企業が、製品やサービスをユーザーに提供する際に、重要なのが他社との差別化を図ること。
そのために重要なのが、UXを高めることです。
「ユーザー・エクスペリエンス」(UX)とは、企業が提供する製品やサービスを使った消費者や顧客の体験のこと。
日本語で「顧客体験」と表記しても、特別な印象を持つことはありませんが、UXと表記した場合、それは単なる体験ではありません。
UXは今や、マーケターがマーケティング・キャンペーンを企画するときに重視しなければならない項目の1つです。
この記事では、UXの基礎知識と、優れたUX事例を紹介します。
本稿で得た知識を応用すれば、顧客に「よい体験ができた」と思わせるマーケティングを展開できるはずです。
ユーザー・エクスペリエンスの正体とは
マーケターたちが英語表記の「UX」を使うのは「顧客体験」という日本語の概念が小さすぎるからです。
例えば、「サンダルを買う」という消費行動の「顧客体験」といったとき、新しいサンダルを履いて快適に歩くことを想像するはずです。
一方でUXは、顧客がまだ潜在顧客ですらない状態から始まり、顧客が商品を買ったあとも続きます。
消費者が商品を想像することすらUXになる

例えば、サンダル・メーカーのマーケターがマーケティングを展開する場合、「サンダルを買いたいと思っていない人に、サンダルを買わせるにはどうしたらよいだろうか」と考えます。
このとき、ハワイ旅行を販売している旅行会社のキャンペーンとコラボするとしましょう。
男女のモデルに自社のサンダルを履いてもらって、ハワイの浜辺を歩くCMをつくれば、消費者は「ハワイに行ったときは、ああいうサンダルを履きたい」と思うでしょう。
これがもうUXなのです。
その思いが「サンダルが今すぐ必要というわけではないが、デザインがよいサンダルがあったら買ってみてもいいかもしれない」という思いに進化するかもしれません。
これもUXになります。
UXでは、サンダルを履くどころか、サンダルに触れてすらいない顧客に体験を与えようとします。
想像もUXになります。
なぜ消費者の想像がUXになるのかというと、そのほうが楽しい買い物になるからです。
サンダルを買いたい、という消費者にとって、次の【買い物1】と【買い物2】のケースでは、どちらが楽しそうでしょうか。
【買い物1】10年履いているサンダルがボロボロになってきたから、新しいものを買わなければならない。ちょうどいいサンダルがあるから、これでいいや。
【買い物2】今すぐハワイに行けないから、美しい海に似合うオシャレなサンダルがほしかった。このサンダルは、まさにそのイメージにピッタリ合う。
UXを意識したマーケティングや商品プロモートを行うと、【買い物2】のUXを顧客に提供することができます。
実際にサンダルを履いてもらって快適さを味わってもらう体験は、たくさんあるUXのうちの1つにすぎません。
UXでは、購入後の取り組みも重要になります。
サンダルを買ってハワイへの気持ちが高まった顧客なら、UXの内容次第で本当にハワイ旅行に行くかもしれません。
サンダル・メーカーとハワイ旅行を販売している旅行会社のコラボは、UXを高めるのに効果的といえます。
SNSとスマホはUXに効果的
【買い物1】でも【買い物2】でも、同じサンダルを同じ金額で売れば、企業の売上高は同じです。しかし、企業は【買い物2】を消費者に提供していったほうがよいでしょう。
それは、【買い物2】を提供し続けることで、リピーターになってくれたり、ロイヤリティが高まったり、高額商品を買ってくれたりするからです。
それに気がついた企業は今、UXの提供に力を入れ始めています。
そして、UXを強化しようと考えている企業は、SNSとスマホを積極的に活用しています。
YouTubeなどの動画を使ったSNSは、テレビCMのような躍動感あふれる提案ができます。YouTubeの優れた動画は、見ているだけで体験したような感覚が得られるうえ、製作費はCMに比べて安く済みます。
スマホを使ったマーケティング・キャンペーンは、企業と顧客との接点を増やします。なぜなら、消費者や顧客は毎日何時間もスマホを触っているからです。
UXを高めるには、しつこいくらい顧客にアプローチし続ける必要があります。お得なキャンペーンや魅力的なコンテンツを発信すれば、顧客はしつこいとは感じません。
UXが重視される理由
マーケティングでUXが重視されるのは、現代がモノ余り時代であり、サービス過剰時代だからです。
