インナーブランディング

ブランド力を高めるために欠かせないインナーブランディング【事例あり】

「インナーブランディング」とは、社員を対象としたブランド戦略のこと。

自社製品や自社サービスのブランド力を高める手法として「ブランディング」がありますが、経営者がいくら自社や自社製品や自社サービスのブランド力を高めようとしても、社員・従業員がブランド価値を理解していなければ、顧客や消費者に伝えることはできません。

そこで大切なのが「インナーブランディング」です。

インナーブランディングに成功すると、社員が自社や自社製品などに誇りを持つようになり、1人ひとりのパフォーマンスが向上するでしょう。

この記事では、インナーブランディングの基礎知識や進め方、そこから得られる効果と成功事例を紹介します。

インナーブランディングとは

通常、「ブランディング」といえば、顧客や消費者に向けたブランド戦略のことをいいますが、この「ブランディング」は、顧客や消費者たち外部の人に向けたものであり、これを「アウターブランディング」と呼ぶこともあります。

一方、「インナーブランディング」では、社員を魅了しなければなりません。

ブランディングには、次の3つの段階があります。

ブランディング

「ブランド=高級品」と思っている人は、ブランディングと聞いたとき、3段階目の「憧れ化」を思い浮かべるかもしれません。

しかし、一足飛びに3段階目から着手するのではなく、段階を追っていくことが大切です。

新商品を開発したら、まずは地道に、認知度を高めるようなマーケティングを仕掛けます。多くの人に知られていない商品を「高級品=ブランド」に成長させることはできないからです。

認知度が高まったら、商品を際立つ存在に育てていきます。他社の類似商品をはるかに凌駕して「○○なら□□社のあの商品」と思ってもらわなければなりません。

そして3段階目に入ります。

機能が際立っていても、デザインが劣っていては「ブランド=高級品」にはなりません。逆に、デザインだけで知名度が高まったのであれば、次は機能を高めていきます。

徹底的に商品を磨きあげれば、消費者や顧客に「あのメーカーは本物のブランドだ」「高くてもあの商品がほしい」と思わせることができるでしょう。

ブランディングは3段階に分けられると前述しましたが、実は、ブランディングには4段階目もあります。この4段階目は、ライバルを引き離す、ということ。せっかく自社製品が「ブランド=高級品」になったのに、そこに安住してテコ入れを怠ると陳腐化してしまいます。ブランドの失墜は、実は簡単に起きるので、他社との差別化が重要です。

経営者やブランド戦略チームのリーダーは、インナーブランディングでもこれと同じように丁寧にブランディングしていくようにしましょう。

なぜ必要なのか、得られる効果とは

インナーブランディングは、成功しても「すぐには」収益に直結しません。

社員が自社商品に憧れてそれを購入しても、売上高としては高が知れているからです。

しかし、アウターブランディングを仕掛けるのであれば、インナーブランディングは不可欠です。

なぜなら、インナーブランディングが成功しないのに、アウターブランディングが成功するはずがないからです。

インナーブランディングが成功すれば、中長期的には収益に貢献するようになるでしょう。

企業がインナーブランディングから得られるものとして

  1. 社員たちの会社への忠誠心が増す
  2. 離職率が減り、入社希望者が増えるので、よい人材が増える
  3. 社員たちに仕事へのやりがいが生まれる
  4. いわゆる「SNSテロ」を予防できる
  5. 自然に改善運動が生まれ、品質が確実に向上していく
  6. アウターブランディングの成功確率が高まる

という6点が挙げられます。

インナーブランディングの最終目標は、「アウターブランディングの成功」です。

なぜなら、アウターブランディングが成功して初めて、その企業は価格競争から脱却できるからです。

経営者は、インナーブランディングの効果のうち、上記の1~5を重視するとよいでしょう。1~4は、特に、社員たちに関わる問題の解決になります。

自社製品に魅力を感じると、その会社で働いていることに誇りを持てるようになり、「もっと働きたい」と思ってくれる労働者の増加につながります。

SNSテロとは、社員が自社の問題点をSNSで暴露する行為のことですが、自社製品にブランドとしての魅力を感じた社員は、そのような裏切り行為はしません。

例えば、ホテルの従業員が、自分のホテルに芸能人が宿泊したことをSNSで知らせてしまうのは、もしかしたら単なる出来心かもしれません。しかし、従業員に「自分は一流ホテルで働いている」という自覚があれば、芸能人にも一流のもてなしと最高の安らぎを与えたいと思えるようなるので「出来心」はわかないでしょう。

進め方は「現状分析→理念→伝達」の順に

「ブランドは1日にして成立せず」といわれるとおり、インナーブランディングも簡単には成功しません。

現状を分析して、企業理念と行動指針をつくり、それを社員たちに伝えることが必要です。

自社にもインナーブランディングが必要である感じた経営者は、まずは「社員たちは自社製品を誇りに思っていない」という前提から始めましょう。そのような前提に立つことは、経営者には相当つらいことですが、そこがスタート地点になります。

