マーケティング業務には、市場分析スキルが欠かせませんが、市場分析力を身につけるには、統計スキルが必要です。しかし、統計は苦手、という方も少なくないでしょう。
そこで、本記事では、市場分析をしたいマーケターに、無料で利用できる統計ソフトを紹介します。
初めての人におすすめ「HAD」
「HAD」は、関西学院大学教授の清水裕士氏が開発した、エクセルを利用した無料統計ソフトです。HADはエクセルで動くため、初めて統計ソフトを触る人も直感で操作することができます。
HADを用いれば、相関やクロス表などの基本的な統計解析から、分散分析、重回帰分析、因子分析、構造方程式モデル、混合分布モデルなどの多変量解析も可能です。HADの利用方法は以下のURLで紹介されています。
基本から応用まで対応できる「SAS」
SAS Institute社が提供している統計ソフト「SAS」。https://www.sas.com/ja_jp/learn/academic-programs/software.html
入門レベルの「SAS University Edition」と統計解析からデータマイニングや予測までできる「SAS OnDemand for Academics」があり、基本から応用まで、幅広く活用することができます。
SASの探索的統計解析ソフト「JMP」
SAS Institute社は、データの可視化が得意な探索的統計解析ソフト「JMP」も販売しています。こちらは30日間限定で無料で利用することができます。
マーケティング業務では、市場分析した内容をプレゼンすることもありますが、JMPを使っていれば、市場分析からプレゼン用資料の作成までシームレスに作業を行うことができます。
多機能の分析ソフト「R」
「R」は、The R Foundation(R財団)が公開、提供している無料の多機能分析ソフトです。
基本的な統計処理はもちろんのこと、最新版では機械学習のアルゴリズムも活用可能。
Rは「慣れると」エクセル感覚で使いこなすことができますが、「慣れるには」プログラミングの知識が少し必要です。データと関数を入力するだけでデータ解析をすることができ、グラフィック性能が高いため、クオリティが高いプレゼン資料をつくることが可能。
Rはさまざまな研究者やビジネスパーソンが利用しているので、インターネット上に解説記事がたくさん掲載されています。「頑張れば」という条件つきにはなりますが、Rを利用すれば、マーケターでも独学で統計ソフト・スキルを獲得することができるでしょう。
IBMの「SPSS」
IBMが提供する「SPSS」は、統計分析、予測分析、業務展開を可能にするソフトです。
SPSSでできることと機能は次のとおりです。
・統計分析
・機械学習アルゴリズムのライブラリー
・オープンソースの拡張性
・ビッグデータの活用、分析
・アプリケーションとの連携
ドラッグストアのマツモトキヨシホールディングスや青山学院大学がSPSSを導入しています。よりレベルの高い統計分析や市場分析を求めるマーケターは、最初からIBM製品を利用してもよいかもしれません。
ベイズ統計に強い「JASP」
The JASP Teamが無料提供している「JASP」は、「最強の無料統計ソフト」の称号を得ています。無料でありながら、差の検定、構造方程式モデル、回帰分析系、主成分分析、信頼性解析、二項検定、分割表分析、相関分析、探索的因子分析、記述統計、ANOVA、ANCOVA、反復測定ANOVAを実行できます。
JASPの特徴は次のとおりです。
・グラフィカル・ユーザー・インターフェースを採用していて、操作性が高い
・利用にあたってプログラム言語の知識をほとんど必要としない
・プレゼン資料や論文で使えるレベルの図表を簡単に作成できる
・ベイズ統計を簡単に実行できる
ベイズ統計とは、ベイズの定理をベースにした統計的概念のこと。標本を必ずしも必要とせず、データが少ない状態でも確率を算出することができます。
JASPの開発メンバーがつくった「jamovi」
「jamovi」はJASAを開発したメンバーがつくった無料統計ソフトです。
jamoviの開発コンセプトは「SPSSやSASといった高額な統計ソフトの代替になるソフト」であり、R言語をベースにして構築されています。SPSSとSASは無料版も提供していますが原則有料なので、無料で使いたい、という方はjamoviを活用すると良いでしょう。
番外編:エクセルで統計分析することについて
無料統計ソフト紹介してきましたが、多くの人のパソコンのなかに入っているマイクロソフトのエクセルでも、統計分析をすることができます。統計分析専用のソフトよりは機能が劣りますが、簡単な市場分析なら使い慣れたエクセルで実行したほうが簡単かつ正確に行えるかもしれません。
エクセルを統計ソフトとして使うには、以下の関数を使いこなす必要があります。
●AVERAGE関数(平均値を出す)
●MEDIAN関数(中央値を出す)
●GEOMEAN関数(相乗平均を出す)
●VAR.P関数(標本分散を求める)
●COVAR関数(共分散を求める)
これらは、エクセルの解説本を1冊買えば、独学で使いこなせるようになるはずです。
エクセルでは、相関係数、t検定、回帰分析などを実行できる分析ツールの利用もおすすめです。エクセルで統計分析に慣れてから統計専用のソフトを利用するというステップアップも「あり」かもしれませんが、本格的な市場分析スキルを獲得したいマーケターは、やはり最初から専用ソフトを使い込んでいったほうがよいかもしれません。
まとめ
無料統計ソフトは、そもそも無料提供を前提にしたものと、無料版で利便性を実感してもらって有料版に誘導するものの2タイプがあります。
統計処理に慣れていないマーケターは無料で使えるソフトを活用して、自社に合うもの、自分が使いやすいものを探してみると良いでしょう。
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