食品開発 商品開発

ヒット食品の誕生秘話には商品開発のヒントが満載

商品をつくっている企業で働くマーケターにとって、「ヒット商品をつくること」は永遠のテーマであり、毎日の仕事のテーマでもあるはずです。

しかし、世間に広く認知され、爆売れするような商品は、簡単には生み出せません。

そこでマーケターにおすすめなのが、ヒット商品の開発秘話を知ること。ヒット商品の開発秘話には、勝利の方程式が眠っているかもしれません。

ヒット食品がどのように誕生したのか、事例を挙げて紹介していきます。

ヒット食品の開発事例

世の中にはさまざまなヒット食品がありますが、本記事では

  • 味の素の「ギョーザ」
  • はごろもの「シーチキン」
  • キューピーの「3分クッキング マヨ風味炒め用ソース」
  • 東洋水産の「マルちゃん正麺」
  • カルビーの「じゃがりこ」

がどのように生まれたのか紹介します。

差別化しにくい定番食品でも、発想の転換と不断の努力で、他社製品を圧倒することができます。

ここで紹介する食品メーカーの開発姿勢は、重要な見本になるでしょう。

味の素の「ギョーザ」

味の素冷凍食品の冷凍餃子「ギョーザ」は、水も油も使わず、フライパンに置いて加熱するだけで羽根つき餃子ができる商品です。

「ギョーザ」は1972年に誕生以来、人気定番商品として定着していましたが、2012年にリニューアルを敢行したことでその地位を盤石にしました。

味の素がヒット商品をさらに強化したのは、衝撃の事実を知ったため。

その事実とは、味の素が「ギョーザ」の消費者を招いて家庭で使っているフライパンで「ギョーザ」をつくってもらった際に、目分量で水を入れて、ふやけた「ギョーザ」をつくった人がいたこと。

味の素が「ギョーザ」のパッケージに記載していたパリッと焼くコツが無視されたのです。

このことから、味の素はおいしい冷凍餃子を消費者に届けているつもりであったにもかかわらず、消費者の一部はおいしくない餃子を味わっていることが発覚。

それをうけて、味の素は、誰が焼いてもパリッとおいしい餃子がつくれる製品にしようと考えたのです。

そこで考案されたのが、餃子に水分と油分を含む成分を付着させること。こうしておけば、餃子をフライパンに置いて火にかけるだけで水分と油分がフライパン全体に広がります。しかも水分と油分を含む成分は、冷凍餃子を急に熱することを予防するため、野菜のうまみと肉のジューシーさがより引き立つようになりました。

「ギョーザ」の開発ポイントは

  • 定番の地位を築いていても消費者調査を怠らなかった
  • 消費者のちょっとした不便を見逃さなかった
  • 水と油を使うという常識を捨てた

ことであるといえます。

はごろもの「シーチキン」

「シーチキン」とは「ツナ缶」の1つですが、一般名詞の「ツナ缶」より、固有名詞の「シーチキン」のほうが多く使われている、と実感している人は少なくないでしょう。

それは、はごろもフーズが「シーチキン」を、単なる「ツナ缶」として売らず、定番商品へと押し上げたからです。

ツナ缶は昭和初期に「マグロ油漬缶詰」として誕生。第二次世界大戦中は軍用の食料として消費されていました。

戦後、アメリカが日本製ツナ缶の関税を上げたため、輸出量が減少。危機感を持ったはごろもフーズは、国内消費者向けにツナ缶を売ろうと考え、製品名を「シーチキン」とします。

「シーチキン」と名付けた理由は、マグロ油漬缶詰の「油漬」が食欲をそそらない単語であったこと、そして、ツナ缶の原料のビンナガマグロが海外で「海のニワトリ」と呼ばれていたことに由来します。

「シーチキン」は販売当初、期待に反して売れませんでした。日本人にはツナ缶もマグロ油漬缶詰も、もちろん「シーチキン」も未知の食材だったからです。

そこで、はごろもフーズはシーチキンのテレビCMを開始。

テレビCMの「奥さま、今晩のおかずにシーチキンはいかが」というキャッチフレーズが受け、ヒットにつながりました。「シーチキン」事業は利益を出していなかったので、高額の費用がかかるテレビCMは英断だったといえるでしょう。

「シーチキン」の開発ポイントは

  • 輸出減というピンチを国内消費で乗り切ろうと考えた
  • ネーミングに注目した
  • 事業が不振でも、広告にお金をかけた
  • 食べ方を提案した

ということが挙げられます。

キューピーの「マヨ風味炒め用ソース」

キューピーの「3分クッキング マヨ風味炒め用ソース」は、炒め物を調理するときに使う一般家庭向けの調味料です。

マヨネーズのキューピーがマヨネーズ風味の調味料を出しても不思議はない、と感じるかもしれませんが、そうではありません。

キューピーにとって「マヨ風味炒め用ソース」は、初めて「キューピー発」マヨネーズの新しい使い方を提案した商品でした。

マヨネーズは、すでに調味料です。したがって、マヨネーズの使い方をアレンジするのは消費者であり、メーカー(キューピー)ではないというのが常識です。

したがって、キューピー自身が、マヨネーズをアレンジした商品をつくることは、マヨネーズが調味料として不完全な商品であると認めることになってしまいます。

しかし実際は、消費者はかなり自由にマヨネーズをアレンジして使っています。つまり消費者は、マヨネーズ単体では物足らなく感じていたのです。

「マヨ風味炒め用ソース」をつくったのは、商品開発部門に異動してわずか2年の若手社員です。「マヨネーズのコクとうまみが感じられて、1本で味が決まる調味料」というコンセプトで、この商品をつくりました。