そして、なぜ社員たちが自社製品を貴ばないのかを考えましょう。その際、社員たちにヒアリングする、という方法も有効です。

ヒアリングによって、例えば、社員がプライベートでは他社の類似製品を購入していたり、開発チームが「こんなものをいくらつくっても仕方がない」と思っているということなどを知ることができるでしょう。

現状分析は、ときに、現在の商品の全否定から始まるかもしれません。

現状分析ができたら、次に、インナーブランディングの方向性を定めます。

その方向性は具体的でなければなりません。企業理念と行動指針という形で、方向性を具現化させましょう。

方向性が定まったら、企業理念と行動指針を社員たちに伝えます。

このとき経営者やブランド戦略チームのリーダーは、「簡単には社員たちは理解しない」と思っておいたほうがよいでしょう。また、上に立つ者が、理念と指針を実行しなければなりません。

ただし「率先垂範」は最低条件であり、それをしたからといって社員がついてくるとは限りません。時間をかけて、丁寧に、手を抜かず、コストをかけ、知恵を使ってしか、インナーブランディングは成功しません。

3つの成功事例

インナーブランディングの成功事例として、スターバックス、東京ディズニーリゾート、コカ・コーラの取り組みを紹介します。

スターバックス

スターバックスは、従業員のことを「パートナー」と呼んでリスペクトするほど、インナーブランディングに力を入れています。それは日本法人であるスターバックスコーヒージャパン株式会社でも同じです。

同社の数あるインナーブランディングの取り組みのなかでも「最もスタバらしい」といえるのは、「同性パートナーシップ登録制度」です。

「同性パートナーシップ登録制度」とは、同性のパートナーがいる正社員に対する制度ですが、戸籍上の配偶者がいる正社員と同じ福利厚生制度を使えるようにしています。

また、性別適合手術を受けた正社員には、5日間の特別休暇を付与。

ダイバーシティ(多様性)をうたう企業は少なくありませんが、ここまで社員のことを考えている会社はそう多くないでしょう。

こうした取り組みは、社員たちの会社への忠誠心を養うとされています。

東京ディズニーリゾート

東京ディズニーリゾートを展開する株式会社オリエンタルランドも、社員のことを「キャスト」と呼んでいます。

東京ディズニーリゾートに、キャスト向けの接客マニュアルがないことは有名なエピソードですが、キャストがすべきことは唯一「ゲストにハピネスを届けること」。

その結果、次のようなエピソードが生まれています。

妊娠5カ月の女性とその夫とは2人で東京ディズニーシーを訪れた際、昼食のために園内のレストランを訪れた際のこと。

案内係から「3名様でご来店ですね」と言われたのです。

これは、案内係が、女性のお腹のなかの赤ちゃんも数えた、というものですが、女性はオリエンタルランドに「なんとも言えない幸福感が湧き上がってきて、私の胸を締めつけました」「今まで感じたことのないようなほっこりとした幸せに包まれて、パークを楽しむことができました」などとつづった手紙を届けました。

オリエンタルランドは、こうしたエピソードを集めて、1冊の本にしています。

1人の社員が客を感動させたことを他の社員に知らせれば、「自分も客を感動させたい」と思うようになるでしょう。

コカ・コーラ

日本コカ・コーラ株式会社は、社員向けに発行している「Sustainability Report」を公開しています。

このレポートには、日本コカ・コーラの人事戦略が書かれています。

日本コカ・コーラ社のインナーブランディングに通じる人事戦略の1つとして「パフォーマンス・エネーブルメント」があります。

これは、社員の業績(パフォーマンス)を最大限引き出す(エネーブル)、という意味ですが、日本コカ・コーラでは、社員は毎月最低1回、マネージャーと対話したりマネージャーからコーチングを受けたりします。

最低月1回となると、かなり濃密な関係といえるでしょう。

また、社員からもマネージャーに、オンラインシステムで業務のフィードバックをします。

日本コカ・コーラは、「上意下達だけ」でも「ボトムアップだけ」でもなく、双方向のやりとりを強化することで、社員1人ひとりのパフォーマンスを高めようとしています。

社員は、社内公募に応募することで、日本コカ・コーラの「親会社」である「ザ・コカ・コーラ・カンパニー」をはじめとする世界の職場に挑戦することができます。

ザ・コカ・コーラ・カンパニーには、企業内大学である「コカ・コーラ・ユニバーシティ」があり、日本からもそこに留学することもできます。

日本コカ・コーラは社員に「コカ・コーラ人」であることのプライドを持たせようとしています。

まとめ~「賃金のため」以外の働く目的を与える

自社の商品やサービスのブランド力を高めることは、企業にとって重要なものですが、その際、「インナーブランディング」が欠かせないということについて理解が深まったのではないでしょうか?

インナーブランディングで重要なのは、利益にたどり着くまでの過程です。

経営者がインナーブランディングに取り組むことで、社員たちは賃金以外のことのために働くようになり、イノベーションが生まれることも期待できます。


<参考>