商品やサービスを継続的に市場に提供するためには、「顧客の声」に耳を傾けることが大切です。しかし、顧客の声を重視することが必ずしも企業にとっての成功につながるわけではありません。
今回は、ビジネスにおける顧客の声の重要性や耳を傾けすぎることの危険性について紹介します。大きな失敗を未然に防ぐために読むべき本も併せてチェックしていきましょう。
この記事は、次のような人におすすめの内容です。
- 顧客の声が気になる人
- 顧客の声をどこまで聞くべきか悩んでいる人
- ビジネスの失敗を防げる本を探している人
成功には「顧客の声」を聞くことが重要
顧客の声に耳を傾けることは、企業が成功するために非常に重要な活動です。
なぜなら、顧客の声を集めると会社が解決すべき課題が明らかになったり、市場における立場が明確になったりするからです。
顧客の声を聞けば、商品やサービスを改良してさらなる売上につなげたり、市場の需要を満たす商品開発が実現することもあるでしょう。
こうした背景から、企業が成功するためには顧客の声を聞いて適切な対応を取ることが大切だとされているのです。
顧客の声を聞きすぎて失敗することも
先に説明した通り、顧客の声は企業にとって成功の要因になりますが、失敗につながることもあります。
顧客の声に合わせて企業が商品やサービスを開発したり、マーケティング施策を変更したりすると
- 一部の顧客のニーズしか満たせず、想定していた売上を獲得できない
- 競合他社にすぐに模倣されて市場における競争優位性がなくなる
- そもそも顧客に購買されない
などのような失敗をする可能性があります。
競合他社に対する模倣困難性は、企業の努力によって状況を変えることができますが、顧客の声を元に新商品や新サービスを開発しても、必ず購買されるとは限りません。
なぜなら、顧客は自分が当該商品やサービスを提案したときに購入した状況をきちんと想定していない可能性があるからです。
そのため、企業がいくら顧客の声に耳を傾けて開発に励んだとしても、必ず売上につながる保証はないのです。
「顧客の声=市場のニーズ」とは限りません。しかし、顧客の声は市場のニーズを見つけるきっかけにはなります。
企業が市場で売上を獲得していくためには、適度に顧客の声を聞きながら自社の強みなどをいかしていくことが大切だといえるでしょう。
読んでおきたい「環境への過剰適応」についての本
環境への過剰適応とは、環境に適応しようと強く意識するあまり、かえって変化に対応できなくなるということ。自分で環境を変化させる力を失ってしまうことを環境への過剰適応と呼ぶこともあります。
企業にとって顧客の声に耳を傾けることは大切ですが、重視しすぎると環境への過剰適応状態に陥りやすいといわれています。
この章では、環境への過剰適応について書かれた
- 失敗の本質―日本軍の組織論的研究
- イノベーションのジレンマ
の2冊について、紹介します。
失敗の本質―日本軍の組織論的研究
「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」は1991年8月に出版された本であり、発行部数70万部以上のベストセラー本です。
タイトルの通り、この本では旧日本軍の失敗について解説している本ですが旧日本軍の失敗は、企業などの組織運営や大きなトラブルなどに役立つと定評を集めています。
この本では、失敗から学び、次に同じ失敗をしないための対策が大切だと説明されています。
例えば、環境の変化に対応せずに自社の軸を貫いたままでいると、時代に取り残される危険性があります。自社にとって異端な意見を排除し続ければ、方向性を見直すきっかけを失うことになるでしょう。
日本軍は過去の成功に捉われ、異端を徹底的に排除して失敗(敗戦)しましたが、アメリカ軍はトライ&エラーを繰り返したことが成功(戦勝)につながったと「失敗の本質」で述べられています。
日本軍とアメリカ軍の当時の戦略を対比させながら、現代にも通じる理論が述べられているのでぜひ一度読むことをおすすめします。
項目 | 内容 |
タイトル | 失敗の本質―日本軍の組織論的研究 |
価格 | 838円 |
出版社 | 中央公論社 |
発売日 | 1991年8月1日 |
イノベーションのジレンマ
「イノベーションのジレンマ」では、優良な企業は正しい行動を取るがゆえに失敗することがあると説明されています。
なぜなら、優良な企業は既存の顧客の声に耳を傾けて、それ以外のニーズを切り捨てる傾向があるからです。
この本では、既存の顧客を大切にするあまり、会社としてのチャンスを逃して失敗する可能性があると指摘しています。もちろん、既存の顧客は大切ですが、時代の変化や技術革新などが要因となって市場のニーズは絶えず変わります。
そのため、企業は新規顧客を獲得するためのイノベーションを起こすことが大切です。
しかし、優良な企業になるほどイノベーションを起こすべきと考えていても、なかなか実際の行動には移せません。
企業がこうしたジレンマに陥らないためには、
- 自社発信で市場にイノベーションを起こす
- 市場のイノベーションを先読みして、あらかじめ手を打つ
などの行動を取るとよいでしょう。
企業がイノベーションのジレンマから抜け出すためには、行動するしかありません。
自社の本業を大切にするのも重要ですが、別の技術で収益を獲得する方法を模索するのがポイントといえます。
項目 | 内容 |
タイトル | イノベーションのジレンマ |
価格 | 2,160円 |
出版社 | 翔泳社 |
発売日 | 2011年12月20日 |
まとめ
今回は、企業における顧客の声の重要性や耳を傾けすぎた場合の危険性について解説しました。
大切なポイントをまとめると、次の通りです。
- 企業が成功するためには顧客の声を聞く必要がある
- 顧客の声を重視しすぎると、失敗することもある
- 顧客の声を聞きつつ、自社なりのアプローチをするのがポイント
- 大きな失敗をする前に、本を読んで対策をするべき
市場のニーズをつかんで新商品や新サービスを開発することが、企業にとっての成功につながります。
今回紹介した内容を参考に、適度に顧客の声を自社の戦略を取り入れてみてください。
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<参考>
思考停止ワードになっていませんか?「顧客の声に耳を傾けましょう」は正しいのか?(preneur-preneur)
顧客の声は聴きすぎてもダメ?失敗しないためのコンテキスト思考のススメ(ウェブジェネ)
イノベーションのジレンマをわかりやすく解説|事例に学ぶ2つの解決策(Finch)