デジタルトランスフォーメーション,金融機関

デジタルトランスフォーメーションで変化する金融機関【事例あり】

さまざまな業界で注目が集まるデジタルトランスフォーメーション(DX)。

その中で、相対的にレガシーシステムが多い金融業界は、デジタルトランスフォーメーションへの対応が後手にまわっています。

しかし、現金という物理的な物体ではなく、データという数字と記号だけで動くのであれば、DX化は容易であることから、金融業界でも「DXの嵐」が吹き荒れています。

DXは金融業界をどのように変えたのでしょうか。そして、日本の金融機関のDX化はどの程度進んでいるのでしょうか。

DXで変貌した金融機関、3つの事例

DXによってビジネス様式が変わった金融機関として、DBS銀行、JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックスの取り組みを紹介します。

DBS銀行のDX

シンガポールのDBS銀行は2016年と2018年の2回、金融専門誌「ユーロマネー」の世界最優秀デジタル・バンクに選ばれた銀行です。

DBSには、ネット企業が疑似銀行化していることへの危機感がありました。疑似銀行は、金融で儲けなくても本業で儲けていれば潰れませんが、DBSなどの本物の銀行は金融で儲けられなくなれば潰れてしまいます。そこでDBSは「会社の芯までデジタル化する」という指針を立て、DXを推進したのです。

一般的に、金融機関のDXといえば、オンラインサービスやモバイルサービスの導入を指しますが、DBSはさらにバックエンドのソフト、アプリ、ハード、インフラまでデジタル化。まさに「芯まで」デジタル化したのです。

DBSが最も力を入れたのはクラウド化です。銀行のシステムをクラウド化すれば、コスト削減、システムへの信頼性、システムの拡張性を実現できます。

そして、顧客の満足度を高めるためにスマホ銀行を立ち上げたのです。

JPモルガン・チェースのDX

アメリカの金融業界のDX化は、2008年のリーマン・ショックに端を発しているとされています。

リーマン・ショックで経営危機に陥った多くの金融機関に多額の公的資金が注入されたことを国民が強く非難。金融機関は変革が迫られ、DXで効率化することが求められたのです。

なかでもJPモルガン・チュースのDX化は群を抜いたもの。フィンテック事業に1兆円を投じる方針を打ち出したほか、テクノロジー企業を自社に迎える「イン・レジデンス」事業に着手。また、DXの勝ち組企業であるアマゾンなどと組み、医薬品やヘルスケアの合弁事業も立ち上げています。

JPモルガン・チュースはモバイルバンキング・アプリ「Finn」を開設していますが、「Finn」は、スマホ・アプリを入口にして顧客を自社の金融サービスに誘導するというもの。DBSのスマホ銀行と似た概念のサービスです。

この他、独自の仮想通貨「JPMコイン」計画も発表しています。

ゴールドマン・サックスのDX

ゴールドマン・サックスのDX化で注目されたのは、業務のAI化による人員の削減です。

同社のマーケットメークと呼ばれる値付け業務には従来、500人の人員が従事していましたが、AIの導入で3人にまで減ったのです。

また、ゴールドマン・サックスはモバイルサービス「マーカス」を提供していますが、「マーカス」は一般消費者を狙った無担保個人融資で、オンラインで手続きができるもの。これまで大企業相手のビジネスが主流だったゴールドマン・サックスが個人へのサービスを展開したことで「傲慢だったゴールドマン・サックスが消費者に優しくなった」とも言われています。

日本の金融業界でDXが浸透しない理由

大和総研グループは2020年7月に公表したレポート「日本の真の金融デジタルトランスフォーメーションを進めるチャンス」によると、日本の金融DXは「期待されたほど進展していない」とされています。

日本の金融DXのネックになっているのは次の2点です。

  • 顧客のデジタル化が進まない
  • 伝統的な金融機関がビジネスモデルの改革を拒みDXが進まない

顧客のデジタル化として、現金からキャッシュレス化への動きが挙げられますが、日本人は現金信仰が強く、クレジットカードや電子マネーを敬遠する人は少なくありません。なかには「クレジットカードだとお金を使っている意識が弱まるから、無駄遣いしてしまう」という消費者も。日本人の金銭感覚は現金感覚とほぼ同義であり、いくら金融機関がデジタル化を進めても、消費者に広まらないのです。

また、日本の金融業界はヒエラルキーが明確で、伝統的な金融機関が上位に立ち、フィンテック企業が下位にある構図になっています。このヒエラルキーが維持されているのは、政府の規制があるからです。金融庁は、預金取扱等金融機関、銀行等代理業者、外国銀行代理銀行、電子決済等代行業者等、金融商品取引業者等、保険会社等、信託会社等、金融会社、無尽業者、清算・振替機関等、監査法人等を管轄しており、金融業界の免許制度、許可制度、登録制度は複雑かつ新規参入が難しくなっています。

ヒエラルキーが明確なままでは、上位の伝統的な金融機関に危機感が生まれないので、新サービスの展開に積極的になれず、下位のフィンテック企業には新サービスを展開するチャンスが与えられません。

消費者、金融機関、政府に「今のままで不都合はない」という意識があるうちは、金融DXは根づかないでしょう。

金融DXを成功させるには

金融DXを成功させるには、フィンテック企業が活躍できる環境を整えることが欠かせません。

規制緩和が進めば、アイデアを温めてきたフィンテック企業が一気に開花する可能性があります。顧客のデジタル化がなかなか進まないのは、デジタル化によるメリットが見えないからです。フィンテック企業が提供する新サービスは利便性が高いはずなので、消費者に受け入れられるはずです。

消費者がフィンテック企業のDX化された金融サービスを受け入れれば、伝統的な金融機関も本格的に動かざるを得なくなります。

伝統的な金融機関がDXに大型投資をすれば、金融DXは格段に、かつ短期間で進化するでしょう。

まとめ

金融機関にとってDXは、数少ない起死回生のチャンスといえるでしょう。三菱UFJフィナンシャル・グループでは、デジタル化を担当してきた亀澤宏規氏が2020年4月にトップに就任しましたが、これは、危機感とDX化の必要性の両方が顕在化したものだといえます。

あとに続く金融機関が現れるのか、それともディスラプター(破壊者)が台頭するのか、いずれにしても、DXがカギを握ることは間違いなさそうです。

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<参考>

デジタルトランスフォーメーション戦略

日本の真の金融デジタルトランスフォーメーションを進めるチャンス

免許・許可・登録等を受けている業者一覧

三菱UFJ、異例づくしの新社長を待ち受ける難題、メガ初の理系トップでデジタル化を加速