海外のエンタメ・マーケティングがすごい【活用事例も紹介】

マーケティングは企業にとって欠かせないものですが、その取り組みはさまざまです。

この記事では、海外の優れたマーケティング事例として、高級車のBMWとファストフードのバーガーキングの取り組みを紹介します。

2社のマーケティングの共通点は、純粋にエンターテイメントのコンテンツを無料で提供したこと、そして「マーケティングの中心に商品を置かなかった」点です。

マーケティングでは、一般的に企業と顧客の接点や商品と顧客の接点を探ろうとしますが、両社のマーケティングはそれを無視しています。

なぜこのようなマーケティングが成功したのでしょうか。

詳しく見てみましょう。

BMWのショートフィルム戦略

BMWは、刺激的なマーケティングや広告を打ち出しています。

BMWのようなハイブランドは、ふつう、自己肯定の塊ですが、BMWのバイク部門では、発売されたばかりの新型バイクを日本人のカスタム職人に託し、思う存分改造させるというカスタム・マーケティングを行いました。

カスタムとは、メーカーが発売したバイクを格好よく改造する作業のことです。

BMWは自社製品を徹底的に肯定していますが、総力を挙げて開発した新型バイクを小規模事業者のカスタム業者に改造させる、というカスタム・マーケティングでは、突如、自己否定をしてみせたのです。

そして、BMWの製品の大本命である自動車でも、インパクトのあるショートフィルムを使ったマーケティングを行いました。

このショートフィルムは、映画「セブン」「ファイト・クラブ」などを制作したハリウッドを代表する監督、デビッド・フィンチャー氏たちに制作依頼がなされました。

なぜショートフィルムを制作したのか、マーケティングの狙いと効果を探っていきましょう。

普通の良質な映画

BMWが2001年に制作したショートフィルム「The Hire」は宣伝用に作られましたが、評判が良く、計8作がつくられました。

役者、ストーリー展開、カメラワーク、照明ワーク、どれをとってもハリウッド品質で、宣伝臭さは一切なく、見初めて10秒もすればその作り込みの確かさから「普通の良質の映画」と感じられるもの。

The HireのなかにBMWの自動車は出てきますが、自動車はあくまで一小道具にすぎません。

普通の映画でも、富裕層が車に乗って登場するシーンを撮るとき、BMWが使われることがありますが、The HireのなかのBMWの存在感は、それと同じ程度しかありません。

The Hireは2年間で1億回も再生されました。

マーケティング効果が高かったことから、BMWは、2017年にThe Hireの続編となるThe Escapeを制作しました。

ブランデッドエンターテイメントのマーケティング効果

The Hireのようなマーケティング手法はブランデッドエンターテイメントといわれます。

エンターテイメントは、そもそも消費者を喜ばせてその対価を得るので、それ自体が商品ですが、ブランデッドエンターテイメントは、ブランドを構築したりブランドイメージを向上させたりするために、無償でエンターテイメントを消費者に配布します。

そのマーケティング効果は次のとおりです。

海外 マーケティング

BMWはThe Hireに、消極的な効果と積極的な効果の両方を期待していたと推測できます。

広告が嫌でテレビやラジオからネットにやってきたという消費者もいますが、今やネットも広告であふれています。

広告が好きでない消費者は、自社製品にフォーカスしていないコンテンツと知るだけで態度を軟化させます。

したがって、BMWは、The Hireのショートフィルムとしての品質を徹底的に高めました。

感度の高い消費者はその企業努力をすぐに理解し、無料コンテンツであっても手を抜かない企業を高く評価しました。

BMWは、妥協のないものづくりをしているイメージを大切にしている会社であり、消費者から「無料コンテンツであっても手を抜かない企業」と思われることは、企業価値を高めることにつながったのです。

また、感度の高い消費者は、良質のコンテンツを拡散することに喜びを感じています。

つまり、BMWは妥協のないモノづくりをすることで、良質な見込み客にリーチすることができるのです。

バーガーキングの何でもいうことをきくチキン

バーガーキングは、2004年に「The Subservient Chicken(何でもいうことをきくチキン)」というキャンペーンを実施しました。

これは、自社商品から離れた内容のキャンペーンでしたが、バーガーキングはこのキャンペーンのお陰で、世界3大広告賞のひとつ、One Showの1位に選ばれました。

商品とまったく関係ないところがポイント

バーガーキングのサイトを開くと、チキンの着ぐるみを着た人物が現れます。

そのサイトはWebカメラを使用し、サイト視聴者はライブ映像を見ている仕組みです。

サイトに「踊って」と入力するとチキンが踊り、「歌って」といえば歌います。

このサイトは、約4億アクセスを記録しました。

サイトに登場するチキンは、バーガーキングのキャラクターというわけではありません。

また、バーガーキングの主力製品は牛肉のハンバーガーであり、「牛肉」にも引っかかっていません。

商品とはまったく関係のない、純粋なエンターテイメントなのに、なぜマーケティングの効果が得られたのでしょうか。

キーワードはニュース性

何でもいうことをきくチキンを用いたマーケティングにも、前述した「広告メッセージの洪水を嫌う消費者の取り込み」「エンタメのなかのメッセージを読み込める感度の高い消費者の取り込み」「強いインパクトによる拡散効果」が含まれています。

そして、バーガーキングのキャンペーンには、さらに、ニュース性というマーケティング効果が加わりました。

マーケティングの成否は、認知度によって決まる部分があり、マーケティングが経済ニュースとしてマスコミに取り上げられれば、認知度が高まって成功する確率が高くなります。

何でもいうことをきくチキンは、消費者にオモシロ・ニュースとして扱われました。

チキンの着ぐるみという脱力感を誘うユーモアと、サイトと消費者がライブでやりとりする双方向性が、消費者の快楽につながったわけです。

その結果、ハンバーガーが売れるという結果が得られたのです。

なぜなら、マクドナルドのヘビーユーザーであっても、たまにはバーガーキングを食べたいと思うこともあります。

何でもいうことをきくチキンというオモシロ・ニュースによって、バーガーキングに行こうというきっかけが生まれます。

ニュース性を重視したエンタメ系マーケティングは、ハンバーガーという消費回数が多い商品に向いている手法といえるでしょう。

まとめ~消費者の取り込み方がうまい

BMWとバーガーキングのマーケティングから学べることは、消費者の取り込み方の巧みさでしょう。

マーケティングでは消費者との対話や双方向性が重視されますが、企業側から、あるいはマーケター側から消費者に「対話をしましょう」と呼び掛けても、簡単には応じてもらえません。

しかし、高品質のエンターテイメントを無償で提供すれば、消費者のほうから企業に双方向にやりとりを求めるようになります。

消費者の注目を集めるだけでなく、消費者を快適にすることが、これからのマーケターに求められるといえるでしょう。


<参考>

  1. ブランデッドエンターテインメント(日経XTECH)
    https://tech.nikkeibp.co.jp/it/article/Keyword/20080408/298318/
  2. BMW、インターネットの映画配信に前向き、The Hireの反響(Response)
    https://response.jp/article/2002/06/11/17507.html
  3. BMWブランドフィルム「ザ・エスケープ」の制作秘話(campaign)
    https://www.campaignjapan.com/article/bmw%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%A0-%E3%82%B6%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%97-%E3%81%AE%E5%88%B6%E4%BD%9C%E7%A7%98%E8%A9%B1/436703
  4. 広告とPRの境界線が見えなくなる?2016年のグローバルPR、3つの注目トレンドを大予測(広報会議)
    https://mag.sendenkaigi.com/kouhou/201602/pr-paradigm-shift/007131.php