としてファッションショーのライブ配信を行っているので、バーバリーのファンに違和感を抱かせません。
まとめ~起爆剤として活用すると効果的
ライブ配信はインパクトがあります。そのため、マーケティングの起爆剤として有効活用できます。
ただし、ライブ配信には、生放送ならではの「放送事故」がつきものです。放送事故はは企業のイメージを悪くするため、ライブ配信に取り組むマーケターは、「シナリオ」を準備しておくようにしましょう。
また、ライブ配信は、編集という面倒な作業が要らないので手軽に実施することができますが、手軽に企画したライブ配信は、視聴者から簡単に飽きられます。「使いすぎ」に注意しましょう。
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<参考>
活況のライブ配信市場に、新しいマーケティング手法を見出す [インタビュー]