雪山 FWTジャパン株式会社 後藤陽一

世界の注目を集める日本の雪山 、雪質はワールドクラス FWTジャパン株式会社代表の後藤氏にインタビュー

スタートアップ企業や新しい取り組みにチャレンジする人にインタビューしていく連載企画。第10回のゲストはFWTジャパン株式会社代表の後藤陽一さん。

自然の山を滑り降りるスキーとスノーボードの世界選手権「Freeride World Tour」を日本で展開する元電通マンで日本の雪や観光資源を世界に発信している。後藤さんが日本で手掛ける世界大会についてお聞きしました。

編集部:
本日のゲストはFWTジャパン株式会社 代表の後藤陽一さんにインタビューしていきたいと思います。

Q: 早速ですが、後藤さんの経歴を教えて下さい。

yoigoto:
2011年に電通に入りまして最初は地方テレビ局とか車のメーカーの営業をしていたんですけども入社4年目から新規事業の開発とかリサーチといった業務に関わるようになりました。

大学時代は体育会テニス部に所属していたり、スポーツビジネスの勉強をしに京都大学の大学院時代にIOCの本部があるスイスのローザンヌにスポーツビジネスを勉強しに行っていたこともありスポーツのビジネスに何か関わりたいと思っていたので、新規事業の分野もスポーツビジネスで何かできないかというのを色々考えていました。

そんな時にたまたまインターネットで自然の山を滑り降りるスキーとスノーボードの世界選手権「Freeride World Tour」の映像をみて感動して、4歳の頃から父親の別荘のある白馬でスキーをやっていたこともあって、白馬にこの世界大会を誘致できないかな、とおもってプロジェクトをはじめました。

編集部:
大学でスポーツビジネスでスイスに留学、その後電通で新規事業開発、リサーチ、そして、現在はスキーとスノーボードの世界選手権「Freeride World Tour」の日本展開をされているわけですね。とても興味深いキャリアですね。

Freeride World Tour (フリーライドワールド・ツアー)とは?

編集部:
Q: フリーライドワールド・ツアーとはなにか教えて下さい。すごそうなイベントですね。

yoigoto:
フリーライドワールドツアーというのは世界で予選とかジュニアの大会を見ると年間100大会以上イベントを行っている競技団体なのですがそのトップの5大会のイベントを開催するには非常に急な山の斜面と大量の積雪がなくてはできません。

2016年に実際にスイスから白馬の山を視察に来てもらったところ、「世界でもこれほどの山はない、白馬は素晴らしい山だ」というようなことを言ってもらってトップの5大会を実施するために動き出しました。

非常にスポンサー獲得が難しいエクストリームスポーツのコンテンツで、スポンサー企業がなかなか集まらなかったんですが、2017年の1月にプレ大会に当たる予選の大会を白馬で開催しました。

また2018年の1月にはトップの大会を内閣府の地方創生加速化交付金の支援もあって白馬村で実施を決定する事もできました。

それで2017年末に日本にフリーライドワールドツアーの支社ができるということになって、立ち上げメンバーとしても、いちスポーツビジネスのマーケターとしても、ポテンシャルを感じました。そこで思い切って日本支社の代表として、日本およびアジアの事業に専念することにしました。

編集部:
おぉ、これがフリーライドなんですね。崖の急斜面から、スキー、スノボで滑っていくエクストリームスポーツですね。めちゃくちゃカッコイイですね。

yoigoto:
フリーライドというのは非常に定義が難しいです。自然の山だけじゃなくて実はゲレンデの中を滑るっていうこともヨーロッパの中ではスキー場とそのスピードの外の境界が非常に曖昧なこともあって、そこもフリーライドに含めます。

