【マーケティングの神髄】迷路に入ったら基本に戻ろう

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マーケティングは深い森です。いくらでも新しい発見ややりがいがみつかるので、どんどん森の深部に入っていってしまうでしょう。しかし闇雲に森のなかを歩きまわるだけでは道に迷って、自分の立ち位置を見失ってしまうかもしれません。

「マーケティングのためのマーケティング」をしている人も少なくありません。そのような状態に陥ったら、基本に立ち返りましょう。

マーケティングとは「商品を多く販売すること」であり「販売を不要にすること」であり「ニーズに応えて利益を上げること」です。

巨匠たちが唱えたマーケティングを思い起こそう

マーケティングはmarketingと書きます。動詞「market(品物を市場に出す、品物を市場で売る)」の現在分詞です。したがってマーケティングを無理やり日本語に訳すと「市場すること」となるでしょう。

マーケティングの迷路に迷ってしまう人は、「市場すること」を忘れてしまったのではないでしょうか。市場とは、モノやサービスを売り買いするすべての場所を指します。しかし、マーケティングが進化して拡大したことで、さらにもうひとつ、机上の市場や理論上の市場が誕生しました。正しいのは理論上の市場なのだから、リアルの市場を理論に合わせようとするマーケターも散見されます。これが「マーケティングのためのマーケティング」で、本末転倒な行為です。

マーケティングの壁に直面した人は、理論上の市場を一度きっぱりと忘れ、モノやサービスを売り買いするリアルな現場としての市場に戻ったほうがよいでしょう。

そのためには、マーケティングの3人の巨匠の言葉を思い起こす必要があります。セルジオ・ジーマン、ピーター・ドラッカー、フィリップ・コトラーの3氏です。

彼らは次のようにマーケティングを定義しています。

市場規模

商品を多く販売すること

コカ・コーラのマーケティング最高責任者などを歴任したセルジオ・ジーマン氏は、著書「そんなマーケティングなら、やめてしまえ!マーケターが忘れたいちばん大切なこと」のなかで、マーケティングを次のように定義しています。

・マーケティングを行う唯一の目的は、より多くの人々に、より高い頻度で、より多くのお金を使わせ、自社商品を買ってもらい、利益を上げることである

とても力強い言葉に感じるでしょう。それはキレイごとをいっていないからです。

マーケティング業務に迷ったら、自社製品を使って1)多くの客を集めること、2)客に何度も買わせること、3)客に多くのお金を使わせること、に注力すればいいのです。

マーケティングでは市場分析や客の声を聴くことや製品やサービスの改良や広告も重要ですが、そのすべてが、1)2)3)を高めなければなりません。

販売を不要にすること

ドラッカー教授は著書「マネジメント【エッセンシャル版】」で次のように述べています。

・マーケティングの理想は、販売を不要にすることである

マーケティングを学んできた人で、この言葉を知らない人はいないでしょう。したがって、そのような人たちは、この言葉を否定することはありません。

しかし、マーケティングを習ったことがない、若いアルバイトの販売員に「君の仕事は販売せずに商品を売ることだ」とアドバイスしたら、「それができたら苦労しません」と胸の内で思うでしょう。

若いアルバイト販売員の愚痴は100%正解です。マーケティングから販売を除外することは、並大抵の取り組みでは実現できません。何の仕込みもせず企業から販売部門を消し去ったら、途端に売り上げ不振に陥るでしょう。

つまり、販売を不要にするマーケティングを構築するには、「相当な準備」が必要になります。

ドラッカーは、顧客と顧客でない人に聞け、とアドバイスしています。そして大抵のマーケターたちは、顧客に聞くことはできていても、顧客でない人に聞くことまでは手が回っていません。顧客でない人たちにリーチする手段を持っていないからです。

しかし顧客でない人たちこそ、商品やサービスの欠点や、商品やサービスを買うきっかけを知っています。それを聞き出すことが、マーケティングの重要な仕事のひとつになります。

ニーズに応えて利益を上げること

コトラー教授の助言は、ドラッカー教授より親切です。コトラーはこう言っています。

・マーケティングとは、ニーズに応えて利益を上げることである

なぜこの短い言葉が親切なのかというと、2つしかやることを指示していないからです。

マーケターたちは、顧客のニーズを探し、それに応えられるように準備しなければなりません。

そして顧客ニーズを検討しつつも、自社の売上と利益を優先していかなければなりません。

コトラーが顧客のニーズを重視するのはわけがあります。コトラーはビジネスを次のように定義しています。

・ビジネスの本質は人々に役に立つことを提供することである

コトラーもジーマンも、マーケティングをする目的は利益を上げることである、と述べています。しかしコトラーのほうが高尚です。「利益を上げさせてもらっている人々の役に立つこと」を考慮しているからです。

これも、重要なマーケティングの基礎です。

マーケティングは、単なる金儲けの手段ではありません。人々や顧客の幸せを実現しなければ意味がないのです。

マーケティング戦略の流れ

マーケティングは、次の手順で進めます。( )内は担当者が実行すべきことです。

・市場調査

(ニーズ調査、既存商品の問題点調査、新サービスの反応予測)

・セグメンテーション

(顧客をセグメント(顧客集団)にわける)

