マーケティング関連の職種にはさまざまなものがありますが、その1つに「リサーチ・アドミニストレータ―」という職業があります。
しかし、リサーチ・アドミニストレーターは誕生して間もない新しい職業であることから、初めて耳にするという人も多いでしょう。
身近にリサーチ・アドミニストレータ―として働く人がいれば仕事内容について触れることもあるかもしれませんが、なかなか知り合うことが少ないリサーチ・アドミニストレーターという仕事。
この記事では、国の補助を受けながら少しずつ広まりつつあるリサーチ・アドミニストレータ―について詳しく解説します。
リサーチ・アドミニストレータ―とはどのような職業なのか、具体的な仕事内容や今後の展望を見ていきましょう。
- リサーチ・アドミニストレータ―という職業に興味がある人
- リサーチ・アドミニストレータ―の仕事内容が気になる人
- 今後のリサーチ・アドミニストレータ―の動向を知りたい人
はぜひ参考にしてください。
そもそもリサーチ・アドミニストレーターとは?
リサーチ・アドミニストレーターとは、高等教育研究機関で研究の運営や経営に関わる役員級職や上級管理職のことです。
高等教育研究機関の具体例としては、大学、研究所、企業などが挙げられます。
リサーチ・アドミニストレータ―は、URA(ユニバーシティー・リサーチ・アドミニストレーター)と呼ばれることもあるので合わせて覚えておくといいでしょう。
一般的な会社でいうと、執行役員やCTO(最高技術責任者)などプロジェクトやグループ全体の調整管理をするリーダーがリサーチ・アドミニストレーターといえます。
先に少し触れたとおり、リサーチ・アドミニストレーターは比較的新しく誕生した職業です。
リサーチ・アドミニストレーターという仕事が生まれた背景には、2004年度に実施された国立大学の法人化があります。
もう少し詳しくリサーチ・アドミニストレータ―の誕生した理由を説明していきましょう。
法人化が実施される以前は、文部科学省から公立大学に対して特別会計でお金が支給されていました。しかし、2004年度に国立大学が法人され、国からの運営費は一般会計から支出されることになったのです。さらに、人件費などのさまざまな費用を1年で1%削減するように要請されたため、たくさんの大学が競争資金の獲得に力を入れました。
とはいえ、研究に注力している大学はそれほど多くなく、Natureに若手研究者が減少していると掲載されることもありました。
文部科学省はこうした事態を脱却するために、リサーチ・アドミニストレーターを養成する仕組み(研究開発内容について一定の理解を有しつつ,研究資金の調達・管理,知財の管理・活用等をマネジメントする人材)を策定したのです。
文部科学省のリサーチ・アドミニストレータ―を育成・確保するシステムの整備のプログラム内容は次の図の通りです。
リサーチ・アドミニストレーターの仕事内容
リサーチ・アドミニストレーターの仕事内容は、非常に多岐にわたります。
一言でリサーチ・アドミニストレーターの仕事を表すと、研究環境を整えるために支援したり、発信したりする職業といえます。
大学によってリサーチ・アドミニストレーターが担当する仕事内容は異なりますが、例として東京農工大の活動状況を紹介します。
【マネジメント】
マネジメント業務の内容は幅広いものですが、具体例を挙げると次の通りです。
- プロジェクトの進捗管理
- 研究に必要な組織や設備などの準備
- 研究の財務や会計
- 研究成果の管理
- 研究の広報活動
【次世代研究攻略】
次世代研究攻略とは、将来、大学の価値を高めるような次世代的な研究の戦略を立てる仕事です。
東京農工大では、組織を加速させる戦略を考えたり、推進をしたりなどの活動に力を入れています。
【重点研究戦略】
重点研究戦略とは、そのときに注力している研究に関する戦略を立てる仕事です。
プロジェクトを継続したり、継続したりするためにはどのような取り組みが必要かを考えます。
京都大学のリサーチ・アドミニストレーターが携わる可能性がある仕事内容を一覧にすると次の通りです。
【研究企画・戦略(プレアワード)】
- リサーチディベロプメント業務
- プレアワード業務
【管理・運営業務】
- 報告書の作成支援
- プロジェクト評価の対応
- イベントに関連する業務
- 広報関連業務
- 予算管理業務
- 知財関連業務
- コンプライアンス・倫理
- 安全管理業務
以上のように、大学によってリサーチ・アドミニストレータ―が担当する仕事内容に大きな違いがあることが分かります。
リサーチ・アドミニストレータ―になろうと考えている人は、勤務したいと考えている大学ではどのような仕事が任されるのかを事前に確認しておくといいでしょう。
リサーチ・アドミニストレーターの現状と今後について
リサーチ・アドミニストレータ―は、高度な専門知識が必要な職業であり、修士以上の学位や研究支援分野の実績などが採用条件になっていることも珍しくなく、新卒では受け付けてもらえないケースも多いといわれています。
現状は、企業出身者や産学連携コーディネーターの経験者などがリサーチ・アドミニストレータ―として活躍しています。
国からの財政補助などを通じてリサーチ・アドミニストレータ―の定着を図っている段階ではありますが、今後はいろいろな大学でリサーチ・アドミニストレータ―が活躍することが予想されています。
現状の問題点として、現状のリサーチ・アドミニストレーターの評価は競争的資金を獲得できたか否かに焦点があたっていることが挙げられます。
もちろん、論文の数や外部からの資金の獲得額などは、短期的な評価軸としては有効です。
しかし、中長期的な評価方法を導入しなければ、リサーチ・アドミニストレーターを正当に評価するのは難しいでしょう。
例えば、大学のブランド周知や確立に貢献した場合や大学ランキングのアップに繋がったなどの事象を踏まえると、中長期的にリサーチ・アドミニストレーターを評価できるでしょう。
今後、どのようにリサーチ・アドミニストレータ―が広がりを見せるのか期待が寄せられます。
まとめ
リサーチ・アドミニストレータ―は大学で研究のサポートをしたり、結果を発信したりなどする職業です。
活躍するためには高度な知識が必要になるため、誰でも簡単になれるわけではありません。
誕生してまだあまり時間が立っていないリサーチ・アドミニストレータ―ですが、今後は全国各地の大学で活躍の場が提供されることでしょう。
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<参考>
- リサーチ・アドミニストレーター (URA) という職業を知っていますか?(Chem-Station)
https://www.chem-station.com/blog/2013/05/-ura.html - 京大の「実は!」Vol.21 「京都大学のURAの実は!」(京都大学)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/mm/jitsuha/140925.html - 大学職員の能力開発、スキルアップ(キャリアガーデン)
https://careergarden.jp/daigakushokuin/nouryokukaihatsu/ - リサーチ・アドミニストレーター(URA)を育成・確保するシステムの整備(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/ura/