OKR、Objectives & Key Resultsは、目標管理手法の1つです。
企業活動では、経営者が立てた最終目標に向かって社員たちが働くため、経営者や管理職やリーダーは、社員やスタッフたちの目標管理を行わなければなりません。
そのときリーダーがOKRを使うと、効率よく目標を達成することができます。
OKRでは、1つの最終目標(O、Objectives)と、複数の中間目標(KR、Key Results)を設定します。
Oのことを「目標」、KRのことを「主な成果、成果指標」と翻訳している解説記事もありますが、これはObjectivesとKey Resultsを直訳したものであり、この翻訳では、社内の具体的な目標管理業務をイメージしにくいもの。
したがって、この記事では「O=最終目標」「KR=中間目標」と表記し、OKRについて分かりやすく解説します。
OKRは層構造
OKRは「1つのO(最終目標)と複数のKR(中間目標)」がセットになって1層を形成。これが複数層ある「層構造」です。
上の層のKRがその1段下の層のOになり、そのOのKRが、さらに1段下の層のOに。
概念図で示すとこのようになります。
経営者が定めた目標は、最も重要なO(最終目標)になります。この概念図では、それをO1としています。
O1を達成するには、いくつかのKR(中間目標)を達成しなければなりません。それらをK1~K4とします。
例えば、この会社に4つの事業部があれば、A事業部はKR1を達成しなければなりません。そうなると、A事業部にとってはKR1が自分たちのOです。これをO2とします。
B、C、Dの事業部にもKR2~KR4が割り振られ、それぞれO3~O5となります。
このとき、「KR1」と「O2」はまったく同じ文言にならないようにすることが必要です。
A事業部長は、KR1をO2に翻訳しなければなりません。OとKRの特徴については、後段で解説します。
A事業部は自分たちの最終目標O2を達成するために、まずは中間目標KR5とKR6を達成しなければなりません。
そのためには、A事業部内のE課に最終目標O7を与え、F課に最終目標O8を与えます。
「1つのOと複数のKR」は、最終的には従業員1人ひとりが持つことになります。
OとKRの特徴
OKRでは、OとKRに次のような特徴を設けています。
- O(最終目標)の特徴
・高い理想、ビジョン、ミッションを掲げる
・定性的な内容にする(数値で表せない内容にする)
・60~70%ほど達成できたら「OK」にする
・Oの例:「テレワークでイノベーションを起こす」
- KR(中間目標)の特徴
・定量的な内容にする(数値目標にする)
・複数個つくる
・60~70%ほど達成できたら「OK」にする
・KRの例:「アプリの認知度を10倍にする」「ダウンロード数を100倍にする」「顧客満足度を90%以上にする」
Oには、高い理想を盛り込むことが必要です。
「我が社のミッション」があれば、それがOにちょうどよいかもしれません。
一方、KRは、数値目標にします。
ポイントとなるのが、OもKRも「100%完璧にこなさなくてよい」というルールにしておくこと。60~70%達成できた時点で、そのOKRは「ミッションコンプリート」にして、次の新たなOKRを設定しましょう。
「100%完璧にこなさなくてよい」ということは、監視を緩くするという意味ではありません。100%完璧にこなせてしまう目標は簡単な目標であるため、OKRではあえて設けないということなのです。
OもKRも、一定期間が過ぎたら、達成度を数値で評価しましょう。
なぜ100%完璧にこなさなくてよいのか
OもKRも、100%完璧にこなさなくてもよいようにしておくのは、OKRでは社員たちや部署を目標に向かわせることが主目的になるからです。
もちろん、目標の達成も目的の1つですが、経営者が目標を定め、従業員たちにその100%の達成を厳格に求めると、最初から無理とあきらめて手を抜く社員が現れてしまいます。
また、100%を実現するために、低い目標をつくってしまう、ということも生じます。
OKRでは脱落者を出さないために、そして、より高みを目指すために、あえて「60~70%でOK」とするのです。
なぜOとKRの達成度を数値で評価すべきなのか
OもKRも、100%達成しなくてよい目標を設定しますが、「何%達成したか」はしっかり数値化しておく必要があります。
数値化するときには「評価する」という行為が生まれ、評価することによって反省点や新たな目標(OまたはKR)が見えるでしょう。
企業がOKRを導入するメリット
企業がOKRを導入するメリットは次のとおりです。
- 社員1人ひとりが自ら動くようになる
- プロジェクトチームに団結力が生まれる
- 新しいことに挑戦できるようになる
OKRは、イノベーションを起こすために導入します。
しかし、優秀な人材を採用するだけでは、イノベーションは起きません。イノベーションは、優秀な人材に適切な環境を与えたときに発生するのです。