・ターゲティング

(どのセグメントを狙うか定める)

・ポジショニング

(目標とする市場でのポジションを定める、プライスリーダーになるのか、他社と差別化を図るのか)

・マーケティングミックス

(製品開発、販売チャネルの構築、広告、価格設定)

・実行

(マーケティングミックスで決めたことを実行する)

・管理と評価

(進捗状況を把握して、計画通りに進めたり、改善点を探したりする)

さて、マーケターやマーケティンググループの社員たちは、上記の( )内の仕事を進めるわけですが、このとき一つ一つの仕事を独立した仕事と考えないでください。マーケティングの仕事は、例え今はまだ一部の仕事しか任されていないとしても、全体の流れ意識しながら臨むとよいでしょう。

そして常に、3人の巨匠が唱えたマーケティングの神髄を思い出すようにしてください。

マーケティングの成功事例

マーケティングの成功事例として、スターバックスとユニクロが取った手法を紹介します。

スターバックスの手法

多くの日本人はアメリカンスタイルが大好きで、アメリカの食べ物、アメリカの映画、アメリカのバイクを買います。しかし、本国アメリカでヒットしながら、日本人が受け入れなかったものも多数あります。

日本人消費者が、闇雲にメードインUSAを手に取ることはありません。日本人が買うアメリカ製は、巧みにマーケティングされたものに限られているのです。

したがってスターバックスが日本でこれほど成功したのは、同社が「日本仕様のシアトル・スタイル」を日本に輸出したからです。

スターバックスコーヒージャパン株式会社(スターバックスの日本法人)は、テレビコマーシャルなどのマス広告を打ちません。なぜなら、日本のスターバックスはイメージ戦略を必要としないからです。

このように紹介すると、「スターバックスには、和製コーヒーチェーンとは異なるスタイリッシュなイメージがある」と反論したくなるかもしれません。しかし「スターバックスでコーヒーを飲むことは格好いい」という評価は、イメージではなく印象なのです。つまり、スターバックスを格好いいと思っている人は、少なくとも一度はスターバックスの店でコーヒーを飲んだことがあり、そのときの自分が好きなのです。

そしてスターバックスは、顧客がコーヒーを飲んでいる自分を好きになるように、店を演出しているのです。だからコーヒーの価格が近隣の喫茶店より高額であっても、顧客たちは気にせずスターバックに入っていくのです。

スターバックスコーヒージャパンのデジタル戦略本部長は、メディアのインタビューに対し「顧客とつながるために最も重要で大きなチャネルは店舗そのもの」と話しています。

イメージ戦略を取らずによい印象を消費者に植え付け、少し割高なコーヒーを飲む動機付けをしているスターバックスは、マーケティング巧者ということができます。

ユニクロの手法

ユニクロは「マーケティングの塊(かたまり)」と評してもよいほど、マーケターが参考にすべき手法を沢山持っています。

ここで注目したいのは安さと高級感を同居させた戦略です。

ユニクロがその名をとどろかせたのは、格安フリースでした。防寒着の高級素材として認知されていたフリースを中国で大量生産し、消費者に「もう少し高い値段でも買うのに」と感じさせるほど安い価格で売りまくりました。

現在のユニクロは、その下にGUというさらに安いブランドはありますが、それでも安い服を売り続けています。

しかし最近のユニクロの出店先には、東京・銀座やスペイン・バルセロナ、イギリス・ロンドンといった世界の一等地も含まれています。また、ユニクロのテレビCMに起用されるタレントは、一流の人ばかりです。

ユニクロは安い服を買う人たちに、惨めな思いをさせないことに成功しました。高級ブランドファッションとも、チープファッションとも異なる、ユニクロ・ファッションを確立しました。

ユニクロを運営する株式会社ファーストリテイリングは洋服という製品については1円単位でコストを見直す一方で、広告には惜しみなく資金を投じます。この製品ラインナップとマーケティング戦略の「矛盾」がユニクロのオリジナリティをつくり、顧客の信頼を勝ち得ているのです。

まとめ~理論ではなく実践

マーケティング理論はとても興味深い内容です。しかし理論にばかり没頭していては、肝心の顧客と製品とサービスを見失ってしまいます。

マーケティングの仕事は、常に現場で展開されます。現場とは市場のことです。マーケティングに迷っているのに、いつまでも社内にいては何も答えは見つかりません。「実践あるのみ」です。

 


<参考>

  1. マーケティングの理想は販売を不要にすることである(ダイヤモンドオンライン)
    https://diamond.jp/articles/-/16444
  2. 第1回:マーケティングとは『ニーズに応えて利益を上げること』(帝国データバンク)
    https://www.tdb.co.jp/knowledge/marketing/01.html
  3. マーケティングの基本手順(みらいアーチ・コンサルティング)
    https://www.miraiarch.jp/column/marketing/marketing/
  4. スターバックスが考える“スターバックスらしさ”とは何か(Insight for D)
    https://d-marketing.yahoo.co.jp/entry/20180821525192.html
  5. そんなマーケティングなら、やめてしまえ!―マーケターが忘れたいちばん大切なこと(アマゾン
    https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478501734/creativehokka-22/ref=nosim/