digital transformation

DX(デジタルトランスフォーメーション)の国内事例と海外事例

今、注目されるデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation、以下DX)。

この記事では、DXの国内事例と海外事例として、三菱UFJフィナンシャル・グループとマイクロソフトの事例をそれぞれ紹介します。

DXについては、以下の2本の記事も公開しています。

本稿を読む前のこの2本の記事に目を通しておくと、DX事例を「学ぶ意義」を深く理解できるので、前述した2本の記事もぜひ読んでみてください。

三菱UFJのDX戦略とは

2020年1月、日本経済新聞が「異例づくしの人事だ」として驚きの記事を掲載しました。(*1)

それは、三菱UFJフィナンシャル・グループの亀沢宏規副社長が、4月に社長に昇格することが決まったというもの。

亀沢氏は、三菱UFJ銀行の頭取を経験せず、三菱UFJフィナンシャル・グループのトップになりましたが、これは同社初の出来事です。

しかも、これまでは三菱UFJフィナンシャル・グループのトップになるまで、入行(入社)から40年ほどかかるのが通例だったのを、亀沢氏はわずか34年で到達したのです。

三菱UFJが異例の大抜擢を決めたのは、亀沢氏が東大理学部数学科の出身で、フィンテックに強いという理由からですが、理系学部出身者のトップ就任は、3つのメガバンクのなかでも初めてのこと。

金融業界はフィンテックによって参入障壁が格段に下がり、IT企業のターゲットになりやすい業界になったため、三菱UFJには「今、組織風土を変えなければ、顧客をつなぎ留められない」という焦りがありました。

この組織風土の変化をもたらすのがDXであり、その牽引役が亀沢氏というわけです。

それでは具体的に三菱UFJのDX戦略をみていきましょう。

*1:三菱UFJ、新社長に理系出身の亀沢氏 デジタル化急ぐ

「個人向け」「法人向け」「技術」の3分野で29項目

三菱UFJが行うDXメニューは、「個人向け」「法人向け」「技術活用」の3分野で29項目に及びます。

そのすべてを紹介します。

デジタルトランスフォーメーション,事例

この一覧表だけを見ると、大手IT企業の「やること」メニューのようですが、そのように見えるくらい三菱UFJはDXに本気の取り組みをみせています。

フィンテック・サービスの受け手がフィンテック事業を展開する

DXの代表格であるフィンテックは、金融機関や金融業界に参入する企業向けのソリューションサービスといえます。

フィンテックというデジタル技術を使うことで、金融ビジネスが効率化して、生産性が向上し、コストが下がり、顧客の利益を高めることができるからです。

しかし、先ほど紹介した三菱UFJのDXメニューを見ると、同社がフィンテックの担い手になろうとしているかのようです。

三菱UFJは、フィンテックをつくるIT企業になろうとしているので、フィンテックに強い人材をトップに据えるわけです。

ただし、三菱UFJが単体で29項目にDXメニューをこなせるわけではありません。

同社が重点領域と考えているのは、29項目のうち、以下の10項目です。

<個人向けDXのうち三菱UFJの重点領域のみ再掲>

ペイメント(個人間送金)、個人資産管理

<法人向けDXのうち三菱UFJの重点領域のみ再掲>

SME決済とPOS、オンラインデータ融資、クラウド会計、APIプラットフォーム、レギュレーションテック

<技術活用DXのうち三菱UFJの重点領域のみ再掲>

ブロックチェーン、ロボティック・プロセス・オートメーション、AI(機械学習・深層学習)

 

これ以外の19項目については、IT企業などと提携して実現させていくとしています。

マイクロソフトがDXで自動車を変える

「自動車は機械の集合体」と考えるのは、古くも新しくもありません。

自動車は、これからどれだけ進化しても、機械として正確に動かなければなりませんが、これからの自動車は、DXなしでは存在し得ないでしょう。

そこに、ITの王者であるマイクロソフトのビジネスチャンスがあります。

マイクロソフトは、今と将来の自動車業界について次のようにみています(*2)。

  • 新しい技術とサービスによって、自動車エコシステムを大きく変化させる革新的なビジネスモデルの扉が開いている
  • 既存の自動車メーカーも新規参入企業も、DXに着手することで、1)新しい役割、2)収益源の将来性、3)生産性の向上、4)顧客との関係強化、の4点を最大化できる

マイクロソフトは、自動車を変えるとともに、自動車業界まで変えようとしています。

そして、劇的に変化した「DXな自動車の世界」の覇者になろうとしているのです。

*2:マイクロソフト

Microsoft モビリティの未来

 DXな自動車の世界の様子

「DXな自動車」という言葉から連想するのは、自動運転車という方が多いのではないでしょうか。

自動運転車はすでに市販化されて公道を走っていますが、近い将来に登場する「DXな自動車の世界」での驚くべき光景は、自動運転車が行き交うだけではありません。

マイクロソフトは、DXによって自動車ビジネスが一変すると考えています。

自動車業界にはすでに、次のようなビジネスが存在します。

  • カーシェアリング、ライドシェア、オンデマンド・モビリティ・サービス、レンタルやリース、輸送、販売

DXはこれらのビジネスや業務を進化させたり、効率化させたりします。

自動車業界を変えるDX技術とは

従来の自動車業界の「技術の進化」といえば、機械の進化が中心でした。

世界を驚かせたトヨタのハイブリッドシステムは、電気モーターとガソリンエンジンという2つの動力を1台の車に搭載し、驚異の低燃費を実現したもの。

もちろん、電気モーターとガソリンエンジンの「いいとこ取り」をするには、高度なコンピュータ技術、つまり高度なITが必要であり、そういった意味では、ITの進化も、自動車技術の進化を支えてきたといえるでしょう。

ハイブリッドシステムでは、「主」はあくまで機械の進化であり、ITの進化は「従」。

しかし、電気自動車や自動運転車では、機械とITが同等か、ITのほうがリードする形になります。

したがって、マイクロソフトのようなIT企業が、自動車業界に参入しようと目論んでいるのです。

マイクロソフトは自動車業界のDX化に必要な技術として次のようなものを挙げています。

  • IoT、AI(機械学習)、コグニティブサービス、リアルタイムでのデータ収集、データ分析、データ解析、データ管理、クラウド、オムニチャネル、ネットワーク、ロボット工学、自動化技術

ここでも、三菱UFJのときと同じように、デジタル用語やIT用語、ネット用語が並びます。

マイクロソフトはDXを「てこ」にして自動車産業に乗り込み、そして自動車産業を牽引しようとしています。

まとめ

三菱UFJは、自社がDX化することで、金融業界で生き残ろうとしています。

そして、マイクロソフトは、自社の得意分野であるDXをフル活用することで、自動車業界で重要な地位を築こうとしています。

両社がDXに熱心に取り組むのは、DX化が本格化すれば、業界の主役が総入れ替えになる可能性があるから。

業界の上位に昇り詰める鍵は、DXが握っているといっても過言ではないでしょう。


参考