新人マーケッターは、今日中にマーケティングの4つのPを覚えてしまいましょう。以下のとおりです。
単純なワードなので、覚えることは簡単です。
しかし4Pにはマーケティングの基礎がびっしり詰まっているので、しっかり理解する必要があります。
そして1日も早く、マーケティングの実務で4Pを使いこなせるようになりたいものです。
4Pとは
マーケティングの開始から完了までの間には、以下のように6段階のプロセスがあります。4Pはそのうち、マーケティング・ミックス(5段階目)で使います。
<マーケティングのプロセス>
1段階:環境分析や市場調査
2段階:セグメンテーション(市場を細分化する)
3段階:ターゲティング(市場の選定)
4段階:ポジショニング(選定した市場内で居場所を築く)
5段階:マーケティングミックス(4Pの選考)
6段階:マーケティングの実行と評価
マーケティングミックスでは4Pを選考しますが「4Pを選ぶ」とはどういうことなのでしょうか。
4Pとは、製品、価格、流通、販売促進でした。例えば製品の選考を考えてみます。
マーケティングを開始した当初、プレミアム感がある製品を売り出すことを決めたとします。しかし、市場を調査してポジショニングまで終わったとき、「このデフレの時代にプレミアム製品は売れない」ことがわかったとします。このとき、このままプレミアム製品を売り出すのはとてもリスキーです。そこで売り出す製品をいちから考え直す必要が出てきます。
これが製品の選考です。
もちろんこのケースは、経営判断が必要になる一大事です。つまりこの事例だけでも4Pの重要度が理解できると思います。
マーケティングには多額の費用がかかります。しかもマーケティングに失敗すると、本業のビジネスに打撃を与えてしまいます。4Pの選考は、マーケティングの実行(6段階)を決める重要な過程なのです。
企業の成功事例を4Pで分析してみる
それでは実際の成功事例について4P分析をしてみましょう。
コンビニチェーンのセブンイレブンが2013年1月に、セブンカフェを始めました。ホットコーヒーやアイスコーヒーを「100円で売るだけ」のビジネスですが、これが空前のヒット商品になりました。セブンカフェスタートから2019年2月までに50億杯も売り上げたのです。
「日本一のコンビニがコーヒーを本気で売り始めたのだから、ヒットするのは当たり前」とは考えないでください。セブンカフェを4P分析をすると「4Pがしっかりしていたからヒットした」ことがわかります。
<セブンカフェの4P分析>
製品:本格的なドリップコーヒー
価格:100円(本体93円、消費税8%7円)
流通:コンビニでカップを売り、客自身にコーヒーマシンを使って淹れてもらう
販売促進:ついで買いを誘う
注目すべきは、製品と価格です。セブンイレブンは、本格ドリップコーヒーを破格の100円で売ることを決めたのです。それは、その2つの要素がなければ売れないと考えたからです。
国内のコーヒー市場は飽和状態にあります。おいしいコーヒーを飲みたければ、スターバックスやドトールコーヒーなどがあります。気軽に飲みたければ缶コーヒーがあります。
そのなかでセブンカフェを埋没させないためには、本格的な味と破格の価格が必要でした。
そこでセブンイレブンはこの製品とこの価格を実現するために必要なことは何か、と考えたのです。
それが流通と販売促進の選考に現れています。
店員がコーヒーを淹れたのでは、人件費がかかってしまうので、100円では売ることができません。そこで客に淹れさせることにしました。その結果、コーヒーを売るときに空コップを売るという、前代未聞の販売方法が考案されました。
そして100円では利益がほとんど出ないので、セブンイレブンではサンドイッチのついで買いやスイーツのついで買いをさりげなくPRしました。コーヒーとサンドイッチとスイーツは、どれがメーンでどれがついでということはありません。つまり、サンドイッチを買いに来た客がコーヒーを買うこともありますし、コーヒーを買いに来た客がサンドイッチを買うこともあります。
おいしいコーヒーを格安で売ることでサンドイッチやスイーツの販売量が伸びれば、セブンイレブンとしては売上高も利益も増やすことができます。
そしてセブンカフェは成功しました。これは4P分析が見事にはまった事例といえます。
実務では4Pをこう使おう
4Pはマーケティング実務ですぐに使うことができます。
4Pの選考に入ったということは、「4段階:ポジショニング(選定した市場内で居場所を築く)」が終了しているはずです。したがってすでにターゲットとなる市場や顧客についての知識が大分蓄積されている状態にあります。
冒頭で製品の選考について解説したので、ここでは価格と流通と販売促進の実務について考えていきます。
新製品以外のマーケティングでは、価格の選考は最も重要になるでしょう。消費者はほとんどすべての商品やサービスについて、価格を最初にチェックします。そして、購入意欲が高まっていて、品質に問題がない場合でも、販売価格が想定価格を上回ったら、購入しないことが多々あります。
マーケティングの実務では、価格について「主婦の肌感覚」を持つようにしましょう。食品や化粧品など、女性が選択権を持っている商品だけでなく、自動車や男性向けシャンプーや旅行といった男性や家族全体に選択権がある商品やサービスでも「購入の決定権」は主婦や妻にあることが多いからです。
流通は現在では、チャネルと呼ばれることが増えてきました。それは流通経路や流通手段が格段に増えたからです。
したがって新人マーケターは、まずは流通経路と流通手段についてひとつでも多く知っておく必要があります。例えば、ネット店舗で売っていた商品をリアル店舗で売ったり、リアル店舗で売っているものをネットで販売したりする検討は欠かせません。
最後に販売促進ですが、一般広告からSNSへのシフトを検討しましょう。マーケティングをしていくなかで広告代理店と打ち合わせをすることがあると思いますが、一般広告だけでなく、SNSを活用した販売促進戦略も提案してもらいましょう。
そして理想は、マーケター自身がSNS戦略を考えられるようになることです。そのためには、フェイスブック、ユーチューブ、インスタグラム、ライン、ツイッターといった定番SNSは自身で使いこなせるようにしておくとよいでしょう。
4Cも覚えておこう
マーケティングの4Pには、4Cという進化版があります。4Cは次のとおりです。
・カスタマー・バリュー(顧客価値)
・コスト(顧客にとっての経費)
・コンビニエンス(顧客の利便性)
・コミュニケーション(顧客との対話)
4Cのポイントは
1)顧客が付くこと
2)4Pと同じ「4」であること
以上の2点です。
4Pは、どちらかというと自社目線やマーケター目線でマーケティングを進めていく手法です。一方の4Cは完全に顧客目線に立ちます。
そして4Cも4Pも「4」です。これは、4Cが次のように4Pに対応しているからです。
・顧客価値:製品
・顧客経費:価格
・顧客利便性:流通
・顧客対話:販売促進
新人マーケッターは、4P的思考を身につけたら、次に4C的思考を身につけたいものです。先ほど「主婦の肌感覚」で価格を決める手法を紹介しましたが、その他にも「大学生の肌感覚」や「趣味に年100万円を費やすことができる人の肌感覚」といった顧客目線も必要になるでしょう。
まとめ~まずは基本に忠実に
マーケティング理論は市場の成功事例があり、それを経済学者たちが分析して確立しました。そして現代に残っているマーケティング理論は、実ビジネスで応用されてさらに磨きがかかっています。
4Pもそのように先人たちが磨きに磨き上げた理論であり、実践での指針といえます。
マーケティングを始めたばかりの人は、まずは基本に忠実に4Pや4Cをひとつひとつ確認しながら仕事を進めていってはいかがでしょうか。
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<参考>