ただ日本ではバックカントリーという言葉と一緒に使われることが多くて一般的にはスキー場の外の山を少し歩いたりしながら雪山を滑るということを指します。

 freeride WORLD TOUR って言うのは簡単にいうとそのフリーライドを誰が一番うまくてかっこよく滑るかを決める大会です。

フリーライドは

1.スタートとゴールだけが決められていて、
2.選手がそれぞれ自分のスキルやスタイルに合った滑走ラインを選択し滑ります、
3.その滑りを審査員がが双眼鏡で見て採点をする、

という競技です。ウィンタースポーツで言うとアルペンスキーとかよりもハーフパイプとか、モーグルに近いイベントです。

編集部:
なるほど、まさにフリーなライドですね。審査員が双眼鏡でみて採点する所も面白いですね。とんでもないスポーツです。

yoigoto:
海外では、子どもから大人まで「フリーライド」をするのですが、競技という形で順位を決めて、国をまたいで世界一を決めるというのはFWTだけですね。

編集部:
成る程、海外では、子どもから大人まで「フリーライド」として競技を決めていくんですね。

エクストリームスポーツのフリーライドは海外でも人気

編集部:
Q: 日本ではまだフリーライドという言葉を聞いたことがなかったのですが、海外では人気なんでしょうか?

yoigoto:
世界では4000人選手登録されていて、予選・ジュニアの大会を含めると、年間100以上のイベントがあります。

ヨーロッパには20のスキースクールと提携していて、スクールのプログラムがあったり、アメリカには大学のスカラーシップまであります。

日本でも2017年、2018年と二回イベントをやって、既に200人近い選手が登録してくれています。来年は白馬以外にも5つほどのスキー場でジュニアや予選大会を実施したり、スキースクールのプログラムを実施する予定です。

編集部:
世界にそんな沢山の選手がいるんですね。しかも年間100以上のイベントがあるんですね。それは驚きです!!!

yoigoto:
日本人だと、バンクーバーオリンピックで、服装の件で話題になった(笑)國母和宏さんが世界的に有名です。競技には出ていないですが、素晴らしい映像をたくさん残してます。

編集部:
おぉー日本では國母和宏さんが有名なんですね。しかしこれまた映像がかっこよすぎます。

yoigoto:
スキーヤーでも、去年からFWTのトップ大会にワイルドカードで出ている楠泰輔さんが、世界的に注目されています。

編集部:
Q: この競技は怪我や事故などはけっこうあるんでしょうか?

yoigoto:
この大会は1996年にスイスで始まったのですが、それ以来競技のなかでは一度も死亡事故はありません。

スタートゲートにこの斜面を滑って降りれるドクターや、山岳ガイドが何人も待機していて、斜面の中腹にもレスキューが待機しているので、何かあればヘリも含め秒単位で駆けつけられます。

編集部:
なるほど、なんかあれば秒単位ですぐに駆けつけてくれるのですね。それは安心ですね。

yoigoto:
ただし、日本では「バックカントリー」という文脈で、事故が放送されて悪いイメージがついてしまっている部分もあるので、安全な楽しみ方も啓発していきたいですね。

日本の雪山、雪質は世界でもトップクラス

編集部:
Q: このFWTの大会は日本でももっと開催されていくのでしょうか?

yoigoto:
白馬の大会は、世界のトップ5大会の一つとして来年、再来年も開催されます。

その下の、予選やジュニアの大会を全国のいろんなスキー場でも開催すべく、山やスキー場をいろいろと視察しています。

編集部:
白馬の大会は世界でトップクラスなんですね、それは日本として誇らしいですね。

yoigoto:
まだ、スキー人口740万人のうち5%くらいしか「フリーライド」をやったことがないと言われているので、イベントで楽しさをPRして、スキースクールのプログラムも導入して、ステップアップ出来るような仕組みも作りたいですね。

編集部:
なるほど日本のスキー人口の5%しかやっていないんですね。このカッコイイフリーライドの競技がもっと増えるといいですね。

yoigoto:
日本でもフリーライドがもっと人気になれば、2022年の北京オリンピックに向けて国策としてスキー人口を増やしている中国からのインバウンド観光客も見込めます。また短い時間で手軽に、日本のパウダースノーを楽しんで貰えるようになると思っています。