従来型の目標設定は、社内にぎすぎすした雰囲気をつくることがありました。また、厳しすぎる目標は、社員たちに「目標さえ達成すればいいんでしょ」というネガティブな思いを抱かせてしまいます。それではイノベーションどころか、創意工夫や臨機応変さすら生まれません。
OKRでは「上」に理想があり、「下」に数値目標があります。理想(Oのこと)は、社員をわくわくさせます。また、社員たちに、単純で単調な作業をさせなければならないときでも、理想が明示されているので、社員たちは「理想を実現するための礎をつくっている」と思いながら仕事ができます。
ただ、理想だけでは方向性を見失うので、数値目標(KRのこと)を設定します。目標が数値化されていると、例えばリーダーは、チームでパフォーマンスを発揮できていないメンバーに対し「あの数値を目指そう」と声かけすることができます。
「100%完璧に達成する必要はない」「60~70%でOK」とすることで、職場がぎすぎすした雰囲気にならずにすみます。
OKRを上手に運用すれば、社内の雰囲気がよくなり、社員のモチベーションを高めることが期待できるのです。
KPIやMBOとの違い
OKR以外の目標管理手法として、Key Performance Indicator(KPI、重要業績評価指標)やManagement By Objective(MBO、目標管理制度)が知られています。
この2つの特徴は次のとおりです。
- KPIの特徴
・数値目標を提示して100%の達成を目指す
・業績をどのように評価するか明示する
・達成状況を定点観測する
・目標値に達しなかったら業務を修正する
- MBOの特徴
・明確で具体的な目標を提示して100%の達成を目指す
・上司とスタッフが話し合って、スタッフの目標を決める
・上司は目標を達成する方法をスタッフに明示する(「このようにやろう」と指示を出す)
KPIとMBOでは、目標を100%達成することを目指します。
それがOKRと違うところであり、OKRのユニークなところです。
KPIとMBO、OKRに共通することは、3つとも目標管理手法であるということ。目標とは、100%の達成を目指すのが普通なので、100%の達成をあえて求めないOKRは、かなりオリジナル性が強いといえるでしょう。
グーグルとツイッターのOKR
グーグルはOKRを導入して大成功を収めた企業の1つで、ツイッターはグーグルのOKRを「輸入」しています。
それぞれの企業について、1つずつ見ていきましょう。
グーグルのOKR
グーグルのOKRの根源は、インテルの元CEO、アンディ・グローブ氏の著書「High Output Management 人を育て、成果を最大にするマネジメント」です。
グローブ氏は、経営者やビジネスパーソンに、次の2つの問いを持つことをすすめています。
1.自分は何を目指したいのか
2.目標までの到達度をどのように測定したらよいのか
1はO(最終目標)で、2はKR(中間目標)。Oで理想を掲げ、KRで数値目標を明示するわけです。
かつてインテルに勤め、グーグルに出資している1人の投資家の1人が、インテル時代にグローブ氏から学んだOKRをグーグルに持ち込みました。
グーグルはOKRを次のように定義しています。
- OでもKRでも、目標は、社員たちが若干気後れするくらい高いレベルに設定する
- KRは数値化して測定する
- OKRは全社員に公開して、誰もがお互いの作業状況を確認できるようにする
- OKRでは、目標の60~70%の達成率を目指す(100%達成できてしまったら、目標が低レベルだったと反省する)
- 60~70%に達しなかったら、次のOKRの設定の参考にする
- OKRは社員を評価するツールではない
- OKRはタスク管理ツールではない
このうち「OKRは社員を評価するツールではない」「OKRはタスク管理ツールではない」の項目については、経営者や管理職やリーダーの自制が必要になるでしょう。
というのも、リーダーというものはつい、目標でメンバーたちを評価したり、タスクを管理したりしたくなるため。
それではOKRの思想を実現できませんので、注意が必要です。
ツイッターのOKR
ツイッターの元CEOのディック・コストロ氏は元グーグル社員で、インテルからグーグルに伝わったOKRがツイッターに伝わりました。
コストロ氏は「グーグルで学んでツイッターで応用したのは、OKRである」と述べ、OKRの特長を次のように指摘しています。
- 何が重要か、何が重要かをどう判断するかを、すべての社員が理解できる
- 戦略を伝え、それをどう評価すべきかを周知できる
- 企業が大きくなるときに発生するコミュニケーション不足問題を解決できる
OKRを「べた褒め」していることが分かります。
まとめ~
OKRは、どうしたら社員たちを鼓舞できるか、と考えて生み出された手法です。
多くの社員は、経営者や上司やリーダーから「鼓舞されたい」と期待していて、理想を掲げたO(最終目標)と、数値目標であるKR(中間目標)を示すことで、社員たちは生き生きと仕事に取り組めるようになるでしょう。
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