デザインシンキング

デザインシンキングは発散させて収束させるとうまくいく

デザインシンキングは、経済産業省が企業に推奨するほど経済合理性がある優れたビジネス思考ですが、「試してみたけどうまくいかない」と感じている人も少なくないようです。

デザインシンキングの効果を実感できない人は、「発散と収束」を試してみてください。

発散と収束は「新しい選択肢をどんどん増やすことが発散で、そのなかから新しい解決策を選択することが収束」と説明されますが、どういうことなのでしょうか。

詳しく解説します。

デザインシンキングにおけるキーワードは「発散」と「収束」

デザインシンキングの基礎をおさらいしたうえで、発散と収束について考えていきましょう。

そもそもデザインシンキングとは

デザインシンキングとは、「消費者に共感すること」「疑問を持つこと」「アイデアを探すこと」「試すこと」といった行動を取ることで、イノベーションを生み出す取り組みです。

また、これ以外に、デザインシンキングには次のような定義があります。

  • 消費者に寄り添って商品やサービスをゼロベースで考えていく発想法
  • 現状を好転させるための道筋を考案する思考法
  • 「観察・共感」「定義」「概念化」「試作」「試行」の5つのプロセスを踏む思考法
  • 人間中心のデザインであり、アートとテクノロジーの融合

こうした定義は、デザインシンキングに興味を持ったことがある人なら、一度は目にしているはずです。

答えはこのなかにあるのですが、それでも課題を解決できないビジネスパーソンはいます。

それは、これらの定義には「具体的なやり方」が書かれていないからでしょう。

「発散と収束」は、デザインシンキングの考え方を使った具体的な行動なので、ビジネスパーソンがそのまま真似することができます。

発散・収束の概念図

デザインシンキングの提唱者の1人であるティム・ブラウン氏は、アメリカのプレゼン番組「TED」で、次のような概念図を示しています。

デザインシンキング ブラウン 発散 収束

発散とは、多くの選択肢(アイデア)をつくることであり、収束とは、その選択肢のなかから優れたアイデアを選択することです。

この概念図を見て、次のように思うのではないでしょうか。

「なるほど、選択肢を多くつくれば、よりよい方法をみつけることができるはずだ」

「この提案に新味はあるのか、当たり前のことを言っているだけではないのか」

発散・収束の考え方はとてもシンプルなので、すぐに理解できるというポジティブな面がありますが、単純すぎて凄さがわかりにくいというネガティブな面があります。

では、どちらの理解が正しいのかというと、「選択肢を多くつくれば、よりよい方法をみつけることができる」という考え方です。

従来の選択肢が通用しなくなっている時代

発散・収束という手法に新味を感じない人がいるのは、収束の作業に慣れ切ってしまっているからです。

これまでは、世の中にはすでに無数の選択肢があふれていて、収束の作業さえすれば、よい選択をすることができました。

しかし、日本企業がアメリカ企業に追いつけず、中国企業にすら追い抜かれているのは、山ほどある選択肢が陳腐化しているからと考えられます。

従来の選択肢は、イノベーションに使えません。

新しい選択肢を次々つくり出すこと、つまり発散の作業に力を入れることが、現代のビジネスパーソンに求められています。

発散・収束のデザインシンキングの成功事例

発散・収束のデザインシンキングの成功事例でよく引用されるのが、セブンイレブンのプライベートブランド(PB)商品の「金の」シリーズです。

「金の」シリーズが登場するまで、PB商品は、ナショナルブランド(NB)商品より簡素にして安価にするのが一般的でしたが、安価であってもPB商品は流通業にとって利益率が高く、十分「儲かる」ビジネスでした。

その流れの中で、セブンイレブンは「金の」シリーズで高級感を打ち出したのです。

「金の」シリーズは、数多くのヒット食品を生み出しましたが、圧巻は2013年に発売した「金の食パン」でしょう。

「高級PB」ですら、すでに従来のマーケティングを逸脱しているのに、「高級食パン」という、さらに逸脱した商品を開発し、見事にヒットさせました。

「金の食パン」は、常識にとらわれない発散と、チャレンジ精神を発揮した収束によって生まれた商品といえます。

2019年には、食パン専門パン店が登場して高級食パンブームが到来しますが、セブンイレブンはその6年も前から高級食パン事業を成功させていたのです。

デザインシンキングの発散・収束が、いかにイノベーションに有効であるかがわかる事例です。

数学的な発散と収束

発散と収束と聞いて「どこかで聞いたことがある」と感じた人は、高校の数学をよく勉強した人ではないでしょうか。

数学における発散とは、「nが大きくなると、anがいくらでも大きくなる」現象のことをいいます。

例えば「an=10n」は、nが1、2、3…と大きくなると、anは10、20、30…といくらでも大きくなります。

したがって「an=10n」では、anは発散します。

数学における収束とは、「nが大きくなると、anが一定の値に近づく」現象のことをいいます。

例えば「an=1/n」は、nが1、2、3、4…と大きくなると、anは、1、0.5、0.333…、0.25…といくらでも小さくなり、限りなく0に近づきます。

したがって「an=1/n」では、anは収束します。

デザインシンキングの発散と収束も、この数学的現象と似ています。

ビジネスシーンでデザインシンキングの発散を実行するときは、とにかく選択肢の数を増やすことを考えます。

質は無視して、増やすことに専念してください。

荒唐無稽なものや無茶なものでも、頭に浮かんだものは何でも構わないので、アウトプットしていきます。

数学の発散に制限もブレーキもないように、デザインシンキングの発散では、誰も他人のアイデアの提案に制限をかけてはいけません。

ビジネスシーンでデザインシンキングの収束を実行するときは、とにかく選択肢を絞り込むことに専念します。

このとき、結局、従来の枠組みにとらわれた保守的なアイデアが選択されても問題ありません。

その保守的なアイデアを実施して失敗したら、「従来の枠組みで収束させたのが間違いだった」ことがわかるからです。

そうして次は、従来の枠組みを飛び越えたアイデアを実施すればよいわけです。

何しろ選択肢は、荒唐無稽なものや無茶なものも含め、いくらでも用意されています。

まとめ~最大の挑戦は従来の枠組みを出ること

発散と収束を実行するには、従来の枠組みを飛び越える必要がありますが、実際はとても難事業になるでしょう。

考えれば考えるほど、従来の方法が正しいように思えてくるからです。

そういった意味では、発散と収束では、発散のほうが重要かもしれません。

とにかく多くの選択肢を出すようにしてみましょう。

アイデアの数が少なければ「荒唐無稽のアイデアしか出してはならない」という決まりをつくってみてください。

あとに収束という作業が控えているので、発散は、それくらいリラックスして行なったほうが効果的です。

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<参考>