編集部:
Q:日本の雪山は、他の国の比べなにか違いはありますか?

yoigoto:
日本は雪の質が良いことで有名です。観光庁がスノーリゾート活性化の委員会を立ち上げているのですが、そこで行っている調査でも、日本の雪質が素晴らしいというのがしきりに言われています。

http://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kankochi/snowresort-kentou.html

「JAPOW」(Japanese Powder Snow=日本のパウダースノー)という言葉あるくらいです。

編集部:
観光庁など政府も海外にアピールしているのですね。とても素晴らしい取り組みですね。

yoigoto:
これほど大量の雪が、海抜数百メートルの低い場所に積もるところは世界でもありません

編集部:
なるほど、そうなんですね。海外の人が日本にスノボやスキーに来ると聞いたことはあったんですが、それほどまで日本の雪が評価されているなんて知りませんでした。

yoigoto:
新潟の人などは、雪かきなどで雪を邪魔ものだと考えていますが、観光資源として考えた時にはものすごいポテンシャルがあります。
対談 アルペンスキーヤー 皆川賢太郎 × 代表 星野佳路 | 星野リゾート星野リゾートグループ代表・星野佳路がゲストを招いて旅の効能を探る対談連載。第2回目のゲストはアルペンスキーヤーの皆川賢太郎さんです。

星野リゾートの星野さんとかも、「中東の石油くらい価値があるのでは」と言ったりしています。

雪がお金を生み出しているんですよね。日本の雪には中東の石油くらいの価値があるかもしれないって僕はよく言うんです。

出典: 星野リゾート https://www.hoshinoresorts.com/mag/kounou/vol2.php

編集部:
なるほど、発想の転換ですね。海外を視野にいれると、ポテンシャルがあると。

「中東の石油くらい価値があるのでは」とても興味深いですね。その発想は無かった。

yoigoto:
それに加えて、白馬を含む北アルプスのエリアは、標高3000m級の急峻な山があり、私が写真をヨーロッパの人に見せたら、「これはアラスカの写真?」と間違われました。

雪と山は日本最強の観光資源の一つだと思いますね。

編集部:
それは日本としても海外にもっとアピールしていきたい所ですね。

yoigoto:
パウダースノーを海外にPRするのに、フリーライドほど良いコンテンツは無いと思っているので、将来的にはインバウンド観光に貢献したいですね。

編集部:
Q:海外からの日本へのスノボ、スキーの観光客の訪問者は増えているんでしょうか?

yoigoto:
「スポーツツーリズム」という言葉がありますが、ウィンタースポーツほど現状でそれを実践できるスポーツはあまりないのではないかと思ってます。

ニセコ・白馬など、既に世界的にブランド力のある場所は、だいたい過去3年で3倍位になっています。訪日外国人数自体が増えていますがその伸び率よりも高い割合です。

かつ、日本全体の訪日外国人数が、中国や台湾など近隣アジア諸国の増加数が多いのと比較して、雪を求めてくる人は単価の高いオーストラリアの人や、12時間位飛行機に乗ってやってくる欧米の人が多いのが特徴です。

ニセコの土地の8割が外国資本だったり、新潟のロッテアライリゾート、北海道のキロロリゾートやトマム、岩手の安比高原など、外国資本が入ってくるスキー場もどんどん増えています。

編集部:
なるほど、世界的なブランドを求めて、海外から沢山きているんですね。その中でもアジア(中国、台湾)の人も多く訪れているんですね。

「ニセコの土地の8割が外国資本」これは初めて知りました。。

yoigoto:
アジアの人はスキーのスキルがそれほど高くないので、「雪を見に来る」という方が多く、欧米オーストラリアの人は「日本の雪でスキーをしに来る」と、少し目的が違うのが特徴です。

編集部:
日本の雪、山、スノボ、スキーの施設が海外に誇れる素晴らい資源という事がよく分かりました。これは海外の人にもドンドンアピールしていきたいですね!!

