マーケティングの作業メニューは多岐に及ぶため、これまで体系的にマーケティングに取り組んでこなかった企業が本格的にマーケティングを始めるとき、まずなにから着手するのかを決めなければなりません。
その回答のひとつが、カスタマージャーニーマップの作成です。
カスタマージャーニーマップとは、カスタマー(顧客)の行動と感情を追跡してマップ(地図)に描き起こすことで可視化したものであり、カスタマージャーニーマップの作成は、マーケティングの効果が出ない企業にも有効です。
なぜなら、顧客を正確に追跡できていないことでマーケティング戦略が空振りしているのかもしれないからです。
マーケティングの効果を高めたい企業は、まず、カスタマージャーニーマップをつくって顧客を知りましょう。
カスタマージャーニーマップとは
まずはカスタマージャーニーマップそのものをみてみましょう。
コンビニ向けスイーツを開発している洋菓子メーカーが作成した、との想定でカスタマージャーニーマップをつくってみました。
カスタマージャーニーマップの特徴は、顧客の動きを「時間の経過」と「顧客の状態」の2方向から追跡しているところです。
つくり方
カスタマージャーニーマップのつくり方を紹介します。
まず縦軸に顧客の状態を取り、横軸に時間の経過を取ります。
顧客の状態は時間の経過ごとに分析します。
分析項目は、
- タッチポイント
- 行動
- 感情
- 課題
- 解決策
の5つです。
時間の経過は、顧客がスイーツの検討を始めてコンビニで新スイーツを購入するまでを分割。
表ができたら、特定の時間ごとの顧客の状態を埋めていきます。
この埋める作業はとても重要なので、後で詳しく解説します。
顧客が検討を始めてから購入するまでには、一定の時間がかかりますが、この時間が長引くと顧客の離脱する確率が高まってしまうため、スイーツの開発メンバーはこの時間を短くすることを目指すと良いでしょう。
表のマスを埋めるにはカスタマーインタビューが必要
表のマスを埋めるには、カスタマーインタビューを行う必要があります。
カスタマーインタビューは、顧客に直接質問する方法をはじめ、アンケートやネットでの調査も有効です。
顧客の生の声や実際の行動を収集しないことには、カスタマージャーニーマップは有効に機能しません。
上記のカスタマージャーニーマップはモデルなので1マスに1~2項目しか入れていませんが、実際は大量に情報を盛り込んでいくことになります。
カスタマーインタビューをした顧客1人につき1枚のカスタマージャーニーマップを作成してもよいでしょう。
カスタマージャーニーマップをつくる目的
カスタマージャーニーマップをつくる目的は、
- 顧客を追うこと
- 顧客の状態を見える化すること
の2つです。
なぜ「顧客をつかまえる」ではなく「顧客を追う」なのか
カスタマージャーニーマップの目的は顧客を追うことであり、顧客をつかまえることではありません。
もちろん、マーケティングの最終目標は顧客をつかまえることですが、カスタマージャーニーマップを作成するときは「つかまえよう」という意識は「邪念」になりかねません。
顧客を追うイメージは「尾行」です。
刑事が容疑者をつかまえるには、まずは容疑者を尾行して生活サイクルを把握して逮捕のタイミングを探る必要があります。
このとき刑事は、容疑者を自由に行動させます。
そうしないと本当の生活サイクルがみえてこないからです。
カスタマージャーニーマップを作成するときも、カスタマーインタビューをするときも、顧客を自由にしておかなければなりません。
顧客の自由な購買行動を表に書き写すことが、カスタマージャーニーマップ作成の目的になります。
顧客獲得戦略の立案は、その次に検討します。
なぜ顧客の状態を見える化する必要があるのか
カスタマージャーニーマップは、まさにマップ(地図)です。
地図があれば、誰でもA地点からB地点に移動することができますが、カスタマージャーニーマップも同じで、これさえつくっておけば、マーケティングチームのメンバー全員が課題に集中できます。
例えば先ほどのコンビニ向けスイーツ開発のカスタマージャーニーマップに、こうありました。
コンビニ来店 | |
課題 | どうしても定番商品を手に取ってしまう |
これは、顧客が新しいスイーツを探し求めてコンビニのスイーツコーナーの前に立ったものの、つい、大福やシュークリームなどの定番商品に手が伸びてしまう課題を明記したものです。
このように見える化しておけば、新スイーツのコンセプト担当者もメニュー担当者もパッケージデザイナーも、この課題を解決する方向で自分の仕事に取り組むことができます。
追う顧客像がメンバーによって異なっていては、いつまで経っても顧客の追跡が終りません。
カスタマージャーニーマップの利用方法
カスタマージャーニーマップはツールであり、この完成がゴールではありません。
では、カスタマージャーニーマップをどのように利用したらよいのでしょうか。
カスタマージャーニーマップがあれば、顧客の行動や感情、志向、不満を俯瞰することができます。
マーケターは得てして、マーケティングのためのマーケティングに陥りがちですが、本来は、売上増につながるマーケティングに徹しなければなりません。
もし、マーケティングが隘路(あいろ)にはまり込んでしまったら、カスタマージャーニーマップを見直してみるとよいでしょう。
また、カスタマージャーニーマップがあれば、対策を講じる際の優先順位をつけることができます。
再び、新スイーツ開発のカスタマージャーニーマップの一部を抜き出してみます。
情報集め | コンビニ来店 | |
行動 | ①スイーツの種類を探る | ②コンビニのスイーツコーナーをみる |
感情 | ③「多少割高でも質の高いものを買いたい」 | ④「種類が多くてわくわくする」 |
新スイーツ開発チームやマーケターは、この4つの顧客の状態からマーケティング戦略を打ち出していかなければなりませんが、4つを一気に進めることはできません。
そこで例えば、④「種類が多くてわくわくする」にフォーカスすれば、新商品は1種類のみつくるのではなく、風味を変えたり量を変えたりして数種類つくる方法が考えられます。
そして実際に数種類つくって販売したものの、コスト高になって利益が出ないことがわかれば、次は③「多少割高でも質の高いものを買いたい」にフォーカスすることで、食材と製法にこだわった高級路線を打ち出す、という流れです。
カスタマージャーニーマップにはマーケティングのヒントが隠されています。
つまり、マーケティングのヒントになる情報をカスタマージャーニーマップに盛り込まなければなりません。
まとめ~まさに道しるべ
カスタマージャーニーマップは単なる地図ではなく、道しるべになるものです。
マーケティングには顧客を誘導する方法もありますが、顧客の動きに合わせて商品・サービス開発をする手法も有効です。
カスタマージャーニーマップは後者のマーケティングに欠かせない資料となるでしょう。
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