「統計検定」というと、資格や試験のように感じるかもしれませんが、「統計検定」は試験や資格のことではありません。
「統計検定」の正式名は「統計的仮説検定」。
略して検定と呼ばれたりもします。
では、統計検定は一体何なのかというと、統計検定は「確率をもとに結論を導き出す手法」のこと。
そして、統計検定の考え方はエビデンスのあるマーケティングに必要不可欠であるため、マーケターは、統計検定の基礎知識を身につけておく必要があります。
この記事では、統計検定とは何なのか、そして、マーケティングにおける統計解析の重要性を紹介していきます。
マーケティングと統計解析
マーケティングにおける統計解析の重要性を理解するには、「統計解析のないマーケティング」を想像するとよいでしょう。
統計解析を無視することは、データを無視することと同じこと。
なぜなら、「データを確認している」といっても、統計学的な解析に基づかないマーケティングの成功は「当てずっぽう」や「偶然」と変わらないからです。
ビッグデータをAI(人工知能)で分析するマーケティングを展開している企業が増える中で、統計解析を無視した経験や勘だけのマーケティングを実施することは無謀といえるでしょう。
統計解析をマーケティングに使えば、効果をあげる確率が高くなります。
インターネットに関係するビジネスをしている企業のマーケターは特に「統計解析による効果」を感じることができるでしょう。
例えば、スマホアプリを使って販売促進を図ろうとしている企業があるとします。
アプリのインストール数が順調に伸びているものの、アプリをアンインストール(アプリを削除する行為)するユーザーも多くいた場合、アプリをアンインストールしたユーザーの属性や購買行動、アンインストールするまでの期間などを統計学的に解析すれば、アンインストールするユーザー像やパターンを知ることができます。
ユーザー像やパターンを知ることができれば、アンインストールするユーザーが魅力を感じるようにアプリを改善したり、ユーザーのアンインストールを予防するキャンペーンを企画したりすることができます。
単純な事例ではありますが、統計学的に解析してアプリの改善やキャンペーンの企画をすることは「エビデンスのあるマーケティング」になるのです。
統計検定の基礎知識
マーケティングで統計解析を使いこなすには、統計検定の知識が必要です。
そして、統計検定には次の2つの原則があります。
統計検定を実行するには、まず仮説を立てる必要があります。
そして、調査結果を検証し、仮説が正しかったのか、それとも間違っていたのか、という結論を導き出していきます。
統計検定では、「仮説は正しい」という前提で調査や検証を進めますが、調査や検証のなかで仮説を支える条件が矛盾していることが判明したら、「仮説は間違っていた」と判断することになります。
この2原則から、統計検定が「できること」は
- 仮説が正しいことを確認する
- 仮説が間違っていることを確認する
の2つ。
この2つのいずれかが判明すれば、マーケティング・キャンペーンの確度は確実に高まります。
統計検定を正しく選ぶ
統計検定には、「T検定」「分散分析」「U検定」「順位和検定」「クラスカルワリス検定」「ロングランク検定」など、さまざまな種類があります。
マーケターは、これらの統計検定をすべて覚える必要はありませんが、必要な結論を導くために使用する統計検定を正しく選ぶ必要があることを知っておくといいでしょう。
正しい統計検定を選ぶには、「無作為化」や「差と相関」などに着目する必要があります。
無作為化とは、調査対象を無作為に選定すること。
統計を取るときは無作為化が理想ですが、無作為化できていないときでも、特別な統計手法を使って調整することはできます。
差と相関は、似て異なるものです。
マーケターは、統計検定を選ぶときに、差を知りたいのか相関を知りたいのか決めておくようにしましょう。
例えば「赤を好く人のほうが青を好く人より30%多い」という結果を望むなら、差を測定できる統計検定を選ぶ必要があり、「年齢が高くなるほど赤を好む人が増える」という結果を望むなら、相関を測定できる統計検定が必要です。
よく用いられる「T検定」とは
統計検定のなかで使われることが多いT検定についてみていきましょう。
T検定は、2つの母平均の差を比較するものです。
母平均とは、母集団内の平均値のこと。
例えば、あるマーケターが、メロンパンの好み調査をする際に、神奈川の20代の女性が東京の20代の女性よりメロンパンを好む傾向にあるかどうかを調べるときに、T検定を使うことができます。
有意差の設定が重要
T検定では有意差の設定によって同じ結果でも違う結論が導きだされることがあるなど、「有意差がある」と認める条件の設定が重要になります。
例えば、メロンパンを好み調査の際に、5%以上の差が生じれば「有意差ありとする」と設定したとします。
調査の結果3%の差しかなければ、「神奈川でも東京でも、20代女性のメロンパンを好む傾向は変わらない」という結論になります。
この結論になった場合、神奈川と東京で行なうメロンパン販促キャンペーンは同じものにしなければなりません。
しかし、有意差の設定を2%にすれば、調査で得られた結果が3%の差であった場合、神奈川と東京で行なう販促キャンペーンの内容を変えなければなりません。
せっかく正しい調査を行い、正しいT検定を実施しても、有意差の設定が違うことで正しいマーケティングができないこともあります。
T検定を実施する際には、「有意差の設定をどうするか」をしっかり検討するようにしましょう。
まとめ~基礎を固める意義
統計学を苦手にするマーケターは少なくありません。
そのため、統計解析を外注に出すマーケティング部門もあるでしょう。
効率的なマーケティングを実施するためには、統計解析の外注もやむを得ないことですが、マーケターが統計学の知識を持たなければ、統計解析がブラックボックス化してしまいます。
解析結果はマーケティングの戦略づくりにとって重要な資料なので、マーケターは統計学の知識を身に付けるようにしましょう。
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<参考>
- マーケティング手法のひとつ「統計分析」とは何なのか?(Data Knowledge)
https://www.dataknowledge.jp/statistical-analysis/ - 検定とは(統計WEB)
https://bellcurve.jp/statistics/course/9309.html - 検定の選び方:検定は結論を変え得る!不適切な検定を故意に選ぶのは不正行為(日本医療研究開発機構)
https://www.amed.go.jp/content/000034160.pdf - t検定の考え方(Logic of Blue)
https://logics-of-blue.com/t-test/