海外に日本の雪、山の資源を海外にPRする後藤さん

編集部:

https://www.freerideworldtour.com/

Q: 後藤さんがFTWの日本の代表として、現在どんな取り組みをしているか教えて下さい。

yoigoto:
コンテンツを揃えるのと、マーケットの開拓の2つに大きく別れます。

コンテンツという意味では、いま幾つかの日本のスキー場とディスカッションを進めていています。それぞれのお客さんの層、これから獲得したい国内外のお客さん、リゾート内の山の大きさなどを考えています。

どのグレードのイベントをやるのが良いか、ヨーロッパで既にFWTの提携リゾートが実施しているスキースクールがそれぞれのリゾートでどのようなプログラムになるべきかなどを考えています。

それに並行してイベントのための審査員の育成やスクールのインストラクターの認定方法なども議論してます。

マーケット開拓は、日本でフリーライドをやったことのないスキー人口の95%、基礎スキーやアルペンスキー、フリースタイルスキーなどを楽しんでいる人にどのようにフリーライドの安全な楽しみ方があるのかを知ってもらうために、いくつかメーカーさんや小売店さん、などに、イベント協賛などを含めたPR施策などを提案していたりします。

その先を見据えて、中国のスキー場や中国のコンテンツ放送局とのディスカッションなども、はじめています。

編集部:
すでに実際に中国現地にいって、中国のコンテンツ放送局と協議しているとはかなり後藤さん、行動派ですね。

yoigoto:
ほかはダメ人間ですが、そこだけは時たまほめられます。笑

そして、今晩から中国行きます。(笑)

編集部:

なるほど海外からの誘致や施設との連携を含め、フリーライドをやったことのない人を巻き込んで行くんですね。とても興味深いですね。

yoigoto:
はい。フリーライドの文脈で見ると、リフトが一本しか無い小さなスキー場とかでも、とても魅力的なコンテンツになる可能性があります。東北とかには特に、そういった山が沢山あると思っています。

編集部:
Q: 中国のスキー場や中国のコンテンツ放送局とのディスカッショとありますが、やはり人口の多い中国からの訪問者が増えるとインパクトは大きのでしょうか?

yoigoto:
そう思います。

他のスポーツやエンタメコンテンツも同じだと思いますが、これからはどう中国やアジアの巨大マーケットと繋げていくかがとても重要ではないでしょうか。

そう考えた時に、アジア他国より圧倒的に優位性のある「雪」という資源と、100年の歴史を持つウィンタースポーツの「文化」は日本のすばらしい強みだと思いますね。

編集部:
なるほど、日本のウィンタースポーツは100年の歴史があるのですね。それは強みですね。

Q: 最後に日本のスノボファンやスキーファンにメッセージをお願いします。

yoigoto:
まだ、「来てください!」と言えるコンテンツが揃っていないので、フリーライドという新しい雪山の楽しみ方を、安全にトライ出来る方法を提供したいと思っているので、もう少し待っていてください!

という感じでしょうか。

たくさんの人が、「フリーライドやってみたいなぁ」と思ってるのに、どうしたらしいいか分からないと思うので。

編集部:
本日のゲストFWTジャパン代表の後藤さんでした。後藤さんはYahooの個人ブログにも多数スポーツ関連の記事を連載されています。

後藤陽一の記事一覧 – 個人 – Yahoo!ニュース後藤陽一の記事一覧です。フリーライドスキー/スノーボードの国際競技連盟、Freeride World Tour(FWT)日本支部マネージングディレクター。ヤフーニュース個人では山岳スポーツ・アクションスポーツ・エクストリームスポーツをカバーします。Yahoo!ニュース 個人

後藤さん本日は有難うございました。

yoigoto:
はい。こちらこそありがとうございました!

この記事は2018年3月のインタビューの様子を掲載しています。