新商品開発 事例2

「定量調査と定性調査による新商品開発~本麒麟の事例~

世の中には、代わる代わる新商品が発売されていますが、新商品の開発は頭を悩ませるもの。なぜなら、知恵を絞って新商品を開発してもなかなかヒットしないことも多いからです。

新商品を開発するにあたって、重要となるのが「発想」ですが、企業の命運を当たるか外れるかわからないものに賭けるのはリスキーなもの。そこでおすすめなのが、定量調査と定性調査を使った、理論的な新商品開発です。

この2つの調査を駆使して大成功を収めた、キリンの第3のビール「本麒麟」の事例を紹介しながら、定量と定性の2つの視点の重要性を解説していきます。
定量、定性と聞くと難しい印象を持つかもしれませんが、まずは、定量は「データ」、定性は「声」ととらえておきましょう。


本麒麟開発まで苦戦


本麒麟は2018年3月に販売が開始された商品ですが、2019年2月には4億本販売を達成。これはキリンの過去10年の商品で最速でした。

しかし、本麒麟前のキリンは、第3のビール市場で苦戦。
2007年のサントリーの金麦、2008年のアサヒビールのクリアアサヒの猛追を受け、キリンは第3のビール首位の座をアサヒに明け渡します。キリンは12種類もの第3のビールの新商品を投入しますが、定着しなかったのです。

本麒麟が売れたのは「消費者の支持を受けたため」


なぜ本麒麟を開発することができたのか、を考える前に、なぜ本麒麟は消費者に受け入れられたのか考えてみましょう。その答えは「本麒麟は本物のビールのようにおいしいから、消費者が支持をした」ということ。

第3のビールを買う人の多くは、ビールを飲みたいけどお金を節約したいと考えています。したがって、ビールと同じくらいおいしいのに、価格が安い第3のビールをつくれば、売れるのは当たり前です。そして、この答えのなかに、定性調査と定量調査が隠れているのです。

なぜ本麒麟の前にビール並みにおいしい第3の


ビールが生まれなかったのか価格が安い第3のビールがビール並みにおいしければ、売れるのは当然のこと。では、なぜキリン以外の他社は、そのような商品をつくらなかったのでしょうか。また、キリンもなぜ、本麒麟の前にビール並みの第3のビールを開発することがなかったのでしょうか。


その理由は、第3のビールでビール並みの品質を出すことは、リスキーだからです。第3のビールでビール並みの味を出すには、コストがかかり、さらに、ビール並みにおいしい第3のビールを出せば、ビールが売れなくなります。

つまり、ビール並みにおいしい第3のビールをつくることは、自分の首を二重に絞めるようなものであり、「売れるのが当然の商品」でも没とされるのです。
「売れると分っているけれど開発に至らない。」これは仕方のないこと。

なぜなら、企業が新商品を開発するのは、今より収益を増加させ、経営を安定させるためだからです。新商品の良いアイデアが浮かんでも、それを開発し販売した結果経営が不安定になってしまうのであれば、採用されることはない、といえるでしょう。

定量調査と定性調査で「いける」と判断した


ビール並みの第3のビールが、ビール会社の首を絞めるような商品であれば、なぜキリンは本麒麟の開発と販売に踏み切ったのでしょうか。それは、定量調査と定性調査をした結果、「いける」と判断できたからです。

第3のビール市場での起死回生を狙ったキリンは、ヒットせずに失敗した12種類の商品のデータを徹底的に洗い出し、敗因を分析しました。これはデータを活用した分析であり、定量調査と呼ばれます。

キリンが定量調査を行った理由は、失敗を繰り返さないため。売り出した新商品が失敗に終わるのは、その新商品に「失敗する要因があり、成功する要因が無かった」ためです。

失敗した過去の商品のデータを洗い出せば、その「失敗の要因」を知ることができますが、「成功する要因」を知ることはできません。そこで有効なのが定性調査です。

キリンの本麒麟開発チームは、顧客に直接会って、第3のビールに求めるものと、本麒麟の試作品への感想を求めました。これは、顧客の声を聞くものであり、定性調査と考えることができます。

本麒麟開発チームは、従来の10倍近くにのぼる顧客の声を聞きました。その結果、顧客が低価格で本格的な味を求めていることがわかったのです。


反対意見があっても調査で裏付けされた商品は


成功する本麒麟の開発者は、マスコミのインタビューで「売れる商品が、事前に反対されなかったことはない」と語っています。ビール並みの第3のビールの開発にはコストがかかり、ビールの売れ行きを脅かす可能性があるため、キリンの経営を不安定にするリスクがありました。

そのため、経営陣の中でも反対意見があったのです。キリンの経営者なら「ビール並みの第3のビールを販売すれば売れるのはわかっている。

でも経営リスクがあるからやりたくない。だから他社もやらないのだ。だからうちもやらない」と考えたくなるでしょう。しかし、ビール並みの第3のビールを販売しても、経営リスクがないことがわかれば、「開発・販売する」と判断できます。

キリンは、本麒麟の開発にあたって定量調査と定性調査を徹底したことにより、ビール並みの第3のビールが経営を圧迫するどころか、経営にプラスに働くと判断することができたのです。新商品の開発では、定量調査と定性調査を行うことが重要であるといえるでしょう。

定量調査とは


定量調査は
●数値化できる情報を集める
●集めたデータを数値化する
●データの信頼性を高めるために、多くのサンプルを集める
●時系列で数値を追う
●統計的な手法を使ってデータを処理する
と定義されるもの。

新商品の開発にあたって定量調査をしておけば、経営陣から「なぜそのような商品コンセプトにしたのか」と質問されたとき、「データと数値から導き出しました」と答えることができます。正しい方法で集めたデータと数値は誰も覆すことができないので、定量調査に基づいて企画された新商品の開発を中止させることはほとんどありません。


ただし、定量調査でわかることは調査をした時点のことであり、開発前のこと。したがって、失敗を繰り返さないことはできても、成功の道に進めるということが約束されているわけではない、ということを念頭に置いておくことが大切です。

定性調査とは


定性調査は
●調査対象者(客)の声や行動を集める
●観察者がみた状態をそのまま記録して資料にする
●文章や画像など、数値化できない情報を集める
●調査対象者は少なくてもよいが、その代りじっくり聞き取る
と定義されるもの。

世の中が、データや数値のとおりに回らないことは誰でも知っていることであり、マーケティングでは、アンケート調査をした100人が「買う」と答えているのに、商品化したらまったく売れないということも起こりえます。逆に、アンケート調査で「買わない」という声が圧倒的だったのに、商品化したらヒットすることも。

これは、データや数値が間違っていたと判断することもできますが、むしろ、データや数値は、集める人や集め方によって変化する傾向がある、と考えておくべきでしょう。正しい方法で集めたデータと数値は揺るぎないものですが、間違った方法で集めたデータと数値は意味がありません。定性調査の結果の正しさを、定量調査の結果で支持できることが理想です。

まとめ


新商品開発では、定量調査も定性調査もどちらも重要です。メガヒットを打ち出す商品には「発想」も欠かすことができない要素ですが、定量調査と定性調査を実施したうえで、発想を重視する、または、思い浮かんだ発想について定量調

査と定性調査を実施し、その発想の確度を測ってみるとよいでしょう。
当てずっぽうに冒険するのではなく、リスクを減らしてから冒険すればよいわけです。

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<参考>
キリン本麒麟を生んだマーケター「売れる商品に社内の反対はつきもの」

定量調査と定性調査