マーケティングといえば統計、統計といえば「確率分布」

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職業によっては、文系出身者向き、理系出身者向きという傾向があるものもありますが、マーケターには、文系出身者も理系出身者もいて、文系と理系、どちらがマーケティング業務に有利、ということはありません。

なぜならマーケティングには、文系の要素も理系の要素もあるからです。

しかし、マーケティングにおいて強力な武器である「統計」を苦手と感じる文系のマーケターも多いでしょう。

この記事では、統計のなかでもマーケティング業務で多用される「確率分布」について、基礎中の基礎を解説します。

なぜマーケターに統計の知識が必要なのか

統計の知識がマーケターの武器になる理由は次のとおりです。

統計 マーケター

文系マーケターは、感情面からのアプローチを得意とし、「30代前半の主婦が望むこと」や「関東と関西の管理職50代男性の特徴の違い」といったことを容易に把握します。

感情面からのアプローチはなかなか数値化できるものではなく、こうした感性は実績を残すためにも重要です。

しかし、どれだけ優秀なマーケターでも、常にヒットを飛ばせるわけではなく、失敗することもあります。

失敗したときには、なぜ失敗したのか、どこでつまずいたのか、どこを強化すれば回復できるか、といったことを検討する必要がありますが、失敗した原因や対策を分析するためには統計の知識が必要です。

つまり、統計の知識を獲得すれば、感情だけに頼ったマーケティングから脱却できるようになるのです。

では、なぜ統計の知識によって、それだけのことが達成できるのでしょうか。

それは、統計によって顧客の購買行動を数値化したり、将来の購買行動を予測したりできるからです。

感情的なアプローチを得意にしている文系マーケターが統計の知識を身につけると、「鬼に金棒」状態になるといえるでしょう。

統計には確率分布が欠かせない

統計とは、ある集団が持つ数値を分析し、その集団の特徴を明らかにする手法であり、例えば、「コーヒーよりも紅茶が好まれる地域」などを明らかにすることができます。

マーケターは、確率変数の起こりやすさを見える化した「確率分布」を知識として獲得しておくといいでしょう。

勝律変数とは、世の中で起きたある出来事の結果のことをいいます。

確率変数は、あるシチュエーションでは起こりやすく、別のシチュエーションでは起こりにくい、という性質があります。

先ほどの「コーヒーよりも紅茶が好まれる地域」という例において、紅茶が好まれる、という確率変数が起こりやすいシチュエーションを突き止めることができれば、マーケティングは大幅に高効率化・省力化することができます。

統計を苦手とするマーケターは、まず、確率分布について押さえておきましょう。

確率分布には多くの種類がある

確率分布にはさまざまな種類がありますが、「離散型確率分布」と「連続型確率分布」の2つに分けることができます。

「離散型確率分布」は、離散型変数の確率分布のことであり、離散型変数とは、隣り合う数字の間に値が存在しない変数のことです。

例えば、サイコロの目は1、2、3、4、5、6であり、2.3や2.5など、数値の間の数字はありません。

「連続型確率分布」は連続型変数の確率分布のことであり、連続型変数とは、無数に連続する値のことです。

連続型変数には重さや温度などが挙げられます。

例えば、2㎏と3㎏の間には、2.3㎏も2.5㎏も存在します。さらに、2.3000001㎏といった値もあるなど、値の個数は無数です。

離散型確率分布と連続型確率分布の2種類は、さらに次のように細分化することができます。

<離散型確率分布>

  • 二項分布
  • ポアソン分布
  • 多項分布
  • 超幾何分布
  • 幾何分布

など。

<連続型確率分布>

  • 正規分布
  • 対数正規分布
  • カイ二乗分布
  • コーシー分布
  • ベータ分布
  • ディリクレ分布
  • レイリー分布
  • ガンマ分布

など。

数多くの種類があるといえます。

正規分布に「したがう事象」と「したがわない事象」

正規分布には主に、

  1. 平均値と最頻値と中央値が一致する
  2. 平均値を中心にして左右対称である

という2つの性質があります。

それぞれの性質について詳しく見てきましょう。

正規分布の性質1:平均値と最頻値と中央値が一致する

まず、正規分布には、平均値と最頻値と中央値が一致する、という性質があります。

例えば、A~Hの計8人の身長を計測したら、以下のような結果になったとします。単位はcmです。

A B C D E F G H
150  170  160  160  160  160  170  150 

この平均値は160ですが、最も多い数値も160なので、160は最頻値でもあります。さらに、この値を小さい順に並べると中央に160がくるので、160は中央値でもあります。

したがって、上記の計測結果は、平均値と最頻値と中央値が一致するので正規分布の要件を1つクリアしたことになります。

正規分布の性質2:平均値を中心にして左右対称である

正規分布には、平均値を中心にして左右対称である、という性質があります。

先ほどの身長のデータは、先頭のAと最後尾のHが150、2番目のBと最後から2番目のGが170、そして、中央にあるその他の数値が160であり、左右対称になっています。

したがって、上記の計測結果は、平均値を中心にして左右対称であるという、もうひとつの正規分布の要件も満たしているといえます。

正規分布をマーケティングでどう使うか

正規分布の考え方を理解していれば、正規分布に「したがう事象」と「したがわない事象」を比較することができます。

先述した「身長」といった事象は、正規分布にしたがいやすい事象であり、とある企業の従業員の身長を計測した場合、平均身長に近い身長の人が最も多く、平均身長より低い、または、高い人の人数は減っていきます。また、突出して身長が低い人の人数と、突出して身長が高い人の人数は、似た数字になりやすいという傾向があります。

つまり、身長のデータは、「平均値と最頻値と中央値が一致しやすく」「平均値を中心にして左右対称になりやすい」という特徴があるのです。

一方、「年収」という事象は、正規分布になりにくい性質がある事象であり、ある企業の従業員の年収を計測すると、平均額に近い人が最も多くなるかもしれませんが、平均額より少ない人の数のほうが、平均額より多い人の数より多くなります。

なぜなら、企業は、多くの年収を払う人を少なくして、多くの人には平均額より少ない給料を支払うからです。

したがって、「平均値を中心にした左右対称」のデータにならず、正規分布にはなりません。

マーケティングでは、「平均的な層」「最も人数が多い層」など、どの層をターゲットとするのかによって戦略が変わるため、マーケターはビジネス上の事象を「正規分布にしたがっているか、したがっていないか」という視点を持って眺めるようにしましょう。

まとめ~統計を武器にする

マーケティングは、消費者の「心」にアプローチするビジネス手法ですが、心は意外に「数値化しやすい」ものです。

そして、数値に意味を持たせるには、統計の知識が必要になります。

効果的なマーケティング戦略を立てるために、マーケターはなるべく多くの統計の知識を身につけると良いでしょう。


参考

  1. マーケティングに統計の考え方を取り入れてビジネスを加速させよう!(統計ラボ)
    https://toukei-lab.com/marketing-statistics#i
  2. 11-1. 確率変数と確率分布(統計WEB)
    https://bellcurve.jp/statistics/course/6596.html
  3. 11-2. 離散型確率分布と確率質量関数(統計WEB)
    https://bellcurve.jp/statistics/course/6598.html
  4. 11-3. 連続型確率分布(統計WEB)
    https://bellcurve.jp/statistics/course/6600.html
  5. 正規分布の分かりやすいまとめ(to-kei.net)
    https://to-kei.net/distribution/normal-distribution/
  6. いろいろな確率分布の平均,分散,特性関数などまとめ(高校数学の美しい物語)
    https://mathtrain.jp/distributionmatome