生活に必要なモノと生活に欠かせないサービスは、安価なものが大量に市場にあふれています。消費者の必要性を満たすだけなら、これ以上の新製品や新サービスを市場に投入する必要はないでしょう。
しかし、新製品や新サービスをつくっていかないと、企業は生き残ることはできません。なぜなら、必要性を満たすだけの製品・サービスは、毎日値下げ圧力にさらされるからです。
新製品・サービスを提案して、消費者や顧客から驚かれて歓迎されたとき、企業はより多くの利益をあげることができます。
そこでUXの考え方が大切になってきます。
必要性が満たされるだけでは驚きも歓迎もしない消費者が心を動かすのは、「よい体験ができた」と思えたときです。
消費者は今、「商品+よい体験」「サービス+よい体験」により多くのお金を使おうとしています。
「+よい体験」を提供できるかどうかは、マーケターの腕にかかっています。
UXとUIとの違い
UXとユーザー・インターフェース(UI)は、表記が似ているため混同されることがありますが、2つはまったく異なる概念です。
UIは主に、パソコンやスマホなどの使い勝手に関する事柄であり、「握りやすいマウス」や「タップしやすい画面」などがUIです。
UIはUXを高める方法の1つです。
優れたUX事例
企業のUX強化の取り組みのうち、優れた事例としてユニクロの事例を紹介します。
ユニクロは銀座やバルセロナに出店することでUXを高める
ユニクロの衣料を買う人は、「機能性、ベーシックであること、安価」を評価しているはずです。
しかし、ユニクロは、銀座や原宿やロンドン、バルセロナといった、家賃や地価が高い場所に大型店を出店しています。
これは、UXを高める取り組みといえます。
- 感想A:安いから仕方なくユニクロを着ている
- 感想B:自分のライフスタイルにマッチしたのがたまたまユニクロの安価な服だった
この2つの消費者の感想は、ユニクロにとってとても重要です。
ユニクロは、初めてユニクロの服を買った人が感想Aを持ったとしても、いつか感想Bを持ってほしいと考えています。
銀座やバルセロナに出店すれば、ファッション感度が高い人「も」買う服、と認識されるようになります。
その認識が広まれば、日本の地方にあるユニクロ店でも、客たちに感想Bを持ってもらえます。
「ユニクロの服」と「ユニクロと同品質で同額の服」が1枚ずつあった場合、感想Aの顧客は、どちらを選ぶかわかりません。しかし感想Bを持っている顧客は高い確率でユニクロの服を選ぶでしょう。
UXはそれくらいの力を持っています。
まとめ~スマホでSNSを見てUXを感じる
SNSはコミュニケーション・ツールですが、そこに趣味性や娯楽性が加わったことで、爆発的に普及しました。
つまり、SNSには、コミュニケーションの要素、趣味の要素、娯楽の要素が詰まっています。これらはいずれもUXを高める要素です。
トレンダーズ株式会社(本社・東京都渋谷区)が行った「女性のSNS利用と消費行動に関する調査」によると、「SNS投稿を見てインターネットで商品を購入したことがある」人は63.2%にもなりました(*1)。
また、株式会社マックビー・プラネット(本社・東京都渋谷区)の「SNSマーケティング調査」によると、最も購入動機を高めたSNSはユーチューブで、SNS投稿で最も重視されたのは「詳細な使用感やレビュー」でした(*2)。
そして総務省によると、インターネットを使うときスマホを利用する率は、13~49歳で82.2~94.8%です(*3)。
この3つの調査を合わせると「SNS+スマホ」対策こそ、顧客の消費行動を促進するUX対策になるといえるでしょう。
*1:https://www.trenders.co.jp/wp-content/uploads/2016/05/trenders20160511.pdf
*2:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000023647.html
*3:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd142110.html
お役立ち資料ダウンロードはコチラ
<参考>
顧客体験とは?顧客体験を向上させるマーケティング手法と事例を紹介
今春「ユニクロ」が横浜、原宿、銀座に出店する大型店の内容が明らかに 公園のような店や着こなしアプリ連動売り場も
トレンダーズ、女性のSNS利用と消費行動に関する調査を実施「インフルエンサー型」「フォロワー型」で変わる消費行動モデルSNS時代の新たなキーワードは「妄想消費」