「マヨ風味炒め用ソース」の開発ポイントは

  • 王者食品に手を加えるという非常識に挑戦した
  • 消費者がマヨネーズ単体に物足りなさを感じていることを察知した
  • 若手の自由な発想を、企業が容認した

とであるといえるでしょう。

東洋水産の「マルちゃん正麺」

東洋水産の「マルちゃん正麺」が発売されるやいなや、消費者は「これが即席ラーメンなのか」と驚きました。「マルちゃん正麺」はそれほどおいしいラーメンだったのです。

「マルちゃん正麺」の魅力は、生麺のような滑らかでコシがある麺です。

通常、即席ラーメンの麺は、麺を蒸したあとに油で揚げたり熱風乾燥させたりしますが、「マルちゃん正麺」の麺は、そのまま乾燥させます。

東洋水産はこの製法を「生麺うまいまま製法」と名付けました。

東洋水産は「マルちゃん正麺」の麺が従来の生産ラインでは再現できなかったため、生産ラインを1からつくることにしました。

新しい麺づくりの追及は、工場づくりの追求でもあったわけです。

「マルちゃん正麺」の開発ポイントは

  • 他社製品より格段にうまい麺をつくった
  • 試作品の品質を大量生産製品で実現するために、製造工程を1から見直した
  • 大型投資を決断できた

であったといえるでしょう。

カルビーの「じゃがりこ」

カルビーの「じゃがりこ」は、今ではどのコンビニ、どのスーパーでも売っている定番商品ですが、手の平サイズのカップに入ったスティック型のジャガイモ菓子は発売当初、ジャガイモ菓子としては異例の商品でした。

「じゃがりこ」が生まれた背景にあったのは、ジャガイモ菓子の王者、カルビーがスナック菓子市場の停滞に危機感を持っていたこと。

カルビーは市場を活性化させるくらいの、まったく新しい商品が必要であるという結論に達し、その難題を最年長が31歳という若手5人チームに課します。

若手に社運をかけたのは、まったく新しい価値を生み出すには自由なインスピレーションが必要であり、先入観や社内の常識は邪魔になると考えたからです。

「じゃがりこ」は周到なマーケティングの賜物(たまもの)といっても過言ではないでしょう。

5人の開発チームは女子高校生をメーンターゲットに設定。日本の人口に占める女子高校生の比率は決して高くありませんが、「女子高校生に支持されれば、全世代に広がる」と考え、彼女たちの情報発信力にかけたのです。

ここで、女子高校生のカバンにすっぽり入って、戸外で食べることができる菓子、というコンセプトが決定。販売開始当初、「じゃがスティック」という名前で発売されましたが、「じゃがスティック」は、現在の「じゃがりこ」より2倍も長く、パッケージもカップではなく長方形の箱に入ったものでした。

しかし「じゃがスティック」は、ヒット食品には程遠く、その欠点として長くて割れる、つまみにくいということがわかりました。

その欠点を克服したリニューアル品が「じゃがりこ」です。

基本コンセプトである「女子高校生に刺さる菓子」「カバンのなかに入って戸外で食べられる」を信じ、改良を重ねたことがヒットにつながったといえるでしょう。

「じゃがりこ」の開発ポイントは

  • 若手に任せた
  • 基本コンセプトを決めたらブレない
  • 最初の商品でつまずいてもあきらめない
  • 欠点を発見したら改良することに躊躇しない

ことといえます。

新商品開発の17のポイント

上記で紹介した開発ポイントを、商品名を隠して並べてみると、商品開発の秘密がみえてきます。

  • 定番の地位を築いていても消費者調査を怠らなかった
  • 消費者のちょっとした不便を見逃さなかった
  • 水と油を使うという常識を捨てた
  • 輸出減というピンチを国内消費で乗り切ろうと考えた
  • ネーミングに注目した
  • 事業が不振でも、広告にお金をかけた
  • 食べ方を提案した
  • 王者食品に手を加えるという非常識に挑戦した
  • 消費者がマヨネーズ単体に物足りなさを感じていることを察知した
  • 若手の自由な発想を、企業が容認した
  • 他社製品より格段にうまい麺をつくった
  • 試作品の品質を大量生産製品で実現するために、製造工程を1から見直した
  • 大型投資を決断できた
  • 若手に任せた
  • 基本コンセプトを決めたらブレない
  • 最初の商品でつまずいてもあきらめない
  • 欠点を発見したら改良することに躊躇しない

もし、経営者やマーケターや開発者が「どうしてもヒット商品を生み出せない」と悩んでいたら、この17項目を試してみてはいかがでしょうか。

まとめ

味の素、はごろも、キューピー、東洋水産、カルビーが食品業界で存在感を示し続けているのは、ヒット商品を生み出しているからです。

ヒット商品は莫大な利益を企業にもたらすだけでなく、会社の知名度を高めます。会社の知名度が高くなると優秀な人材を集めやすくなり、集まってきた人たちが次のヒット商品を生む、という好循環をつくります。

また、ヒット商品には、消費者を楽しませる効果もあります。消費者を楽しませると、ロイヤリティが高まるので、企業のブランドづくりにもプラスに働きます。

「必要だから買う」消費者より、「必要かつ楽しいから買う」消費者のほうが、その商品をつくる企業を愛する確率が高くなります。


<参考>

「ギョーザ」ハッとした瞬間、驚き与える商品が生まれた

「シーチキン」食の欧米化を見越した先見の明

「キユーピー3分クッキング マヨ風味炒め用ソース」“あったらいいな”が出発点

「マルちゃん正麺」袋麺に新風を吹き込め!

「じゃがりこ」既成概念を取っ払え!

あの人気商品はこうして開発された「食品編」